IMFによるサーベイランス(政策監視)
IMFは、国際通貨制度を監督し、加盟186カ国の経済金融政策を監視する権限を与えられています。この活動はサーベイランス(政策監視)として知られています。IMFのサーベイランスは世界全体のみならず個々の加盟国について国内的・国際的安定に対するリスクを明らかにし、政策調整が必要かどうかについての助言を行います。これにより、IMFは、加盟国間の財、サービス及び資本の交流を促進し、健全な経済成長をするという国際通貨制度の基本的目的を果たすのを助成します。 |
IMFによるサーベイランスの重要性
一国の経済・金融政策が他の多くの国に波及して影響を与えかねない今日のグルーバル化した経済では、国際協力が不可欠です。全世界のほぼすべて186カ国が加盟するIMFは、この協力を促進します。IMFの活動は主に以下の2つに大別されます。つまり、世界経済の監視であるマルチラテラル・サーベイランスと各加盟国の内外経済の安定(成長を含む)を促進するための政策の評価および政策についての助言からなる国別サーベイランスです。
国別サーベイランス
IMFのエコノミストは定期的(通常は一年に一回)に加盟国を訪問し、政府及び中央銀行当局者から資料を収集し、意見交換を行います。国内及び国際経済の安定に対するリスクの有無を明らかにし、経済・金融政策の調整が必要かどうかが焦点となります。IMFスタッフはミッション期間中、各国の経済政策と方向性を評価するために国会議員、企業、労働団体や市民社会の代表者など、当局以外の利害関係者ともしばしば交流を行っています。ミッション終了後には、IMF理事会へ報告書が提出され、討議が行われます。また、理事会*による評価は各国当局へ伝えられます。
そして最近では、サーベイランスは透明性をより増しています。ほぼすべての加盟国がIMFスタッフと理事会の見解の概要を示すパブリック・インフォメーション・ノーティス(PIN)*の公表に同意しており、10カ国中9カ国の割合で、スタッフ・レポートやその他の分析がIMFのウェブサイトに掲載されています。
マルチラテラル・サーベイランス
IMFは継続的にグローバル及び地域経済の動向をモニターしています。こうしたグローバル及び地域経済のサーベイランス活動は、年2回公表される「世界経済見通し(WEO)*」と「国際金融安定性報告書(GFSR)*」にまとめられます。WEOは世界経済の現状に関して詳細な分析を行い、昨今の世界金融不安や世界経済の低迷など緊急性の高い問題に焦点を当てています。GFSRは国際金融市場について、最新の分析と見通しを示します。また、新興市場国の資金調達に際する諸問題についてグローバルな観点から分析を行います。これは、金融市場の安定性を脅かすリスクとなる不均衡や脆弱性を明らかにすることを目的としています。IMFはまた、「地域経済見通し(REO)*」を公表し、5つの主要地域について詳細な分析を行っています。
これに加えて、IMFはグローバル経済における特定の相互関連性について注意喚起することもあります。2006~2007年には、構造的もしくは地域的な重要性のある事項に関して、問題提起し、議論と政策実施を促進するためマルチラテラル・コンサルテーションが導入されました。2006~2007年は、グローバル経済の不均衡の問題に焦点を当てた第1回のマルチラテラル・コンサルテーション*が開催され、中国、ユーロ圏、日本、サウジアラビア及び米国が参加しました。参加各国はどのように不均衡の問題に対応するかについて、個々の発言を行いました。
IMFサーベイランスの進展と今日における役割
現在の形でのサーベイランスは、固定為替平価のブレトン・ウッズ・システムが崩壊した後の1970年代末に改正されたIMF協定*第4条により確立されました。協定第4条では、加盟国は世界の為替相場制度の安定を促進するためIMF及び他の加盟国と協力すること、とされています。特に、加盟国は、国内及び対外経済政策を相互に合意された行動規範にあわせて運営することを約束しています。IMFは、(1)国際通貨制度の効率的運営を確実なものにするため、国際通貨制度を監視する、そして(2)各加盟国の政策上の義務の遵守状況を監視する、という義務を負っています。(これらはマルチラテラル・サーベイランスと国別サーベイランスのそれぞれ別個の側面ですが、密接に関連した側面といえます。) グローバル化した21世紀の世界においてもサーベイランスが引き続き有効であることを確実にするため、IMFはその政策枠組みを常に再評価しています。
サーベイランスに関する政策枠組みの強化
2007年6月に、サーベイランスの政策枠組みについては、加盟国の政策に対する国別サーベイランスに関する決定*により、1970年代以降初めての大幅な更改が行われました。同決定は、国別サーベイランスが、加盟国の諸政策が対外的安定を促進するものであるかどうかを評価することに焦点を当てるもの点を明確化しています。 すなわち、サーベイランスは主として、通貨、財政、金融及び為相政策に焦点を当てると共に、リスクと脆弱性の評価を中心とすべきであるということです。安定化を促進させ、相場操縦を防ぐために、為相政策についてのガイドラインを加盟国に提供しています。この決定はまた、サーベイランスは加盟国の特別な状況を考慮にいれるとともに、多国的な視野にたってIMFと加盟国との間で行われる率直、公平且つ前向きな協同プロセスであると強調しています。
サーベイランス実施の強化
サーベイランスはグローバル経済とともに進展しなければなりません。たとえば、最近の金融市場における混乱は実体経済と金融セクターの関連性についてより深い分析が必要だということを明示しました。金融セクター評価プログラム(FSAP)*に加え、サーベイランスは金融セクターの問題*分析に一層注力し、マクロ経済的な評価に金融セクターと資本市場分析を融合する分析手法も開発されています。また、IMFスタッフが各国に助言を行う際は、グローバル金融機関としての利点を活用し、複数国における経験と政策上の教訓をふまえるよう努力しています。各加盟国の政策が他の加盟国の経済に与える波及効果についてもスタッフが特に重点を置いて分析しており、IMFは為替評価により注力しています。


