ファクトシート
世界経済危機へのIMFの対応
2012年9月10日
2007年に世界経済危機が発生した当初から、国際通貨基金(IMF)はあらゆる手段を取り 188の加盟国を支援しました。強化された融資能力を駆使し、国際社会での様々な経験に基づき政策助言を行うとともに、加盟国のニーズにより良い対応ができるよう様々な改革を行いました。
危機のための防火壁を構築。 世界金融危機により打撃を受けた加盟国の拡大を続ける資金調達ニーズに対応するとともに、世界の経済および金融の安定性の強化を支えるために、世界危機の発生当初よりIMFは、融資能力の大幅強化に取り組んできました。IMFの主要な原資である加盟国が振り込むクォータ(出資割当額)の増額へのコミットメントを取り付けるとともに、加盟国との間での大規模な一時的な借入取極を確保(例えば、直近のコミットメントは4,560億ドル)するなどの手段が講じられました。
危機関連融資の拡大。 IMFは融資枠組み全般の見直しを実施し、危機予防をこれまで以上に重視しながら加盟国のニーズにより合った枠組みの構築を目指すとともに、融資条件を簡素化しました。また、危機当初より、3,000 億ドルを優に超える加盟国向け融資にコミットしました。
世界最貧国への支援。 IMF は過去に例をみない規模で、低所得国に対する政策を改革しました。譲許的融資はそれまでの4倍増となりました。
IMFの分析及び政策助言の強化。 世界的視野や過去の危機の経験を反映したIMFのモニタリングや見通し、政策助言に対する需要が高まっています。また、IMFは、先進並びに新興市場国・地域から成る20カ国グループ(G20)と協力するなど、政策、規制及び国際金融システムの改革に危機の教訓を活かすという取り組みに貢献しています。
IMFのガバナンス改革。 2010 年 11 月、IMFは新興市場国の重要性が増していることから、IMFの正当性の強化を目指した広範なガバナンス改革を承認しました。この改革では、小国の途上国のIMFでの影響力も確保されます。
IMFの融資枠組みの改革
世界的経済危機の中、加盟国支援の強化に向けた取り組みのひとつとして、IMFは融資能力の増強を行うとともに、より大規模な融資を提供しその条件も要請国の様々な状況や特徴を考慮するなど、融資手法の抜本的な見直しを承認しました。
優れた実績を有する国を対象とした信用枠。 2009年4月に導入されたフレキシブル・クレジットライン (FCL) は、翌年8月に一段と強化されました。非常に強いファンダメンタルズを備えた加盟国を対象とした融資制度であるFCLは、危機予防の保険としての機能を果たすもので、IMF財源への早期かつ巨額のアクセスが可能です。FCLの信用枠が承認された場合、政策条件に一切縛られることはありません。これまでに、コロンビア、メキシコそして ポーランドに対し、FCLの下で合計1,000億ドル以上のアクセスが承認されています(これまでこれらの合意の下では、引き出しは行われていません)。FCLの活用は、借入コストの低下と政策余地の拡大に資することが分かっています。
より柔軟な条件で流動性にアクセス。 地域的または世界的な緊張の高まりにより、危機リスクと無縁と思われる国が影響を受ける可能性があります。緊張が高まっている間に、こうした危機の第三者に対して十分な短期流動性を迅速に提供すれば、市場の信認が増し、波及を抑制し、危機の総体的コストを削減することが可能となるでしょう。予防的流動性枠(Precautionary and Liquidity Line :PLL)は、健全な経済政策とファンダメンタルズを有しているものの、依然として脆弱性を抱える加盟国の流動性ニーズに応えることを目指しています。マケドニアおよびモロッコがこれまでにPLLを活用しています。
改革後のIMF融資条件。 構造的パフォーマンス基準は、低所得国向けプログラムを含むあらゆるIMF融資において廃止されました。構造改革は引き続きIMF支援プログラムに含まれますが、加盟国の回復にとり不可欠な分野に一段と焦点を絞ったものとなりました。
社会的保護を重視。IMFは、社会扶助をはじめ、社会支出の保護や増額で各国政府を支援しています。特に、社会の最脆弱層への危機の影響を緩和する、ソーシャル・セーフティ・ネット・プログラムへの支出の拡大と、対象の絞込みの向上に向けた施策を推進しています。
世界の最貧国への支援
世界金融危機を受け、IMFは過去に例をみない規模で対低所得国政策の改革を実施しました。この結果、コンディショナリティーが簡素化され、譲許性が向上し、社会支出の保護を一層重視するなど、IMFプログラムは、一段と柔軟かつ低所得国の各々のニーズに合ったものとなりました。
財源の増強。 貧困削減・成長トラスト(PRGT)を通じ2009 年から 2014 年にかけ低所得国に融資可能な財源が、170 億ドルに拡大しました。これは、IMFの譲許的融資能力を倍増し今後2~3年の間で60億ドル規模の譲許的融資を新たに行うという、2009 年 4 月のG20 首脳の要請と一致しています。低所得国に対するIMFの譲許的融資は、2009 年に 38 億ドルとそれまでの 水準の約4 倍となり、その後2010 年と 2011 年には、それぞれ 18 億ドルと 19 億ドルに達しました。
