ファクトシート - 2009年6月

重債務貧困国(HIPC)イニシアチブに基づく債務救済


IMFと世界銀行が共同で行う債務減免のための包括的手法は、いかなる貧困国も対処できないほどの債務を抱えることがないよう確保することを目的としています。これまでに35カ国(うち29カ国はアフリカ諸国)に対して債務減免の取極めが承認され、510億米ドル(2007年末の純現在価値ベース)に上る債務が減免されました。また、他の5カ国もHIPCイニシアティブに基づく支援の前提条件を満たしており、この債務救済の利用を希望する可能性があります。


貧困削減に向けた債務救済の仕組み

HIPCイニシアティブは、貧困国が対処できないほどの債務を抱えることがないよう、1996年にIMFと世界銀行により導入されました。それ以降、重債務最貧国の対外債務を持続可能な水準まで削減するため、国際機関や各国政府を含む国際金融界が協調して行動しております。

1999年にはその仕組みが包括的に見直され、より迅速、多額かつ広範囲な債務救済が可能となり、債務救済と貧困削減や社会政策の連繋を強化するための幾つかの修正が承認されました。

またHIPCイニシアティブは2005年、国連のミレニアム開発目標*の達成に向けた動きを促進するためマルチ債務救済イニシアティブ(MDRI)*により拡充されました。MDRIは、HIPCイニシアティブのプロセスを完了しつつある国について、IMF、世界銀行、アフリカ開発基金(AfDF)の三機関による適格債務の100パーセント減免を認めています。また2007年には、米州開発銀行も西半球の5つの重債務貧困国に対してHIPCの枠組みを超える追加的債務救済を行うことを決めました。

二段階のプロセス

債務救済を受けるためには、各国は一定の条件を満たし、政策変更による貧困の削減を約束し、良好な政策遂行の実績を残すことが求められます。IMFと世界銀行は初期の段階で暫定的債務救済を行い、当該国がコミットメントを達成した段階で完全な債務救済を実行します。

第一段階:判断基準
HIPCイニシアティブに基づく支援を受けるためには、以下の4つの要件を満たさなくてはなりません。

1) 世界銀行の国際開発協会(IDA)から融資を受け、またIMFの貧困削減・成長ファシリティの利用についての適格性を有すること(IDAは無金利の融資およびグラントを最貧困国に提供し、IMFの貧困削減・成長ファシリティは低所得国に譲許的条件で融資を行う)。

2) 従来の債務救済の仕組みでは対処できないほどの持続不可能な債務負担に直面していること。

3) IMFと世界銀行の支援プログラム*を通じて実行する改革と健全な政策運営について、実績を挙げること。

4) 当該国において、広範な参加方式のプロセスに基づいた貧困削減戦略ペーパー(PRSP)*が策定されていること。

当該国がこれらの要件を満たしているか、もしくは満たすために十分進捗した場合、IMFと世界銀行の理事会は債務救済の適格性について正式に決定し、国際社会は当該国の債務を持続可能と判断される水準まで減免することを約束します。HIPCイニシアティブにおけるこの第一の段階を判断基準といいます。ある国が判断基準に到達した場合、当該国は返済期日がくる債務について暫定的救済を直ちに受けることができます。

第二段階:完了基準
HIPCイニシアティブに基づいて、債務の完全かつ取消し不能な減免を受けるためには、以下の点を満たさなくてはなりません。

1) IMFおよび世界銀行の融資によるプログラムに基づいて、良好な遂行の実績を更に続けること。

2) 判断基準で合意された主要な改革を十分に実行すること。

3) PRSPを採用し、最低でも一年間実行すること。

これらの要件を満たした場合、対象国は完了基準に達します。この時点で当該国は判断基準で約束された債務救済額の全額を履行してもらえます。

債務救済を受けている国
40カ国がHIPCイニシアティブに基づく支援の適格国、あるいは潜在的な適格国です。24カ国は既に完了基準に達し、IMFや他の債権者から取消し不能な債務救済を受けた、あるいは現在受けているところです。11カ国は判断基準に到達し、その一部は暫定的な救済を受けているところです。5カ国は、潜在的にHIPCイニシアティブに基づく支援の適格国ですが、まだ判断基準に到達していません。

債務救済は財源を社会福祉政策への支出に解放

債務救済は、低所得国の開発ニーズに対応し、債務の持続可能性が継続して維持されるよう確保するためのより広範な取組みむの一部に過ぎません。債務の減額が貧困に目に見える影響をもたらすためには、減額による追加的な財源が貧困層に恩恵をもたらすプログラムに使われる必要があります。

社会福祉政策への支出の拡大
HIPCイニシアティブが導入される以前、債務救済の適格国の債務返済額は平均して、保健と教育への支出の総額を若干上回っていました。現在これらの国々は、保健や教育、その他の社会福祉関連の支出を著しく増やし、その額は平均で返済額の約6倍となっています。

