特別引出権(SDR)通貨バスケットの見直し

2015年11月2日

IMF理事会による特別引出権(SDR)バスケット評価手法の見直しは、5年に1回或いは、情勢により必要と判断された場合はこれより早期に行われます。SDRの準備資産としての価値を高めるため、SDR通貨バスケットに世界の貿易及び金融システムにおける主要通貨の相対的重要性を反映させることが見直しの目的です。直近の見直しは2015年11月30日に終了しました。

SDRの見直しの対象

見直しでは、SDRの評価方法の主な要素がカバーされます。例えば、SDRバスケットに採用する通貨の選択で使われる基準や指標、バスケットに採用される通貨の数、及び通貨の比重を決めるための手法などです。またSDR金利バスケットに採用されている金融商品も、通常その対象となります。

直近のレビューでは(2010年11月)、財とサービスの輸出額及びIMFの他の加盟国が保有するそれぞれの通貨建ての準備資産額を基準に、SDRバスケットの通貨の比重が変更となりました。こうした変更は、2011年1月1日付で発効しました。

2015年の見直し-SDRバスケットの構成内容と規模

直近の見直し(2015年11月に終了)で理事会は、2016年10月1日に中国の人民元(RMB)を米ドル、ユーロ、円、英ポンドとともにSDRバスケットの5番目の構成通貨とすることを決定しました。

なかでもIMFは、RMBがSDRバスケットに加わるための現行基準を満たしていると判断しました(下記参照)。世界第3位の輸出国(過去5年間)である中国は第1の基準を満たしています。同時にIMFは、2016年10月1日付けでRMBが自由利用可能通貨であり第2の基準を満たすという判断をしました。中国当局はRMBのオペレーションを促進するための広範な策を採ってきており、その結果、IMF、加盟国、そして他のSDR利用者は現在、オンショア市場に十分にアクセスすることができRMBでIMF関連そして外貨準備運営関連の取引を大きな障害なく行っています。RMBがSDRバスケットに加わることを受け、2016年10月1日に中国国債の3カ月物のベンチマーク利回りがRMG建ての商品としてSDR金利バスケットに採用されます。

2015年の見直し-構成通貨の比重

同時にIMFは、SDRバスケットの通貨比重を決定する新たな計算式を採択しました。これは、1978年に採択された計算式をめぐる長期にわたり認められていた様々な課題に対処するための措置です。2010年の「SDR評価手法の見直し」で提示された二つの選択肢のひとつだった今回採用された計算式は、通貨発行体の輸出額と複合的な金融指標に同等の役割を付与しています。金融指標は、関連通貨の発行体ではない他の金融当局が保持する加盟国(もしくは通貨同盟)通貨建ての外貨準備高、関連通貨の外国為替市場での売買高、及び関連通貨建ての銀行の対外負債と国際債券の総額を、等しく考慮しています。

採用された計算式を基に、2016年10月1日付けで発効する新たなSDRバスケットの5通貨の量を決定する際に以下の比重を使用することになります。

  • 米ドル- 41.73%(2010年の見直し時は41.9%)
  • ユーロ- 30.93%(同37.4%)
  • 中国人民元- 10.92%
  • 日本円- 8.33%(同9.4%)
  • スターリングポンド- 8.09%(同11.3%)

新たなバスケットに占める各通貨量は2016年9月30日に、上記比重を基に算出されます。各通貨量は2016年9月30日に、同日以前の3カ月間の構成通貨の為替レートの平均を基準に、現行及び新規の評価バスケットのもとでSDRの価値が同日に等しくなるような手法で算出されます。IMFは2016年10月1日までの数週間で具体的な通貨量を発表する予定です。

2016年10月1日の新規SDRバスケットの発効まで、SDRバスケットとその評価はこれまでの4通貨(米ドル、ユーロ、日本円、スターリングポンド)を基盤とします。なお、2010年の見直しの際の各通貨の比重は上記のとおりです。1

