ファクトシート
IMF の融資制度
2013年4月
IMFの主要な責務のひとつに、国際収支上の問題を抱えている、或いはその可能性のある加盟国への融資が挙げられます。IMFの金融支援により、加盟国は根本的な問題の解決に努める一方、国際準備資産の再構築、自国通貨の安定、輸入代金の支払いの継続、また力強い経済成長のための条件の回復を実現することができます。なおIMFは開発銀行と異なり、特定のプロジェクトに対する融資は行いません。
IMF融資を受ける
加盟国は国際収支上の(実際或いは潜在的な)必要に迫られた場合、つまり十分な外貨準備のバッファーを今後も維持しつつ、国際債権者に対する純支出(輸入、対外債務の返済など)のための十分な資金を、無理のない条件で調達することが不可能な状況に陥った場合に、IMFの金融支援を要請することができます。IMFの融資は、国際収支上の問題の是正並びに強固な経済成長に不可欠な条件の回復に向けた、加盟国の改革や調整政策を緩和するクッションとして機能します。
IMF融資の変化
IMFの融資の量は時とともに大きく変化してきました。1970年代のオイルショックや1980年代の債務危機の直後に、IMF融資は急激に増加しました。また1990年代には中欧や東欧における変遷のプロセスと新興市場国・地域の危機を受け、IMF資金への需要が更に急増しました。2000年代初頭には、ラテンアメリカ及びトルコでの深刻な危機によりIMF資金への需要が高い状況が続きました。その後、世界的な金融危機の勃発を受けて、IMFの融資は再び2008年末に上昇しました。
IMF融資のプロセス
通常IMF資金は、加盟国からの要請を受け、融資「取極」の下で利用可能となります。取極は、利用する融資制度に応じて、加盟国が自国の国際収支上の問題の解決に向け実施すると合意した、特別な経済政策及び措置の履行を求めることができます。これら取極の基盤となる経済政策プログラムは、各国がIMFとの協議の上作成したもので、大半の場合レター・オブ・インテント(趣意書)*の形で理事会*に提出されます。理事会による取極の承認の後、IMF資金は通常、プログラムの実施段階に合わせ分割で支払われますが、一部の取極の下では、十分な実績のある国はIMF資金への迅速な一括アクセスが可能であり、政策合意の順守を条件としません。
IMF 融資制度
これまでにIMFは、多様な背景を持つ加盟国の諸事情を勘案した様々な融資制度を設定してきました。低所得国は拡大クレジット・ファシリティ(ECF)、スタンドバイ・クレジット・ファシリティ(SCF)、及びラピッド・クレジット・ファシリティ(RCF)を通じ、譲許的条件で借入を行うことができます(詳細:IMFの低所得国向け支援)。譲許的融資の下では、2014年末まで金利がゼロとなっています。非譲許的融資は、主にスタンドバイ取極(SBA)、フレキシブル・クレジットライン(FCL)、予防的流動性枠(PLL)、及び拡大信用供与措置(中長期的なニーズに有効)を通じて行われます。また、国際収支上の切迫した問題に直面している全ての加盟国に、新たに導入されたラピッド・ファイナンシング・インストルメント(RFI)を通じて緊急支援*も行います。全ての非譲許的なファシリティでは、市場金利に連動した「レート・オブ・チャージ」と呼ばれるIMFの利率で融資が行われますが、(一定の枠以上の)大規模な融資に関してはサーチャージが適用されます。レート・オブ・チャージ*は、主要国際通貨市場の短期金利を勘案して毎週改定されるSDR金利*に基づいています。IMFからの最大借入可能額、つまり「融資利用限度」は融資の種類により異なりますが、通常加盟国のIMFクォータの倍数となっています。また特別なケースでは、利用限度を越える融資も認められます。一方、スタンドバイ取極(SBA)、フレキシブル・クレジットライン(FCL)、ならびに拡大信用供与措置(EFF)ではアクセス上限を事前に設定していません。
IMFは金融支援に関し、その柔軟性を向上させると共に、低所得国の多様なニーズに適切に対応できるよう、広範な改革を行ってきました。新たな低所得国向けの譲許的なファシリティが、同改革の一環として、2010年1月に貧困削減・成長トラスト(PRGT)の下に実施されました。危機前の水準と比較し、融資利用限度及びアクセス基準が約2倍になりました。融資条件はより譲許的となり、金利は2年ごとに見直しが行われます。加盟国が主体となったプログラムを支えるこれら全てのファシリティは、強固且つ持続的な貧困削減と経済成長を伴いながら、支援国が持続的で安定的なマクロ経済の状態に到達できるよう支えるものです。
拡大クレジット・ファシリティ(ECF)*は、慢性的な国際収支上の問題を抱える低所得国向け中期的支援の主軸として、貧困削減・成長ファシリティ(PRGF)に取って代わるものです。現在ECFの下での融資はゼロ金利となっており、支払猶予期間は5年半、最終満期は10年となっています。
