ファクトシート
IMF サーベイランス
2013年3月
IMFは、国際通貨制度を監視するとともに、188の加盟国の経済及び金融部門政策をモニターする権限を有しています。サーベイランス(政策監視)と呼ばれるこの活動は、国際レベル及び国レベルで行なわれますが、この過程においてIMFは、安定性への考えうるリスクを明確にし、必要な政策調整について助言を行ないます。これによりIMFは、各国間における財、サービス、及び資本の交換を促進し健全な経済成長を維持するという、国際通貨制度の主な目的の達成に貢献しています。
IMFサーベイランスの重要性
一国の政策が他の多くの国に影響を及ぼすような今日のグローバル化した経済では、国際協力は不可欠です。ほぼ全世界の国にあたる188カ国が加盟するIMFは、この協力を促進します。IMFのサーベイランス活動には、各国の政策の評価と助言を行なう国別サーベイランス、および世界経済の監視を行なうマルチラテラル・サーベイランス(多国間政策監視)と、主に二つの側面があります。
加盟国との協議
IMFのエコノミストは、加盟国の経済を継続的に監視します。通常は年に一度、エコノミストが加盟国を訪問し、経済もしくは金融部門政策の調整が必要となる国内或いは世界の安定性リスクの有無について協議を行い、加盟国政府や中央銀行と、主に為替レート、金融、財政、金融部門に関する政策を中心に協議します。対象国の経済政策や方向性を評価するにあたり、通常IMFのスタッフはミッションの際に、国会議員や、ビジネス、労働組合、更には市民社会の代表といった関係者とも協議を行ないます。本部に戻った後スタッフは、IMF理事会* での協議に向け報告書を提出します。その後、理事会の見解は加盟国当局に報告され、4 条協議と呼ばれるプロセスが終了します。 近年、サーベイランスの透明性は向上しています。現在ほぼ全ての加盟国が、理事会の見解の総括であるパブリック・インフォメーション・ノーティス*、IMFのスタッフ・レポートや関連分析の公表に同意しています。 また、多くの加盟国が、IMFミッションの終了の際に、スタッフによる声明を発表しています。
世界情勢をより大きな枠組みで監視する
IMFは、世界及び地域レベルでの経済情勢のモニターも行ないます。マルチラテラル・サーベイランスは主に、定期的に発表される 世界経済見通し* (WEO)、国際金融安定性報告書*(GFSR)、および財政モニター*(Fiscal Monitor)を通して行われます。WEOでは、世界経済情勢を分析し、現下の世界的金融の混乱や経済の減速など、早急の対応が必要な問題を検証します。GFSRでは、世界の金融市場や金融見通しについて最新の評価を行い 、金融市場の安定性のリスクとなり得る不均衡や脆弱性を明示します。財政モニターは、中期的な財政の見通しの最新情報を提供するとともに、財政の動向を評価します。
また、世界の主要5地域を対象により詳細な分析を行なう 地域経済見通し*を発表するとともに、主要な先進並びに新興市場国・地域からなるG20をはじめ、他のグループとも緊密に連携しています。特に、2009年よりIMFは、相互評価プロセスを通し国際経済協力の継続を目指すG20の取り組みを支援しています。同プロセスはG20がピッツバーグサミットで立ち上げました。IMFは、G20参加国・地域が追求している政策と、持続的かつ均衡ある世界経済の成長との整合性について分析を行っています。
2011年よりIMFは、中国、ユーロ圏、日本、米国および英国という世界の5大経済国・地域の経済政策の、パートナー国・地域への影響を分析した波及効果報告書を試験的に作成しています。また、IMFは様々な多国間報告書の主な分析結果や政策助言をまとめ、IMFと加盟国の今後の課題を明示するグローバル・ポリシー・アジェンダ(Global Policy Agenda)を年に 2 回作成しています。
サーベイランスの役割の維持
固定為替相場制を採用したブレトンウッズ体制の崩壊に伴い、1970年代後半にIMF協定第4条が見直され、これにより現在の形でのサーベイランスが確立されました。第4条において、加盟国はIMF及び他の加盟国と協力し、安定性の促進に努めると規定されています。一方IMFに対しては(i)国際通貨制度の実効的機能を確保すべく、国際通貨制度を監督し、(ii)加盟国の政策上の義務の遵守状況を監視することを責務と定めています。
2010年IMFは、サーベイランスのマンデートの見直しに着手、マルチラテラル、国別、そして金融といったサーベイランスの全ての側面を一体化し、一段と効果的なものとするための措置を講じることになりました。これらは、IMFの独立評価機関(IEO)が報告書で指摘した、危機以前のサーベイランスで特定された脆弱性の対処において、効力を発揮しました。
2011年10月、IMFのサーベイランスの有効性に関する主要なレビューである3年毎のサーベイランスレビューが終了しました。国別・マルチラテラルの双方のサーベイランスを対象としたこの直近のレビューは、全ての主要な関係者からの意見や評価、IMFスタッフによる分析、あるいは外部の専門家の研究やコメント・論評などを基に行われました。同レビューでは、世界金融危機の勃発当初から改善が見られるものの、ギャップが存在することが浮き彫りとなりました。なかでも、リスク評価は詳細に欠け連関性やショックの伝播の問題を重視していないなど、サーベイランスは非常に断片的だと受け止められています。また、サーベイランスは、より規模が大きな加盟国には、その他の加盟国と比較してさほど大きな影響力を及ぼさないことが分かっています。その後の提言では、相互連関性、リスク評価、対外安定性、金融の安定性、影響力と法的枠組みといった主要6分野の改善を重視しています。IMF専務理事の行動計画は理事会の承認を受け、その進捗状況報告書が発表されました。
この行動計画を進行するためのより広範な取り組みとして、2012 年 7 月 18 日、理事会は 二つの重要なトピックに関して会合を開き、サーベイランスの基礎を成す法的枠組みを強化するために、国別サーベイランスおよびマルチラテラル(多国間)サーベイランスに関する新たな決定* (統合されたサーベイランス決定)を採択しました。また、理事会では、世界の経済大国の対外部門に関する幅広い、多国間的視点で一貫した分析を提示する対外部門の安定性に関するパイロット報告書* について協議しました。2012 年 9 月には、金融部門のサーベイランスを一段と強化するための具体的かつ優先的な措置を提言する新たな金融部門サーベイランスに関する戦略*を承認しました。こうした措置によりIMFはこれまで以上に、世界の安定性に対する加盟国の政策の潜在的な波及効果に対処し、より包括的に加盟国の対外部門の安定性をモニターし、加盟国を建設的な対話に関与させ、国際金融システムの効果的な運営を保護するとともに、世界の経済・金融の安定性を支えることができると期待されています。
* 英語
