2月8日には奨学生の要望に応えて、IMFアジア太平洋局エコノミストのラファエル・ラム氏が最近発表したIMFワーキングペーパー「日本の中小企業活性化のために金融セクター政策は何ができるか」を元に研究のコツについて話をしました。ラム氏はデータソースの在り処、どのようなデータを探すべきか、どのように計量経済学の分析を行い、実証的証拠から政策的インプリケーションを引き出すかといった点に触れながら、研究方法を詳しく説明しました。ラム氏と活発に議論を行った奨学生は、政策志向の研究を実施する方法について、ラム氏から実地体験に基づいた情報を直接得られたことに満足していました。

JISPAセミナーに対する奨学生のコメント: セミナーではラファエル・ラム博士は自身のワーキングペーパーを極めて明晰かつ論理的に説明されました。それだけでなく、ラム博士と直接対話する機会が与えられて学術研究の実際的なスキルを学べた点がとても良かったです。私の教授は学生たちに、JISPAプログラムの奨学生は政策研究大学院大学で常に最高の品質の政策論文を書くと言っています。私はそのことを大変誇らしく思いますが、JISPAの奨学生が優れている大きな理由の1つは、たとえば国際大学のオリエンテーション・プログラムやIMF年次総会セミナーのような研修プログラム、今回のような学術論文用の特別セミナーや、その他さまざまな会議やセミナーを通じてIMF-OAPからの強力な支援が受けられるためだと思っています。 （ウー・マン氏、2012-13年度、政策研究大学院大学、中国証券監督管理委員会）

ハイレベル・セミナー: 奨学生はOAP主催のセミナーにも招待されました。1月7～8日に開催されたIMF財政局-OAP共催の「世界危機後のアジアにおける財政的に持続可能かつ公平な年金制度の設計」と題された地域セミナーでは、アジア太平洋地域を専門とする高名な研究者と、各国財務･労務関連省庁の高官が一堂に会しました。奨学生は政策課題と公的年金制度改革が抱える困難な問題について理解を深めたのみならず、自国の政府高官と意見交換する機会を与えられました。また奨学生は2013年2月7日開催の「今後の展望－－日本における経済成長と雇用回復のための政策」と題されたIMFアジア太平洋局（APD）-OAP共催セミナーにも招待されました。さらに一橋大学とOAPは「資金フロー管理政策：その効果的な活用法を探る」と題されたハイレベル・セミナーを2013年3月14～15日に共催し、JISPA奨学生も招かれました。この問題は奨学生の出身国によっては極めて重要性が高いものであり、セミナーの議論は奨学生にとって刺激となりました。

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JISPA修了後のご経歴と中央銀行の副総裁としてのお仕事の内容を簡単にご紹介ください。JISPAでの体験はミン・フン副総裁のキャリア形成にどのように役立ちましたか？

JISPA修了後、ベトナム国家銀行に復職し、国際協力局と人事局の局長を務め、2011年10月に副総裁に就任しました。今の仕事の内容は次のようなものです。

• 権限下の業務（国際協力、外国為替管理、国際プロジェクト活動）で中銀総裁を補佐
• 世界銀行、IMF、アジア開発銀行でベトナム中銀の総裁代理を務める

これまでキャリアを積むなかで、JISPAで学んだ政策立案のための包括的な知識とツール、そしてリーダーシップのスキルは、要求水準が高く多くの専門分野にまたがる政策業務で効果的に、そして自然に役立ってきました。JISPAのプログラムは極めて充実していることから、現在、日本に留学中のJISPA奨学生全員が学業と将来のキャリアで成功を収められるだろうと思います。我々JISPA同窓生は誰もが強力で団結力のあるネットワークを作ろうと心がけており、アジア太平洋地域全体の繁栄に向けて国の発展に寄与するべく相互扶助を行っています。

また2013年は「日本ベトナム友好年」であり、ベトナムと日本の国交開始40周年を記念する年です。私は最近のベトナムの経済発展に果たした日越関係の役割を高く評価しております。