債務返済額の削減
債務救済を受けている35カ国は、債務の返済額が1999年から2007の間に平均でGDPの約2.5パーセント減少しました。債務救済(MDRIを含む)が完全に実施されると、債務負担が約90%軽減されると見込まれています。

公的債務管理の向上
債務救済により、完了基準に達した各国の債務状況は著しく改善されました。これらの国における債務指標は他の重債務貧困国および非重債務貧困国の指標を下回っています。しかし、これらの国々は現下の世界的経済危機において見られるとおり、いまだショック(特に輸出に影響するもの)に対して脆弱です。債務の脆弱性を決定的に低減させるために、各国は慎重な借入れ政策と公的な債務管理能力向上に努めなければなりません。

他の財源により補完されるIMFの債務救済

HIPCイニシアティブのための資金の半分はIMFと国際機関によって拠出され、残りの半分は二国間の債権者が提供します。

拡充されたHIPCイニシアティブに基づく債務救済の適格国および潜在的な適格国である計40カ国に対して支援を行うためには、2007年末時点の純現在価値ベースで総額約710億米ドルを要すると推計されています。

IMFが負担する費用の主な財源は、IMFのPRGF・HIPCトラスト*に寄託されていた、1999年にオフ・マーケットでを売却した際の売却益からなる投資収益です。また、加盟国による同トラストへの追加的拠出も行われています。

現在同トラストで利用可能な財源は、債務救済を受けるための第一段階の要件を満たして判断基準に達したすべての国に債務救済を実施できるほど十分ではありません。これは、2006年以降イニシアティブに参加したスーダン、ソマリアおよび他の国々への債務救済に必要となる資金が、当初の資金供与の枠組みには含まれていなかったためです。ですから、これらの国々が判断基準に達した際には、迅速な資金の調達が必要となるでしょう。

今後の課題

完全な債務救済のための要件を満たすに至っていない16カ国の多くは、同様の課題に直面しています。そのような課題には平和と安定の維持と、ガバナンスと基本的な公的サービスの提供の向上があります。これらの課題に取り組むためには、各国自らによる政策・制度強化のための継続した努力と国際社会による支援が必要となります。

また債務救済の適格国に対して、すべての債権者による完全な債務救済の実施を保証することも大きな課題となっています。最大の債権者である世界銀行、アフリカ開発銀行、IMF、米州開発銀行、およびパリ・クラブのすべての債権国はHIPCイニシアティブ下の約束に基づく債務救済、もしくはそれ以上の救済を行いました。しかし、他の債権者はこれに遅れを取る形となっています。

HIPCイニシアティブ全体の25%を占める、より小規模な国際機関、パリ・クラブ以外の二国間公的債権国、および民間セクターの債権者は期待されている救済のわずか一部しか実行していません。パリ・クラブ以外の二国間債権国全体としては、HIPCイニシアティブで約束した額の40%の債務救済を実行しましたが、半数近くの国が救済を一切実行していません。

民間セクターの債権者による救済実行率は、推定33%といまだに低いものの、近年実行されたいくつかの大規模な救済によりその値は著しく改善されました。また、民間セクター債権者の一部は重債務貧困国に対して訴訟を起こしました。国際機関を含む全債権者間での負担の共有に対し、重要な法的課題を突きつけています。

HIPCイニシアティブへの債権国の参加は自主的なものであるため、IMFと世界銀行は債権国に対して引き続き、同イニシアティブへの参加とこれに基づく債務救済の全額履行を道義的説得によって働きかけていきます。

IMFと世界銀行は、債務救済の履行状況をより良く評価・モニターするために更なる情報収集を続けます。IMFは、債権国との定期的なコンサルテーションやその他ミッションの場において、今後もHIPCイニシアティブの参加に関する問題を取り上げていきます。

HIPCイニシアティブに基づく支援を受けている国と、支援の適格国ないし潜在的な適格国で支援を望む国のリスト(2009年5月15日時点)
完了基準に達した国 (24ヵ国)

ベナン

ガイアナ

ニジェール

ボリビア

ホンジュラス

ルワンダ

ブルキナファソ

マダガスカル

サントメ・プリンシペ

ブルンジ

マラウィ

セネガル

カメルーン

マリ

シエラレオネ

エチオピア

モーリタニア

タンザニア

ガンビア

モザンビーク

ウガンダ

ガーナ

ニカラグア

ザンビア

暫定救済を受けている国(判断基準と完了基準の間)(11ヵ国)

アフガニスタン

コンゴ民主共和国

ハイチ

中央アフリカ共和国

コートジボワール

リベリア

チャド

ギニア

トーゴ

コンゴ共和国

ギニアビサワ

 

判断基準前の国(6ヵ国)

コモロ

キルギス共和国

スーダン

エリトリア

ソマリア

 

*リンク先の資料は、現在のところ英文のみ閲覧可能




IMF アジア太平洋地域事務所

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