スタンドバイ・クレジット・ファシリティ(SCF)*は、短期的な国際収支上のニーズを抱える低所得国へ金融支援を行います。SCFは、外生ショック・ファシリティ(ESF)の高次アクセス・コンポーネントに取って代わるもので、予防的な目的での運用も含め、様々な状況下での支援が可能となっています。現在SCFの下での融資はゼロ金利となっており、支払猶予期間は4年、最終満期は8年となっています。
ラピッド・クレジット・ファシリティ(RCF)*は、緊急を要する国際収支上の問題に直面している低所得国に対し、限定的なコンディショナリティーの下で、迅速な金融支援を行います。RCFは、低所得国向け緊急支援を合理化しており、様々な状況下で柔軟に活用することができます。現在RCFの下での融資はゼロ金利となっており、支払猶予期間は5年半、最終満期は10年となっています。
スタンドバイ取極(SBA)*。IMFの非譲許的融資の大半はSBAを通して行われます。SBAは短期的な国際収支上の問題に対処するよう考案されています。プログラムのターゲットはこれらの問題の解決を念頭においており、融資の支払いはこれらのターゲット(「コンディショナリティー」)の達成を条件に行われます。SBAの適用期間は通常12~24ヶ月で、返済期間は支払いより3.25~5年となっています。SBAでは、通常の融資利用限度内・例外的アクセス共に、状況が悪化した場合に備え合意された額の利用を留保するなど、予防的な目的での活用も可能です。融資の支払い方法も柔軟になっており、適当と判断された場合は、融資を迅速に受け取ることも可能です。
フレキシブル・クレジットライン(FCL)*。 FCLは強固なファンダメンタルズと政策、そして政策実施の実績を有する国を対象としており、危機予防とその打開において有用です。FCL取極は、加盟国からの申請を受け、事前の資格基準を満たしていると判断された場合承認されます。適用期間は1年から2年(1年後、定期的な中間レビューも実施)、返済期限はSBAと同様となっています。アクセスはケースごとに設定され、通常の融資利用限度は適用されません。また分割払いではなく一括前払いで融資を受け取ることが可能です。融資の支払いに関しては、FCLを受ける資格がある国は適切なマクロ経済政策を実施できると考えられることから、SBAと異なり特定の政策合意を条件とされることはありません。また信用枠は柔軟に活用でき、承認と同時に引き出しもしくは予防目的での活用も可能です。加盟国が引き出した場合の返済条件はSBAと同じです。
予防的流動性枠(PLL)*。PLLは予防的信用枠(PCL)に替えて、それを強化し柔軟性を加えたものです。PLLは、健全なファンダメンタルズ及び政策を実施、或いはその実績を有する国を対象として、危機防止とその打開に向けた制度です。PLLを受ける資格がありながら、一定の脆弱性を抱えていて、FCLの適格基準に達しない国でも、IMFの融資制度であるSBAに通常伴うような、大規模な政策調整は求められません。PLLは、半年毎のモニタリングでレビューされた残存する脆弱性の解決に焦点を絞った事後的条件に(FCLと同様に)資格基準を結びつけています。PLLの適用期間は6か月乃至1−2年です。6ヶ月PLLへのアクセスは平時においてはクォータの250%ですが、この限度は国際収支上の問題が外生的ショックによる例外的な場合(地域的あるいはグローバルな重圧の高まりを含む)にはクォータの500%に引き上げることもできます。1-2年PLLにおいては、年間アクセスの限度はクォータの500%、累積でクォータの1,000%が認められます。PLLの返済期限はSBAと同じです。
拡大信用供与ファシリティ(EFF)*。1974年に設立されたEFFは、抜本的な経済改革を必要とする大きな歪みに起因する、中長期的な国際収支上の問題の解決に取り組む加盟国への支援を目的としています。このことから適用期間はSBAより長くなっていて、通常は3年を超えませんが、必要な場合は1年までの延長が認められます。しかし、3年以上にわたる国際収支上の問題に直面している場合、マクロ経済の安定性を回復するのに時間がかかる場合、そして当該国が透徹した持続的な構造改革を行う力と意欲を持っていると十分に認められる場合には、4年までの期間が認められます。返済期限は融資支払い日から4.5~10年となっています。
ラピッド・ファイナンシング・インストルメント(RIF)*。RIFは、従前の緊急支援策に替えて、その範囲を広げるために導入されたものです。RIFは切迫した国際収支上の問題に直面している全てのメンバーに限られた条件付きで迅速な金融支援を与えるものです。RFIへのアクセスは、年間でクォータの50%、累積でクォータの100%です。緊急融資にはFCL、PLLおよびSBAと同じ条件が課され、返済期間は3.25~5年となっています。
* 英語
