ファクトシート
IMFの財源
2012年8月
IMFの融資財源の大半は、主に加盟国が払い込むクォータ(出資割当額)を原資としています。多国間または加盟国との枠組みの下での借入取極は、IMFの財源のさらなる保険としての機能を果たします。2011年3月には、拡大されたより柔軟な新規借入取極(NAB)が発効、その後すぐに発動されました。さらに、IMFは、加盟国と融資取極やノート・パーチェス・アグリーメント(債券購入契約)を複数締結しました。これは、NABが発動される前に承認されたIMF支援プログラムの財源とする事ができます。世界的金融不安が長引くなか、IMFと債権者である加盟国は、現在、クォータや拡大NABの財源を支えるべく、2012年の融資取極やノート・パーチェス・アグリーメントについて交渉を行っています。さらに、低所得国向けの譲許的融資及び債務救済は、別途、拠出ベースの信託基金により賄われています。
クォータ制度
IMFの各加盟国にはクォータ が割り当てられます。クォータは、各国の世界経済における相対的規模を概ね反映したもので、IMFの融資財源への拠出の最高限度額を定めています。IMFに加盟する際、各国は通常定められたクォータの4分の1までは、広く受け入れられている外貨(米ドル、ユーロ、円、スターリング・ポンドなど)或いは特別引出権(SDR)で払い込みを行ないます。残りの4分の3は自国通貨で払い込みます。
クォータ*は、少なくとも5年に一度見直しを行ないます。2年に渡るクォータ及びボイス(投票権)の改革の第一段階としてクォータを1.8%引き上げるクォータの特別増資*が、2006年に承認されました。2008年4月には総務会が更なるクォータの特別増資を承認、これにより合計11.5%の引き上げが実現しました。2008年の改革*は、IMFの議決権の85%に当たる117カ国が、IMF協定の改正を批准したことを受けて2011年3月に施行になりました。
第14次クォータ一般見直し*は、IMFのクォータ財源をそれまでの2倍の4,768億SDR とすると決定し、2010年12月に当初の予定より2年早く終了しました。加盟国は、2012年10月に第14次見直しの下でのクォータ配分を実現するよう最善を尽くすことにコミットしています。
なお、2003年1月*及び2008年1月*に終了した見直しでは、クォータの変更はありませんでした。
金の保有
IMFは、9,050万トロイオンス(2,814.1メトリックトン)の金を保有しており、世界第3位の公的な金の保有者となっています。しかし、IMF協定により金の使用は厳しく制限されています。加盟国の議決権*の85%という大多数の賛成が得られた場合、IMFは金を売却*或いは金を加盟国から支払いとして受け取ることができますが、金の購入をはじめとするその他の取引を行うことは禁止されています。
2009年9月のIMF理事会の承認に従い、IMFは2010年12月、保有していた金の8分の1に相当する403.3メトリックトンの売却プログラムを終了*しました。合計222トンが、インド準備銀行(200トン)、モーリシャス銀行(2トン)、スリランカ中央銀行(10トン)、及びバングラデシュ銀行(10トン)など、公的部門に売却されました。この金の売却プログラムは、市場の混乱を回避するために強力なセーフガードのもとで行われ、公的部門への直接売却も含めた全ての売却は市場価格で行われました。
この金の売却益は、IMFの新規歳入モデルの一環で、基本財産の原資として活用されますが、これはIMFの財政を持続的基盤に乗せるとして合意されたものです。また、理事会は、金の売却に関連した資金のうち5~6億SDR(2008年末、正味現在価値ベース)を低所得国向け融資の補助金と譲許的融資の拡大のために使うことを承認しました。2012年2月に理事会は、最近行われた金の売却に伴う想定外の利益の一部に相当する7億SDRをIMFの準備金から加盟国に分配することを承認しました。この分配はすべての加盟国に対し、分配時における各国のクォータに基づいて行われますが、加盟国が分配された額の少なくとも90%(6.3億SDR)に相当する額を、貧困削減・成長トラスト(PRGT)の新たな補助金として拠出するという確約を取り付けてはじめて実行されます。
IMFの融資能力
IMFは融資財源として、クォータとして払い込まれた財政的に強固な国々の通貨を使用します。理事会は、3カ月毎にこの通貨の見直しを行ないます。これらの通貨の大半は工業国のものですが、ボツワナ、中国、或いはインドなどこれらの国よりも所得の低い国々の通貨もリストに挙がっています。IMFが保有するこれらの通貨とSDRが、IMFが利用可能な財源となります。必要に応じ、IMFは一時的にこれらの財源を借入により補完することができます(以下参照)。
新規融資(非譲許的)にIMFが使用可能な額は、貸付可能資金(今後の貸付可能能力)*として示されます。これは、IMFが使用可能な資金(借入或いはノート・パーチェス・アグリーメント-債券購入契約-の取極の下での未使用額と、IMFの二つの常設の多国間の借入取極-下記参照-の下で利用可能な額を含みます)、及び今後12カ月で返済が見込まれる融資の額を合わせたものから、既存の融資取極の下で既にコミットされた額、およびプルデンシャル・バランスを除いたものとなっています。
借入取極
IMFには、拡大された新規借入取極(NAB)及び一般借入取極(GAB)という、二つの常設の多国間の借入取極* があり、その借入枠は3,700億SDR(約5,700億ドル)となっています。例えば大規模な金融危機が発生するなど、今後のコミットメント能力が加盟国のニーズを満たすことができないと判断された場合、IMFはこれらの借入取極を発動することができます。