より柔軟性を持たせる。 ひとつには今般の危機を鑑み、IMFは財政赤字と歳出の拡大を広く考慮し、金融支援プログラムをより柔軟なものとしました。例えば、全サブサハラアフリカ諸国の2009年の財政赤字は、GDP比で平均2%拡大しました。
大災害後債務救済 (Post-Catastrophe Debt Relief: PCDR) 基金の設立。 これにより、IMFは、最も壊滅的な自然災害に見舞われた最貧国を対象とした、国際的な債務救済の取り組みに参加することができます。2010年のPCDRによる債務救済額は、2億6,800万ドルに達しました。
危機に対する防火壁を構築
世界的な金融危機を克服するための主要な取り組みとして、2009 年 4 月に先進並びに新興市場国・地域から成る20カ国グループ(G20)の各国首脳は、新興市場と途上国の成長を支援するため、(IMFのクォータ財源を補完する)借入によるIMFの財源を最大 5,000 億ドル(これにより、危機前の融資財源総額約 2,500 億ドルが3倍増に)引き上げることに合意しました。
2010年4月、理事会は新規借入取極(NAB)を拡大し柔軟化する提案を採択しました。これによりNABは、約3,675億SDR(約5,600億ドル)へと拡大、新たに13 の加盟国と機関が加わりました。複数の新興市場国がこのNAB拡大に大きく貢献しました。2011 年 11 月 15 日、ポーランド国立 銀行が新たにNABに加わったことにより、NABは合計約3,700億SDR(約5,700 億ドル)、新たな参加国・機関は14 となりました(新たな参加国・機関が全て加わった場合)。
2011 年 12 月、EU加盟国は、最大 1,500 億ユーロ(約 2,000 億ドル)の追加財源の拠出にコミットしました。昨年、IMF加盟国が国際通貨金融委員会を通じて要請し、カンヌサミットでG20 首脳が全面的に支持したのち、IMF理事会は 2012 年 1 月に、加盟国との新たな取極を結ぶことで財源を拡充する可能性を視野にいれ、IMF財源が十分であるかについて協議しました。加盟国は、IMFの資金基盤を強化するために、新たに4,560億ドル拠出することにコミットしました。
2010 年 12 月に承認された第 14 次クォータ一般見直しにより、IMFの恒久的な財源はそれまでの 2 倍の 4,768 億SDR(約 7,370 億ドル)となります。2012 年の年次総会までの発効を目指しています。これに伴い、NABの融資枠は 3,700億SDRから 1,820億SDRに引き下げられますが、これは、第14 次クォータ見直しの増額分の加盟国による払い込みをもって発効となります。
IMFの融資能力の強化に加え、2009年に加盟国は2,500億ドル相当のSDRの一般配分を実施することで合意、これによりSDRは約10倍に増加しました。これは、低所得国を含む多くの国にとり、外貨準備の大幅な増額を意味します。
IMFの分析及び政策助言の強化
IMFは、各国政府や他の国際機関と緊密に連携し、危機の再発防止に取り組んでいます。
国際的な観点を取り入れるなどリスク分析は強化され、金融安定理事会(FSB)と共同で、早期警戒演習を行っています。実体経済、金融部門、及び対外安定性の連関性の分析が強化されました。また、金融と貿易の結びつきの強化が、サーベイランス(一国の経済政策の他の国や地域への影響である波及効果などを含みます)や国際金融のセーフティネットの強化に向けた融資に及ぼす影響の特定と理解を図るための作業も進められました。
世界経済の実情をより良く反映したIMFガバナンスを目指して
IMFのガバナンス改革の完了が、IMFの正当性と実効性に関する最優先事項です。
2010年12月15日、総務会は第14次一般クォータ見直しの下での広範なガバナンス改革を承認しました。これには、クォータの倍増も含まれており、これにより最も貧しい加盟国の議決権を保護するとともに、ダイナミックな新興市場及び途上国へ、クォータシェアが6%ポイント以上移行することになります。理事会は完全選任制となり、これまで以上に加盟国を反映したものに生まれ変わります。
発効となるには、総議決権の85%に相当する加盟国の5分の3にあたる国々が、IMF協定の改正を承認する必要があり、また、2010年11月5日の時点で全クォータの70%以上を占める国々が、クォータの増額に賛成しなければなりません。
合意されたパッケージは、2008年4月のクォータ及びボイス の改革に基づき策定されたもので、2011年3月3日に施行になりました。これにより、最大の増加幅を見た中国、韓国、インド、ブラジル、メキシコをはじめ、54加盟国のクォータが増加しました。低所得国を含む他の135カ国については、基礎票が増加したことで議決権が拡大しました。基礎票の総投票権数に対する比率は一定に保たれます。また、第14次一般クォータ見直しと合わせ、ダイナミックな新興市場と途上国へクォータシェアが9%ポイント移行することになります。
