ファクトシート
世界危機とIMFの役割:最脆弱層の保護に向けて
2009年7月
現在の厳しい状況の中IMFは、社会扶助をはじめとする社会支出の維持・増加の実現に向け、各国政府を支援しています。特に、社会の最脆弱層への危機の影響を緩和する、ソーシャル・セーフティ・ネット・プログラムへの支出の拡大並びに、その対象の絞込みの向上に向けた施策を推進しています。以下は、昨今のIMF支援プログラムで、財政上の観点から持続的であるだけではなく高い費用効果をもたらす手法により、社会支出の維持を試みているプログラムの一例です。
現在の困難な状況の中、社会の最脆弱層への社会支出を保護しつつ必要な予算の節約を行えるよう、IMFは各国政府に対し支援を行っています。以下は、社会支出の維持に向けた近年のIMF支援プログラムの一例となっています。
| アルメニア | 社会支出の増加。 社会支出のGDPの約0.3%増を盛り込んだプログラムを実施しています。 |
| ベラルーシ | ソーシャル・セーフティ・ネットの強化。 ベラルーシはGDPの約13.5%という高水準の社会支出を誇っています。最も脆弱な立場にある人々を、補助金削減や景気減退の影響から保護するため、子供が3人以上いる世帯を対象とした住宅扶助、低所得世帯向けの現金の形をとらない住宅補助、並びに失業扶助を増額する予定です。また政策当局は、経済の鈍化と失業の増加により生じうる社会的なリスクの削減に向けた施策について、世界銀行と協議を行っています。 |
| ブルンジ | ソーシャル・セーフティ・ネットの強化。 現在のPRGF取極は、ソーシャル・セーフティ・ネットの強化により、値上がりした食糧・原油価格の貧困層への影響の緩和を試みています(食糧の確保並びに給食プログラム、小規模自作農家を対象とした種・肥料の配布など)。 同プログラムは元来、世界経済危機の直前に起きた、食糧・原油価格ショックへの対策として策定されたものです。 |
| コスタリカ | 社会支出の増加。 財政政策の目標として、2009年の民間需要の落ち込みによる、マイナスの影響の軽減を掲げています。政策当局は、財政余地を活用し、教育並びに労働集約的なインフラプロジェクトへの支出の増加を図るとしています。政策当局は条件付現金給付プログラム並びに無拠出制年金の拡大を行っています(双方の合計は、GDP1%相当)。資本投資はGDPの0.8%増額する予定で、その増加分は、主にインフラプロジェクトに充てられます。 |
| コートジボワール | 社会支出の増加。 2009年3月に承認されたPRGFの主な目的は、紛争後という環境の中で、貧困削減のための財政的余地を創出することにあります。そのため同国政府は、貧困層に最も影響がある32の歳出カテゴリーを特定、これら貧困層向け支出を、2008年のGDPの6.9%から2011年には同8.3%へ確実に増加させるとしています(PRGF支援プログラムでの貧困層向け支出の最低希望指標) 。 |
| エルサルバドル | 対象の絞込みの向上。 政策当局は3月初旬、非居住者向け電気助成金を撤廃し、社会支出の増加のための財政的余地を創出しました(最大でGDPの0.3%)。この財政的余地を活用し、団結ネットワーク(Red Solidaria:現金給付プログラム)の適用範囲を100の最も貧しい自治体まで広げると同時に、保健、教育、そして熱帯性暴風雨による被害の軽減など、対象を絞ったプログラムの実施が可能です。次回のプログラム・レビュー(2009年7月末に予定)に向け、IMFは交通・電気の助成金の撤廃もしくは削減を検討しており、その一部を、最貧困層への支援実施のための、ターゲットを絞り込んだ施策に充てたいとしています。 |
| グアテマラ | 社会支出の増加。 社会支出は、GDPの0.6%増額される予定です(2008年のGDPの4.4%から2009年は同5%)。政策当局の社会的保護政策は、現プログラムを強化し、最貧困層への目下の危機の影響を相殺することを掲げています。極度の貧困という問題の解決に向け、政府の重要な4つのプログラムを重点的に実施します。2008年に開始した条件付支援金制度(Mi familia progresa:最貧困世帯への教育と保健へのアクセス向上を目指す) がカギとなると考えられており、2009年には、50万世帯・GDPの0.3%まで拡大される見込みです。 |
| ハンガリー | 対象の絞込みの向上。 財政戦略の狙いは貧困層の保護です。例えば、年金給付額の削減は、ある一定以上の年金を受給している年金生活者限定とし、障害を持つ最も貧しい人々への給付金は増額する一方、障害年金の増額は取り消す、児童手当の削減は、ある特定層以上の世帯を対象とする、としています。政府は関係パートナーと協力し、財政政策の策定を行います。また、雇用の維持、仕事の創出、さらに失業者に対しては一時的なローン支払の保証といった、支出プログラムを策定しました。 |
