ファクトシート
アジアとIMF
2012年9月
アジアの経済的重要性が増すなか、アジアとIMFの関係も活性化しています。両者はアジア金融危機から教訓を導き出し、アジア地域の経済的成功と耐性に立脚したパートナーシップの構築に力を注いでいます。
高まるアジアの影響力
アジアは、世界金融危機から、それまでの地位を一段と高め浮上、20年以内に世界最大の経済圏へと発展すると言われています。その背景には、アジアが世界の貿易と金融システムに密接に組み込まれており、域内の勢いが高まっていることが挙げられます。
アジアの発展を踏まえれば、同地域が国際的な経済や金融の協議の場で一段と大きな影響力をもつのは当然であり、この傾向を既に十分に見て取ることができます。20カ国・地域グループ(G20)のうち6カ国はアジア・太平洋地域の国々で占められています。2010年のIMFのクォータ(出資割当額)及びボイス(投票権)の改革は、2012年10月までに発効となる予定ですが、これにより、アジアのIMFでの議決権は20%を優に超えることになり、IMFにおける同地域の代表権が、世界経済に占めるアジアの地位と一段と整合的になります。
アジアの影響力の高まりは、IMFのマネジメントの構成にも反映されています。IMFの4人の副専務理事のうち、2人(篠原尚之氏:日本、朱民氏:中国)がアジア出身者です。
IMFの対アジア関係
最近の世界金融危機での経験やIMFで現在推進中の改革は、IMFがこの地域に数多くの利益をもたらすことが出来ることを示しており、以下はその一例となっています。
- 経済のモニタリングおよび助言: 現在IMFは、アジアをはじめとした地域にこれまで以上に重点をおくなど、サーベイランスの強化に向け作業を進めています。IMFはアジア太平洋地域経済見通しを毎年発表しています。IMFのサーベイランスは、国際的な視点をもたらすとともに脆弱性と潜在的な波及効果を一段と重視しており、各国・地域に関する分析を深めることができます。また、IMFは、アジアや他の地域と連携し、G20の相互評価プロセスのような、ピアグループ評価に情報を提供することができます。加えて、アジアの国々はIMFの金融セクター評価プログラム(FSAP)にも参加しています。1999年に導入されたこのプログラムは、各国の金融部門の包括的な分析を行います。
- 技術支援および研修: IMFでは、技術支援や研修を行なうにあたり、これまで以上に地域的アプローチを採用しています。加盟国に対して行う技術支援に加え、8カ所の地域技術支援センターを運営しており、その一つである太平洋金融技術支援センターでは太平洋の小島嶼国16カ国を対象に、キャパシティ・ビルディングに関する技術支援と研修を行っています。また、2012年7月に、ラオスおよびミャンマーを対象とした、タイ技術支援事務所が新設されることが明らかとなりました。これにより、IMFのTAが両国のニーズに見合ったものとなると期待されます。さらにIMFは、中国、インド、及びシンガポールで地域研修プログラムを展開しています。
- セーフティネットの強化:世界金融危機のなか、各国を支援する取り組みの一環として、IMFは融資能力を拡充しましたが、引き続き融資制度の一層の強化に向け検討を重ねています。さらに、欧州のパートナーとの協力下で行った最近の融資経験に基づき、IMFは、アジアのチェンマイ・イニシアティブをはじめ他の地域レベルの金融取極との連携の、さらなる拡充の可能性を検証しています。
- 知識の共有:アジアは、その堅牢な構造的基盤と政策枠組みを基に、短・長期的な問題を解決する必要があり、IMFはこの過程で支援を行うことができます。IMFは、多くの国や地域で得たノウハウを活用し、変化のプロセスや世界経済への円滑な統合においてもアジアに対して支援を行うことが可能です。同時にIMFは、地域機関との最善の連携方法をめぐるアジア加盟国との対話から、利益を得ることができます。
アジア危機の教訓
1997~1998年のアジア金融危機では、多くの人々が大きな苦難を経験しました。当時IMFや他の機関などは多額の融資取極を締結、深部に渡る必要な改革を行なうための余力を提供しました。以来、アジア金融危機により打撃を受けた国や地域の多くは目覚しい発展を遂げました。直近の世界金融危機でアジアが示した耐性は、時として困難ながらもこれまで15年に渡り粘り強く続けてきた改革の証だといえます。
IMFはアジア危機から重要な教訓を学びました。なかでも、深刻な経済問題に取り組むには断固たる措置が必要ですが、プログラムに付随する条件は、喫緊の問題を直視したものであるべきだと理解しました。さらに、IMFは、自らのプログラムの社会的影響をより注視するようになりました。こうした教訓を融資プログラムに世界レベルで活かすよう努めています。
アジアとIMFの今後
アジアのIMFへの貢献: 世界金融危機に際し、アジア主要国はIMFに対するコミットメントを明確に示しました。複数のアジアの国々がIMFの融資能力の強化に合意しました。まず日本が1,000億米ドルを拠出し、中国とインドが続きました。韓国とシンガポールは、IMFの新規借入取極(NAB)への供出の拡大に合意するとともに、マレーシア、フィリピン、タイの中央銀行が、NABへの参加を決定しました。また、IMFの譲許的融資能力の拡大のための2009年の低所得国融資パッケージに関し、アジアのいくつかの国が、貧困削減・成長トラスト(PRGT)の融資財源や補助金財源として、資金を供出しました。
アジアにおけるIMF: IMFは、アジアと世界の持続的な経済成長の促進につながる共通のビジョンの構築にむけ、アジアとのより密接な対話と相互関係の確立にコミットしています。その一環として、IMFのアジア太平洋局は、アジアの著名な経済専門家で構成される地域諮問グループを設立しました。また、東京の地域事務所をはじめ現地駐在員事務所を設置するとともに、地域パートナーとの会議の共催を通し、IMFのアジアでのプレゼンスの向上を図っています。
年次総会: アジアの経済的重要性および日本のIMFと世界銀行加盟60周年を記念し、2012年のIMF・世界銀行グループの年次総会が、東京で開催されることになりました。2012年の総会の主なテーマは、経済的役割が高まったアジアの世界経済の再構築における役割や、雇用の創出と人々の貧困脱却を達成する持続的な包括的成長の実現への道などとなっています。
