## タックスヘイブンという病巣

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### 規模と経済的影響
- タックスヘイブンを用いた合法および合法とは言い難い手段の結果、各国政府が失う法人税の額は、全体で年間5,000億～6,000億ドルとされる（Crivelli, de Mooij, and Keen 2015; Cobham and Janský 2018）。
- この失われた税収のうち、低所得国が約2,000億ドルを占める。
- 低所得国が被る打撃は、例年海外から受け取る開発援助（約1,500億ドル）を上回る。
- フォーチュン500企業だけで、2017年には2兆6,000億ドルの海外資産を保有していたとみられる（ただし2018年のアメリカの税制改正で一部が本国に送還された）。
- 個人のタックスヘイブン隠匿資産の推計は幅がある：ガブリエル・ザックマンの推計で8兆7,000億ドル、ジェームズ・S・ヘンリーの包括的試算で36兆ドル。両者とも個人所得税の逸失分を世界で年間およそ2,000億ドルと見積もる。
- アメリカの多国籍企業は、1990年代の企業利益の5～10%がタックスヘイブンへ移転されていたのが、現在は25～30%に上昇している（Cobham and Janský 2017）。
- 平均税率は1985年の49%から現在の24%へ低下したことが、底辺への競争の一因となっている。

### 定義とメカニズム
- 著者の定義は「逃避」と「よそ」に集約される：気に入らないルールから逃避するために資金を国境越えで移すこと。
- タックスヘイブンは税だけでなく、金融規制、情報開示、刑事責任などからの逃避手段を提供する。
- 主な法人ユーザーは大規模金融機関や多国籍企業であり、その結果として中小企業が競争上不利となり、独占が進む。
- 多国籍企業は「独立企業原則」を利用し、移転価格操作で利益を低税率地域へ移す。実際の移転価格はしばしば算出困難で、「会計士の言い値」になり得る。

### 制度的代替と改革の動き
- 「定式配賦法による合算課税」は多国籍企業を単一事業体と見なし、売上高、被用者数、有形資産などで利益を割り当てる方式。理論的にはタックスヘイブンの意義を薄めるが、数式選択は政治的になる。
- 国別報告書や多国籍企業の国別財務情報公表の動きが進んでおり、段階的な取り組みで定式配賦法への足掛かりが得られる可能性がある。

### 国際協調の取り組みと成果（OECDのCRSとBEPS）
- 共通報告基準（CRS）：国境を越えた金融口座情報の自動交換制度。
  - OECDの2019年7月推計では、90か国が4,700万口座、総額4.9兆ユーロの情報を共有。
  - CRSによりタックスヘイブンの銀行預金は20～25%減少したと推計される。
  - 自発的情報開示によりOECDと主要新興国を含むG20諸国が追加で得た税収は950億ユーロにのぼったという試算が示された。
  - ただしCRSには抜け穴が多く、アメリカが非居住者からの情報共有に消極的である点が大きな問題となっている。
- BEPSプロジェクト（税源浸食と利益移転）：独立企業原則の枠組みを維持しつつ課税を経済実態に適合させる試み。透明性は向上したが、OECDは最終的にBEPSを部分的に失敗とみなしている、特にデジタルエコノミーに関して。

### 最近の転換点とOECDの二本柱案
- 2019年1月以降、国際的税制の「根本的見直し」への動きが加速。
- 3月にクリスティーヌ・ラガルドが独立企業原則を「時代遅れ」と発言。
- 5月にOECDは「二本柱（two-pillar）」に基づく改革のロードマップを公表。
  - 第1の柱：税はどこで、何を基準に支払われるべきかを決定し、利益のうちどれだけの割合が課税されるべきかを定める。
  - 第2の柱：多国籍企業に最低限の税金を支払わせること。
- この改革は百年に一度の重大な変革期と評され、定式配賦法に近づく方向性が示される。

### 政治的・社会的影響と「金融の呪い」
- タックスヘイブンはエリートによる不法行為の隠匿場所を提供し、大多数の市民に負担を転嫁するため、数値化しにくい政治的悪影響をもたらす。
- 著者らは「金融の呪い（The Finance Curse）」の概念を提示。金融業の過度な成長は「最適点」を越すと経済成長を阻害する。
  - 結果として優秀な人材が支配的業界に流出、産業間格差拡大、競争力喪失、バブルと崩壊の繰り返し、レントシーキングの強化、起業家精神の低下が生じる。
- オフショア資本は貧しい国から豊かな国へ流れる傾向があり、労働力の移動も伴う。

### 実効的な対処の要点と提言
- 国際対応の実効性を高めるためには、会計士や弁護士など民間事業者への強力な制裁を含める必要がある（スイス事例からの教訓）。
- タックス・ジャスティス・ネットワークが要望する重要事項（今では国際的支持を集めつつあるもの）：
  - 国際的な自動金融口座情報交換（CRS）
  - 金融資産の受益所有権の公的登録制度
  - 国別報告書（country-by-country reporting）
  - 定式配賦法に基づく合算課税
- 多くの国にとって、オフショア金融センターを維持するのは「勝ち目のない戦い」であり、底辺への競争から抜け、タックスヘイブン活動を禁止しつつ国民の幸福を向上させる措置が実行可能かつ有効な道である。

*出典: ニコラス・シャクソン「タックスヘイブンという病巣」ファイナンス＆ディベロップメント 2019年9月（PDF本文より）*

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_Source: https://www.imf.org/-/media/files/publications/fandd/article/2019/september/jp/shaxson.pdf_