ベトナム経済の見通しと政策課題について教えてください。

ベトナムは現在、発展の極めて重要な段階に置かれています。わが国は過去数年にわたり高度成長を遂げてきましたが、昨今のグローバル経済金融危機から国内経済は多くの点で困難な状況にあり、とりわけ経済成長の質と成長モデルの転換という問題に直面しています。今後数年は、マクロ経済の安定、インフレ抑制、適正水準の経済成長の維持が政府の優先課題です。わが国は公共投資、金融セクター、および国営企業の再構築を中心とした経済改革プログラムに着手しています。こうした重要な再構築を行うには、国民の一致した努力と、ベトナムの発展過程にこれまで関与してきた日本をはじめとする友好国からの有益なサポートが必要とされています。

日本に関連する業務に就かれましたか？　その内容とどのようなご経験だったかを教えてください。

ベトナムは1993年にIMFに対する延滞債務問題で、外国債権者と援助機関から融資が凍結されましたが、その時以来、日本とベトナムは緊密な関係を発展させてきました。その時、ベトナムは9ヵ国と銀行16行からブリッジローンと援助金を供与されて延滞債務返済の支援を受け、その結果、IMF、世界銀行、アジア開発銀行や他の国際的援助機関からの融資を再開できました。日本は当時の支援国の1つでした。以降、両国間の協力関係、とりわけ銀行部門での関係は一貫して強化拡大の途を辿りました。

ベトナム国家銀行でのこれまでの20年間で、私は日銀、国際協力機構、国際協力銀行、在ベトナム日本大使館を通じた日本政府が支援する多くの活動やプロジェクトを目の当たりにし、それらに直接的に携わってきました。私は日本の強靭な精神、強固なコミットメント、効率的な仕事の仕方や熱心な協力の姿勢にいつも強い印象を受けてきました。日本とベトナムは相互に多くを学べるとともに、さまざまな領域や業務で分かち合い、協力していくことで学習していくことができるのです。

2012年10月に東京で開催されたIMF・世界銀行年次総会ではベトナム代表団団長として来日されました。年次総会の間に、あるいは東京滞在中にご経験された、役に立った出来事、または印象に残った出来事を教えてください。

（日本関連の経験についての続き） 2012年10月に東京で開催されたIMF・世界銀行年次総会出席のために来日した折には、日本銀行を訪問して白川総裁（当時）に面会し、世界、アジア地域、日越両国国内の最近の事情と両国間の歴史的な協力関係について意見交換しました。協力がプラスの結果をもたらしたという点で我々の意見は一致し、今後も関係強化を進めていく約束をしました。過去40年間の両国関係の発展過程では多くの成果が得られました。将来的に日越間の深く実り多い協力関係はいっそう強化され、両国とアジア太平洋地域全体に明るい将来をもたらすと私は信じています。

ベトナム国家銀行のミン・フン副総裁（一番左）と日本銀行の白川総裁（当時）の会談　（2012年10月）

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日本に留学する前の職務内容について教えて下さい。

タイ銀行の金融機関政策グループのプルーデンス政策部で約3年働きました。主にプルーデンス規制策定を担当する部署でした。はじめにバーゼルIIの枠組みに沿った、主に信用リスクに関するリスクベースの銀行監督に携わりました。ドッド＝フランク・ウォール街改革・消費者保護法を調査研究し、たとえばボルカー・ルールがタイの規制政策に 与える影響も分析しました。その後、新しい規制であるバーゼルIII導入後の銀行自己資本規制に関する業務を担当しました。

日本で勉強しようと思ったきっかけは何ですか？　また、JISPAへの応募動機は何ですか？

多くの点で日本に関心がありました。 (1)世界有数の経済大国 、(2) 生活水準が高く社会が安定しており、技術革新が盛んで教育レベルが高いアジアの国 、(3) デフレーション、経済の停滞、人口の高齢化といった極めて困難な政策課題がある国、 (4) 長い歴史と興味深い文化がある国 、などがその理由です。タイ中銀の女性の前総裁だったタリサ・ワタナガセ博士にも日本留学体験があったことも大きな理由です。そうしたことから是非日本で学びたいと考えました。

JISPAのおかげで知識を広げ、能力を高められる機会を与えられました。JISPAでは、公共政策を学べる日本のトップランクの大学の中から好きな大学を選べますし、学術的な現地調査への支援もあり、多様でグローバルな課題に関するセミナーやコンファレンスも多く開催しています。こうしたことはJISPA以外の奨学金制度にはないものでした。

