## 新しい社会契約

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### 概要
- 現在は「不透明な時代」にあり、自由民主主義、自由主義経済、ルールに基づく国際制度の価値を否定する傾向が強まっている。
- 先進国では経済成長が鈍化し、生産性や社会的流動性が頭打ちになり、人口構成やテクノロジーの変化を考えると将来が懸念される。
- 大衆の怒りやエリート層に対する不信感が、国家主義と反自由主義を謳う政治家への支持増加につながっている。

### 原因と影響
- 不平等と自動化や高齢化が生じさせる将来の見通しに対する不安が主要因。
- 世界的傾向の実例と統計:
  - 2005～2014年にかけて、先進25か国で世帯全体の65～70%（5億4,000万～5億8,000万人）が税・再分配前の所得が横ばいか減少（マッキンゼー・グローバル・インスティテュート調査）。
  - 税引後の可処分所得の落ち込みは財政政策により全体の20～25%に抑えられたとの指摘（マッキンゼー 2016）。
  - 米国では市場所得が4%減少した中、可処分所得は徐々に1%増加。差分の5%ポイントはオバマ政権の景気刺激策による家計への3,500億ドル超の所得移転が要因。
  - フランスではセーフティネットにより可処分所得の中央値は市場所得の中央値よりも3%ポイント高く、英国では市場所得の落ち込みは所得移転により完全に相殺された。
  - 労働市場影響の予測: 2014～2024年にソフトウェア開発の高賃金の仕事1つに対し、介護や在宅医療助手の低賃金の仕事が6つ創出される（米国労働統計局の予測）。
  - 政治的影響の例: 自動化影響の最も受けにくかった15州は2016年にヒラリー・クリントン支持へ回り、最も受けやすかった22州のうち21州はドナルド・トランプに投票（Delsman, Forthcoming の引用）。
  - 世代間支出と投票行動: OECDデータによれば、投票者年齢の中央値が1歳上がるごとに年金への公共支出がGDPの0.5%規模で増加（Ebbinghaus and Naumann 2018）。

### 社会契約の課題
- 社会契約の再定義が必要：市民の権利と義務、公共財提供のための資源配分、誰を保護するか、家庭・非営利・市場・国家間の責任配分などを見直す必要がある。
- 普遍的給付の再検討:
  - 普遍的給付は政治的一致と質保証の面で利点がある可能性。
  - 差別的な低質サービス化の懸念（リチャード・ティトマスの指摘）。
- 格差対応:
  - 中期的には教育、社会的流動性、貧しい地域のインフラ投資、生産性向上への波及などの当初配分政策が鍵。
  - 富の格差拡大を受け、相続財産、土地、不動産など富への課税強化を検討すべき。
  - IMFの研究（Ostry, Berg, and Tsangarides 2014）は、平等性が高まると成長が促進されることを示唆。
  - 所得に下限を設ける政策は低所得者保護の一法。筆者はほとんどの中所得国・先進国でユニバーサル・ベーシックインカムを支持しないとの立場：費用が高額、福祉国家に劣る恐れ、労働意欲や仕事の意義への影響を懸念。
  - 代替策として教育・医療の利用機会保証、賃金助成、勤労所得税額控除、最低賃金引上げを提示。

### 労働市場と移行政策
- 労働の柔軟性とセーフティネットの組合せが重要:
  - 企業の雇用・解雇の柔軟性に対し、手厚い失業給付、研修、就職斡旋を提供するべき。デンマークの「フレキシキュリティ」がその例。
  - 多くの国で労働者の教育や研修への支出は減少傾向にあり、離職率が高いと企業の研修投資のインセンティブが低下。研修や移行支援への投資拡充が必要。
  - パートタイム労働者や非正規労働者に対する年金、有給休暇、研修の権利拡大はデンマーク、ドイツ、オランダで有益な改革だった。
- 所得シフトと税制:
  - 技術進歩と高齢化に伴い、労働から資本への所得のシフトを是正する必要。労働への過重課税をなくすことが第一歩。
  - 資本課税がオフショアや節税スキームで回避される問題に対し、経済活動が実施される場所で課税されるようにする国際的取組みが必要。

### 政策的提言（要点）
- 社会契約を再構築して、グローバル化とテクノロジーによる変化に適切に対応する。
- セーフティネットの設計において相互義務や保険的要素を復活させ、普遍的給付の政治的・制度的利点を検討する。
- 教育と社会的流動性への公的投資を拡大し、イノベーションと生産性のフロンティアへのアクセスを広げる。
- 若者の生涯学習やスキル向上を支える給付制度の導入など、世代間の公平性を強化する。
- 相続財産・土地・不動産への課税強化や所得に下限を設ける政策を検討する。
- 労働市場の柔軟化と社会的保護の両立（フレキシキュリティ型の政策）、研修と移行支援への投資拡充。
- 国際協調による資本課税の強化と租税回避対策を推進し、労働と資本の所得配分のバランスを改善する。

### 結論
- グローバル化され、かつ目まぐるしく変化する経済において安心感を形成するために、新しい社会契約が必要である。
- 各社会は異なる選択をするだろうが、過去の選択は現在の状況に合わなくなっており見直しが不可避である。
- 新しい社会契約は、安心感の回復と開かれた経済・社会への政治的支援を維持するために欠かせない。

*ネマト・シャフィクはロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの学長。*

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_Source: https://www.imf.org/-/media/files/publications/fandd/article/2018/december/jp/shafik.pdf_