| アイスランド | 社会支出の増加。 2009年に関しては、これまで自動安定化装置はほぼ制限なく機能しています。これはつまり同国が実施している大規模なソーシャル・セーフティ・ネットが、最脆弱層への衝撃を緩和する役割を果たしていると理解できます。政府は現在、2009年後半で必要な財政調整の実施に向けた、政策オプションを多数特定する作業を行っています。この過程においては、合意形成が非常に重要だといえます。 |
| ラトビア | 社会支出の増加と対象の絞込みの向上。 ラトビアの支出調整は、社会支出と資本的支出を維持すると共に、賃金の大幅な削減を行うなど、従来の財政再建とは大きく異なっています。社会支出は2008年から2009年の間でGDPの1.5%増を目指しており、EU・OECDの平均に近くなります。ただし、対象はより絞り込む必要があり、またソーシャル・セーフティ・ネットへの支出はヨーロッパの平均をGDPの約0.5%下回っています。これは概して、地方自治体の歳入格差に起因しており、地方自治体改革計画の下こういった問題の一部ですが、解決が期待されます。また、同プログラムには、保健部門の改革並びに、社会保障制度のターゲットの絞込みの向上ための追加的措置も含まれています。 |
| パキスタン | 社会支出の増加と対象の絞込みの向上。 ソーシャル・セーフティ・ネットの強化は、同プログラムの最重要課題です。貧困層への現金給付は、2008年~2009年のGDP の0.4%から2009年~2010年は同0.6%へと増加が見込まれています。先日発表された2009年~2010年の小麦の調達プログラムには、当初の予定だったGDPの0.3%を超える支出が含まれる可能性があります。政府は、ソーシャル・セーフティ・ネットの強化と貧困層により対象を絞るための施策の開発に向け、世界銀行と協力しています。 また最近では、経済の鈍化、追加的ドナー支援、そして優先事項への支出を維持する必要から、IMFと政策当局の間で2009年・2010年の財政赤字目標は緩和し、GDPの4.6%とすることで暫定的合意に至っています(当初の目標は、GDPの3.4%)。これはドナー支援にまつわる追加支出に備えるものです(最大でGDPの1.2%)。この緩和により、追加的ドナー支援の吸収、成長の拡大並びに、社会・開発・国内難民問題を含む治安関連支出の増額への、財政的余地が創出されると考えられます。 |
| ルーマニア | 社会支出の増加。 IMF支援プログラムにより、2009年は2億5,000万レウ(GDPの0.05%相当)、2010年は5億レウ(GDPの0.1%)の追加支出の余地が生まれました。これにより景気減速の中、最脆弱層に対する社会的保護が改善されると期待されます。 |
| セネガル | 対象の絞込みの向上と社会支出の増加。 厳しい予算状況ではあるものの、IMF支援プログラムは、PRSPの目標を2010年までに達成するとして、社会支出の維持に尽力しています。2008年に行われた「貧困・社会影響分析(PSIA)」に基づき政策当局は、電気の少量使用者にターゲットを絞った補助率を設定すると共に(2008年8月実施)、農業補助金を、米をはじめとする生産量の高い穀物の生産拡大支援へ転換するなど(前回のキャンペーンの間、米の生産量は急増)、食糧・燃料価格ショックの影響の緩和を図りました。今後開発パートナーからの支援を受け政策当局は、児童を通学させたり、医療センターへ訪問するなど、人的資本への投資を条件に、貧困世帯の支援のための現金給付制度の導入の余地を模索したいとしています。 |
| セーシェル | 対象の絞込みの向上。 現在実施されているスタンドバイ取極により、現金給付プログラムが導入されました。このプログラムは、ターゲットが絞られていなかった生産助成金を撤廃し、最脆弱層保護を目的として策定されました。 |
| ウクライナ | 社会支出の増加と対象の絞込みの向上。 IMF支援プログラムは、景気後退期の中、社会支出の大幅増加などを掲げています(GDPの0.8%)。主な施策は、 (i) ライフライン料金や住宅手当・公共料金助成を実施するなど、ガソリン価格の上昇から貧困者を保護 、(ii) 失業保険制度を活用した失業者の保護、 (iii) 世界銀行が特定した、2つのソーシャル・セーフティ・プログラムを拡大。これらプログラムは対象を限定:失業保険は、失業する可能性のある人々が利用可能。およそ2,000万人が加入しており、最長1年間毎月現金給付を行う。最低給付額は、最低賃金の60%。住宅手当・公共料金の助成は、収入の20%以上(年金受給者は15%)を公共料金への支払いが占めている層が対象。ガソリン料金は、すでに小規模利用者に「ライフライン」を提供できるよう設定されています(実は、人口の半数がこのカテゴリーに分類される)。最後に、貧困世帯に対し所得補助を行うプログラムもあります。世界銀行では同プログラムは、ウクライナで最も良く対象を絞ったプログラムのひとつと認識しています。 |