何を勉強していますか？

現在、東京大学の公共政策大学院で学んでいます。ここでは公共政策という専門分野の知識の習得だけでなく、実務的能力の向上を図れます。バランスの取れた知識の土台の上に、自分の関心対象と将来のキャリア形成に合った専門授業を選べます。私は主に経済と金融関連の科目、現代日本経済の論点、中央銀行論、アジア金融市場などを選びました。さまざまな科目を通じて得た知識を政策の策定、実施、評価に応用できる能力を培い、現代社会が直面している政策課題が解決できるようになりたいと思います。

日本での体験話（楽しかった／悲しかった／驚いた／感動した、から好きなエピソードをひとつ）

日本滞在中の楽しかった貴重な時間のうち、一番思い出に残った体験は昨夏の東北旅行です。東日本大震災と津波、福島の原発事故で大きな被害を受けた多くの被災地を訪問しました。福島県を回り、南相馬市で働く医師やNPOフロンティアでボランティアをしている人々と会いました。また宮城県女川町の町長と討論を行い、南三陸町を訪れて仮説住宅コミュニティーのリーダーたちにも会いました。さらに津波によって深刻な被害を受けた海草加工工場も見学し、陸前高田市の市長との面会も適いました。旅行の最終日には七ヶ浜町復興支援ボランティアセンターで1日ボランティアをしました。

この旅行によって被災地の現状に触れる生の体験ができました。被災地の人々に会って話をすることで、実際に社会貢献する人々に接することができました。さらに、ボランティア活動での日焼けも良い思い出となりました。ボランティア活動をしなければ、被災地の復興がどれだけ大仕事かということを実感できなかったでしょう。そうした意味で貴重な経験でした。ボランティア活動をやり遂げるには大きな努力、長い時間、前向きの態度、やる気などが求められるのです。旅行からは当初の期待以上のものが得られました。数え切れないことを学びましたが、それは、たとえば、公共政策を実際に実行する上での課題と難しさを理解すること、人々が社会的責任を持つように働きかけていくこと、公共政策は誰の為のものなのかを考える、といったことです。日本人の「絶対あきらめない」精神と「国を愛する気持ち」から私はやる気をもらいました。どれだけ多くの地震や自然災害が襲い、それがどれだけ深刻なものであっても日本が今日まで偉大な国であり続けた理由が旅行を通じて分かりました。

JISPA関連の体験談、感想（オリエンテーション・プログラム、セミナーやIMF/OAPエコノミストとの交流イベント等）をお願いします。

JISPAの奨学生だけを対象として、現代経済の論点についてのさまざまなセミナーがOAP主催で開かれました。セミナーは参加型で質問ができたほか、国際会議の形態の議論に慣れることもできました。こうしたことは、実際の国際会議に将来出席したときに慌てない準備にもなりました。またOAPの招待により、グローバル経済が直面するマクロ経済と金融の重要な最新の問題に関する地域会議にオブザーバー参加する機会も与えられました。そこでは政府関係者やIMF、日銀、財務省といった主要な経済関連機関の高官と出会い、学ぶ機会を与えられました。こうした機会はJISPA奨学生でなければ得られなかったでしょう。またJISPAでは奨学生や同級生同士で関係を作って将来助け合えるような、多様な素晴らしい国際的人脈作りの機会を得られました。

将来の夢、キャリアビジョンは何ですか？

先進国と発展途上国を隔てるものは何かということを私は日本で吸収し、学習しました。一国の経済発展に寄与するのは資本、労働、技術だけではなく、より大切なのは人的資本なのです。長い時間をかけて国内に蓄積された人的資本は技術発展に不可欠な要因です。強いモチベーションを持ち、学びを欲している私自身、自国の有効な人的資本、貴重な資本の一部として寄与できると思います。ですから私の将来の希望は、タイの大きな歯車の1つとなって国を前進させることです。

好きな言葉は何ですか？

特別な機会が訪れるのを待つな。普通の機会を捉え、それを特別な機会にせよ。

日本へのメッセージ

日本は私の永遠のヒーローです！

他に伝えたいことはありますか？

JISPAの一貫した大きなサポートに感謝したいです。帰国後は与えられたこの素晴らしい機会とそこで得た経験を職務やキャリア開発に活用し、将来は国のために役立てたいです。

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