2010年4月、理事会はNABを拡大し柔軟化するという提案を採択しました。これによりNABは、3,675億SDR(約5,600億ドル)へと拡大し、新たに13カ国が加わりました。この中には、新興市場国も複数含まれておりこれらの国々もNAB拡大に大きく貢献しました。この拡大されたNABは、2011年3月11日に発効となり、その後まもなく半年間で2,110億SDR(約3,200億ドル)として発動されました。直近では、2012年4月1日から最大6カ月という期間で発動となりました。さらに、2012年10月1日から2013年3月31日の6ヶ月間にわたる発動が提言されると見られています。2011年11月15日、ポーランド国立銀行がNABに参加、NABの総額は3,700億SDR(約5,700億ドル)となりました(ファクトシート:IMFの常設の借入取極* を参照のこと)。
一方、2009年以降、IMFは加盟国との間で借入取極を結んできました。現在、IMFは16の加盟国と取極を結んでおり、その規模は約2,000億ドルに達しています。2009年7月にIMFの理事会は、公的部門を対象とした債券発行の枠組みを承認しました。債券の発行は、安全な制度への加盟国の投資を可能にするとともに、IMFが加盟国の国際収支上の問題に対し、時宜を得た効果的な支援を引き続き行うことができるようにするものです。現在のところ、加盟国との間で2件の約600億ドルの債券購入の合意が結ばれています。加盟国との借入取極並びに債券購入の合意のリストは、こちら* をご覧ください。なお、NAB参加国との間の借入枠は、NAB借入取極の下でのIMF使用可能資金合計に上乗せされることはありません。NABが発動された場合、NAB参加国の信用枠は、NAB参加後初の発動以前に承認されたIMF支援取極の下でのコミットメントの資金源としてのみ、活用されることになります。
2012年4月に加盟国は、IMFの財源を4300億ドル以上増額するという、さらなる公約を発表しました。2012年の加盟国との融資取極やノート・パーチェス・アグリーメントについては現在加盟国と交渉中となっています。これらは危機の回避や解決に、またIMF加盟国の潜在的な資金調達ニーズに対応できるよう作業を進めています。また、これらは、最後のバックネット・保険としての機能を果たすもので、既存のクォータや拡大したNABの財源の補強が必要な場合にのみ引き出されます。
IMF の譲許的融資及び債務救済
IMFは低所得国に対し、PRGT*の下での低金利融資、ならびに重債務貧困国(HIPC)イニシアティブ*、マルチ債務救済イニシアティブ(MDRI)*、及び大災害後債務救済(PCDR)基金* の下での債務救済という、2種類の金融支援を主に行っています。これらの財源は、クォータではなく、加盟国とIMFの拠出により賄われています。これらは各々、IMFが受託者となっている、PRGT、PRG-HIPC、MDRI-I、MDRI-II、そしてPCDRという信託基金の下で管理運営されています。
PRGTの前身は、資格を満たした低所得国を対象に、関連する取極を支えるための融資を提供するとともに、補助金を活用し市場金利を年率 0.5%まで引き下げることを目的として設立されました。PRGT及びその前身に対し23カ国が拠出し、約420億ドル(258億SDR)の融資財源がコミットされていますが、さらに多くのIMF加盟国が補助金への拠出を行なっています。
2009年7月、IMFの理事会は譲許的融資制度の大々的な改革* を承認し、これによりPRGF-ESF信託基金は、PRGTに取って代わられることになりました。また、改革パッケージの一環として、理事会は全ての低所得国を対象とした譲許的融資について、これらの国々の危機への対応を支援すべく特別に金利の免除を行うことで合意、2011年末まで利払いをゼロとすることで合意しましたが、その後、期間は2012年末まで延長されました。これらの改革は、PRGF-ESF信託基金の全ての資金拠出国及び補助金拠出国が、改革に賛同した2010年1月に発効となりました。
これらの改革により、低所得国向け財源*は、2009年から2014年の期間で170億ドルまで拡大する見込みです。新たな融資コミットメントに対応するため、新たに108億SDR(160億ドル)の融資財源、及び15億SDR(2008年末の正味現在価値ベースで23億ドル)の補助金財源が動員される必要があります。これまでと同様、加盟国による拠出により、必要な追加的融資財源は賄われると想定されます。しかし、必要な補助金財源の大半は、先に終了した金の売却益に関連した資金を使用するなどIMFの内部資金から拠出されますが、さらに加盟国からの約2億~4億SDR(3億~6億ドル)の拠出を必要としています。
債務救済については、PRG-HIPC信託基金は、HIPCイニシアティブの下での債務救済とPRGT融資の補助のために設立されました。この信託基金は、93の加盟国によるグラント(贈与)及びコミットされた預入金、そしてIMFの拠出から構成されています。IMFの拠出の大半は、1999年から2000年に行なわれた金の市場外取引を原資としています。
MDRI-I 及び MDRI-II信託基金は、MDRIの下で債務救済を行なうために、2006年のはじめに設立されました。IMFの特別支払勘定(SDA)からの15億SDR を財源としたMDRI-I信託基金は、一人当たりの国民所得が年間380ドル以下(2004年の国民総所得を基本)の国々(HIPC及び非HIPC)に対し、債務救済を行います。MDRI-II 信託基金は、一人当たりの国民所得が年間380ドル以上のHIPCに対する債務救済を目的としており、PRGT信託基金から移した、加盟国からの拠出11億2,000万SDRを原資としています。
2010年6月に設立されたPCDR信託基金は、大災害後の債務救済を行います。この基金はIMFの自己資金2億8,000万SDR(約4億2,200万ドル)を原資としていますが、今後は、必要に応じて、ドナーからの拠出で補充される見込みです。
以上に加え、PRGT適格国を対象とした、紛争後或いは自然災害の被災国に対するIMFの緊急支援* の金利補助のため、別途に加盟国グループが財源を拠出する管理勘定があります。
* 英語