SDRバスケットの採用基準

2000年に理事会が採択した現採用基準は、SDRバスケットは加盟国或いは通貨同盟が発行する通貨で、過去5年間で輸出額が最も高く、さらにはIMFが「自由利用可能通貨」であると判断した通貨から構成されるとしています。2015年11月30日に終了した直近の見直しで、理事会はバスケットの構成通貨を5通貨まで拡大する決定を下しました。この変更は2016年10月1日に施行されます。

「入り口」としての機能を果たす輸出基準は、バスケットに採用される通貨が、世界経済で中心的な役割を果たす加盟国・通貨同盟発行の通貨であることを担保するためのものです。これは1970年以降SDRバスケット通貨選択の基準としての役割を果たしています。

自由利用可能通貨であることという第2の基準は、2000年に正式に採用となりました。これは、SDRバスケットの価値を計るにあたり金融取引の重要性を正式に反映させるためのものです。

「自由利用可能通貨」の概念

IMF協定は、「自由利用可能通貨」を、IMFが(i)国際取引での支払いに広く使われ、(ii)主要な取引市場で広く取引されていると判断する通貨と定義しています。

自由利用可能通貨の概念は、実際に国際的に利用されていることや通貨取引を重視しており、通貨が自由に変動するか或いは完全に交換可能であるかということではありません。

ある程度の資本規制がかけられていたとしても、通貨は広く使われ広く取引される場合があります(過去には、スターリングポンドや日本円といった通貨が一部資本規制がかけられていても自由利用可能通貨と判断されたケースもあります)。一方で、完全に交換可能な通貨が必ずしも広く使われ取引されているわけではありません。

自由利用可能通貨の概念は、IMFの金融業務で中心的な役割を果たしています。なかでも、全ての借入国は、自由利用可能通貨を受け取る権利を有しています。実は、IMF融資 業務が、実際には自由利用可能通貨またはSDRで行われており、後者の場合、借り入れを行っている国はSDRを自由利用可能通貨と交換する権利を有しています。自由利用可能通貨の概念は、加盟国がIMFから受け取った通貨-直接的・間接的(つまり、不利益を被ることなくこれを他の通貨と交換することによる)にかかわらず-を、国際収支上の資金調達ニーズに対応するために使えるようにするものです。

自由利用可能通貨を判断するための指標

自由利用可能通貨の定義には解説が必要であり、自由利用可能通貨の決断には、法的枠組み内での判断が必要です。またその決断は、IMFの金融活動の枠組みのなかでの自由利用可能通貨というコンセプトの目的と目標を指針とします。

IMF理事会はその判断材料として量的指標を活用します。2011年、理事会は自由利用可能度を評価する際に、広く利用されているかを判断するための指標として、準備資産に占める割合、国際的な債券の通貨表記、及び国際的な銀行の負債の通貨表記、そして広く取引で利用さているかを判断するための指針として外国為替市場での取引額(売買高)など、複数の指標を重要要素として活用することを承認しました。また、2015年11月に終了した直近の見直しの一環で2011年に承認されたこれら指標を補完するため、理事会は、外国通貨資産の公的保有高、国際債券の発行、国境を越える決済、及び貿易金融などの指標も追加し考慮しました。

SDRの評価方法を決定するには、大多数の賛成が必要

(i)評価の原則の変更や(ii)現行の原則の適用の抜本的な変更には総議決権の85%という大多数の賛成が必要であることから、評価方法の決定には総議決権の70%という大多数の賛成がとなります。これまで、SDRの評価方法の変更は全て、総議決権の70%という大多数で決定されています。

次回見直し

SDR評価手法の次回見直しは、2021年9月31日まで、或いは状況の変化によりより早期の見直しが正当と判断された場合はそれ以前に行われます。



1 2015年8月、理事会は2010年の見直しで導入されたSDRバスケットを2016年9月30日まで延長しました。