HIV・エイズとの戦いにおけるIMFの役割
HIV・エイズの蔓延は保健、開発、安全保障に対するかつてないほどの脅威を今日の世界にもたらしています。この病気との戦いにおいてIMFは他の組織と協力して取り組んでいます。中でも代表的な活動として、HIV・エイズ対策やその他の貧困削減プログラムへの追加資金を割り当てる、貧困削減戦略による支援を行っています。
背景
2003年末に、HIV・エイズの感染者が世界中で合計4,000万人存在しました。2003年だけでも500万人が新たに感染し300万人以上が亡くなりました。感染者の3分の2はサブサハラ・アフリカに住んでおり、この病気は他の発展途上地域、特に旧ソ連邦、カリブ地域、東南アジアの一部に非常な勢いで広がっています。国連共同エイズプログラム(UNAIDS)によると、2010年までに126の低中所得国において新たに4,500万人がHIVに感染すると推定されています。
HIV・エイズは現在世界に深刻な開発危機をもたらしています。世界的流行が始まって以来、HIV・エイズは何百万人もの壮年期の成人を死亡させ、家族を離別させ、地域社会を破壊と貧困に追いやりました。1400万人を超える子供たちがHIV・エイズの影響で孤児となり、一部の国では平均寿命が20年以上減少しました。広域にわたる罹病は、日常の社会的セーフティ・ネットが崩壊する原因ともなっています。公共医療サービスが患者数の増大に苦慮するなか、保健医療の質は全体として低下しています。また、HIV・エイズによる就労人口の激減と人件費の上昇が、投資、生産、一人あたりの国民所得の面でも深刻な結果をもたらしています。
行動の呼びかけ
2001年4月、アナン国連事務総長はHIV・エイズと戦うための戦略の大綱について語り、国際社会、政府、民間部門に、計画を支える資源の提供を呼びかけました。この計画には以下が含まれます。
①予防(すなわち包括的な教育キャンペーン)、②母子感染阻止薬剤の提供、③感染者が人間らしい治療を受けられる環境、④ワクチンや治療法開発に向けたさらなる研究、⑤特に孤児などこの病気によって危険にさらされている人々の保護、などが含まれています。
同氏はさらにHIV・エイズ危機だけでなくマラリアや結核など発展途上国に影響を及ぼしている深刻な疾病問題にも取り組むためのグローバル基金の創設を呼びかけました。これらの疾病で一年に600万人近くの人が死亡し、それは世界全体の死亡原因の10%にあたります。
国連の保護のもとにUNAIDSは他の国連機関との連係行動を主導し、エイズとの戦いにおいて基本的な知識を広め、この流行病の展開に関する情報を集めて広く伝えています。2001年以降、エイズ、結核、マラリア対策のグローバル基金は、2008年までの資金として47億ドルを集めました。これまで、世界の93カ国、154のプログラムの支援に15億ドルの資金提供が確約されています。これらの財源のほぼ3分の2がHIV・エイズ対策に充てられます。過去5年間には、世界銀行が複数国HIV・エイズプログラムを通じた、15億ドルのHIV・エイズ対策資金の提供を確約しています。また、世界保健機関の包括的国際戦略『3×5(スリー・バイ・ファイブ)構想』(The 3 by 5 Initiative)は、2005年までに患者数が300万人に達するとみられる低所得国における、抗レトロウイルス薬による治療の普及を大きく加速させることを狙いとしています。
しかし、近年目覚しい進展が見られたとはいえ、各国がこの流行病に対処し戦うための資金を提供し、HIV・エイズが深刻な開発危機であることへの人々の認識を高め、また治療を受けやすくしたり抗レトロウィルス薬剤を手頃な価格で入手できるようにするためにはさらなる取り組みが必要です。
IMFの役割の重要性
IMFはHIV・エイズと戦うこのグローバルキャンペーンに関する国連事務総長の呼びかけを支持し、他の組織とも協力しています。中でも、世界銀行とは国家レベルでのHIV予防・治療プログラムの拡大を目指し協力して取組んでいます。これらのプログラムは低所得国の政府が市民団体や開発パートナーと協力して準備する多くの貧困削減戦略ペーパー(PRSP)の重要な要素となります。PRSPはIMFや世界銀行の譲許的融資を実施する際、また重債務貧困国(HIPC)イニシアチブのもと債務救済を実施する上での根拠となります。さらに、IMFは世界銀行と協力し、貧困国が歳出管理システムを向上させ、あらゆる保健プログラムを含む資金が効率的かつ透明性を維持して使用されるよう支援しています。
さらに、HIV・エイズはIMFが途上国と先進国の両者と定期的に開くサーベイランス(政策監視)協議において主要な議題として取り上げられます。HIV・エイズがもたらし得る深刻な経済上の影響は、IMFスタッフがHIV・エイズの被害国の経済見通しを分析し政策の助言を行う上で重要な要素となります。IMFが作成した多くのカントリー・レポートにHIV・エイズのマクロ経済的かつ財政的な影響が取り上げられています。また、IMFスタッフはマクロ経済的影響、保健医療へのアクセス、ならびに広い範囲の社会福祉へHIV・エイズがもたらす影響について数々の研究報告書を作成しています。IMFはグローバル基金に対する新規拠出や増額を含め、先進国からの政府開発援助の拡充を積極的に支持しています。
国際社会はHIV・エイズとの戦いにおいて前途に立ちはだかる多くの困難に直面しています。グローバル・パートナーシップの一員として、またその責務において、IMFはHIV・エイズと、そしてこの病気が人類や経済の発展に与える破壊的な影響との戦いにおいて国際社会を支援する役割を果たしています。