## 認知症の嵐

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### 疾病負荷の現状と予測
- 認知症は全世界の55歳以上の人にとって6番目に大きな障害負荷の要因となっている。
- 2019年には、認知症に起因する障害調整生存年数が3,310万年に上った。
- 過去10年と同じペースで負荷が増大し続ける場合の予測：
  - 2030年: 5,510万年
  - 2040年: 8,110万年
  - 2050年: 1億1,580万年
- 最終的には、世界全体で認知症の負荷は今後30年の間に3倍以上に増大し、当該年齢層における5番目に大きな障害の要因となる（Bloom and others 2021）。
- 認知症の疾病負荷の中心は先進国から低・中所得国へ移行中：
  - 低位中所得国は、2019年から2050年にかけての認知症関連の障害調整生存年数の増加のうち、30%近くを占める。
  - 高位中所得国が占める割合も拡大（2019-2050年に12%増加）。
  - 先進国の割合は30%減少する。
  - 2050年までに、富裕国よりも貧困国の方が世界全体の認知症の疾病負荷に対する寄与が大きくなると予測されている（Bloom and others 2021）。

### 認知症の経済的負担（総論）
- 多数の研究は、今後数十年間に認知症の社会的・経済的負担が大幅に増大すると予測している。
- 2020年から2050年にかけて負担が倍以上になるとの見方が多く、ひとつの研究は9倍になると予測している。
- 1人当たりで見た経済的・社会的負担の予測は、算入するコストや推定方法、評価の文脈によって異なる。
- 研究が算入するコスト例：
  - 直接的医療コスト（外来・入院診療、長期介護等）
  - 非医療コスト（通院のための交通費等）
  - インフォーマルな介護に関連するコスト（機会費用等）
- いずれの研究も、市場外の生産活動への影響や個人の予防への取り組みについては十分に考慮しておらず、実際の負担は研究予測より大きくなる可能性が高い。

### 産業・経済成長への影響
- 認知症の影響により労働力が減少し生産性が低下する。
  - 人々がインフォーマルな介護者としての役割を担うことで労働供給が減少する。
  - 認知症のケアに資源が費やされることで、その他の分野への投資に利用可能な資本供給が減少する。
- 負担の低・中所得国への移行が進むことで、世界の経済的公平性に影響を与える。

### 資金不足と研究開発（R&D）の状況
- 認知症関連の投資は深刻に不足している。
  - 「ClinicalTrials.gov」に登録された介入臨床試験の数は、がんの方が認知症よりも50倍多い。
  - 認知症の方が約8倍多く障害の要因となっているにもかかわらず。
- 臨床試験の成功率が低い：
  - 1998年から2017年に完了したアルツハイマー病に関する臨床試験150件の分析では、146件が失敗、FDA承認は4件にとどまる（PhRMA 2018）。
  - 成功率は2.7%。
  - 比較：医薬品開発プログラム全体の成功率は13.8%で安定（Wong, Siah, and Lo 2019）。
- 研究開発を阻む要因：
  - 認知症の疾病過程が十分に理解されていないこと。
  - 動物モデルで効果が出てもヒトへの応用が難しいことが多い。
  - 研究開発の世界的協調不足とデータ共有の限定性。
  - 臨床試験で被験者確保が難しく、コストが法外に高くなることが多い。

### 新型コロナウイルスのパンデミックからの教訓
- パンデミックは「放置とパニック」のサイクルを示し、計画立案を強化する必要性を明らかにした。
- 新型コロナウイルスは「確率の低さと注目度の高さ」が特徴だが、迫り来る認知症の嵐は「確率が高い一方で注目度は低い」。
- 十分な資源が投じられれば、国際社会は複雑な研究課題にも迅速かつ効果的に取り組めることが示された。

### 認知症ケアへの実務的提言
- 医療システムは認知症患者へのケア提供のあり方を見直す必要がある。
- 特に高・中所得国では、患者や家族のための学際的なチームベースのケアに対する支援を優先すべきである。
- 実行例：
  - 疾病管理プログラム（慢性疾患向けのケア提供・調整の標準的アプローチ）
  - 革新的な資金メカニズム（価値ベースや成果ベースの契約等）によるケア拡充
- 介護に対する診療報酬モデルの見直しが必要：
  - 出来高払い方式がチームベースのケア導入を妨げている可能性がある。

### 研究開発と資金動員の提言（先進国の役割）
- 先進国政府が認知症への支出拡大を率先して行うべき理由：
  - 先進国は短期的に最も大きな経済的・社会的コストを負担しているため、投資拡大は自国経済の浮揚につながる。
- 先進国が投資すべき3分野：
  - （特に基礎研究に対する）直接的資金
  - 民間の研究開発投資に関する優遇措置の強化
  - 研究開発から得た成果への患者のアクセス支援（とりわけ低・中所得国における患者の費用負担吸収を含む）
- 医療インフラ整備も支援対象に含めるべき。
- グローバルな研究開発エコシステム構築のための具体策：
  - 臨床試験インフラと生体標本リポジトリ（バイオバンク）の整備を可能にする投資
  - 同時並行で行われる多くの医薬品開発プロジェクトへの投資促進（プロジェクト間の多様化でリスク軽減）
  - 必要な資本は、主要投資に対する政府保証を伴うメガファンド設立によって調達可能
    - メガファンドへの投資は、債券発行による資金調達と同様に機能し、投資家は当初投資額の回収に加えて、医薬品開発の成功に伴う収益から利息を受け取ることができる（Fagnan and others 2013）。

### 公平性と国際協力の重要性
- インフォーマルな介護は認知症との共生に関する実態の大きな部分を占める。
  - その役割を担うのは家族の一員であることが多く、負担はきつく困難。
  - 多くの国で女性の介護負担が不釣り合いに大きく、労働力における男女平等に向けた前進が妨げられている。
- 低・中所得国では公平性が特に重要：
  - 認知症のリスク要因の多くが大気汚染や教育、栄養価の高い食品へのアクセスの欠如といったシステミックに不利な境遇と関係している。
  - 経済的負担はすでに最も厳しい経済状態に置かれている人口に集中し、貧困のサイクルを悪化させる。
- 富裕国による提携や調整、投資は、貧困国が今後数年間に生産能力を最大限発揮する一助となる。

### 次になすべきこと（総括）
- 認知症は徐々に圧倒的な社会的負担になりつつあり、健康面と社会面で莫大な負担をもたらすだけでなく、特に貧困国にとって経済的悪夢となる可能性がある。
- 必要な行動：
  - ケア、予防、研究開発への大規模な投資。
  - 先進国が民間投資にインセンティブを与え、配当へのアクセスにおいて貧困国を優先しつつ主導すること。
- これは人道的見地のみならず、経済的にも合理的である。

*出所：counts*

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_Source: https://www.imf.org/-/media/files/publications/fandd/article/2021/december/jp/counts.pdf_
