## 世界に広がるサイバー攻撃の脅威

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### 主要な事実と事例
- 2016年2月、ハッカーがバングラデシュ中央銀行を標的とし、SWIFTの脆弱性を突いて10億ドルを盗み取ろうとした。不正取引の大半は阻止されたが、1億100万ドルが紛失した。  
- 2013年から2018年にかけて犯罪集団カーバナックは10億ドル以上を盗み取った。  
- 北朝鮮は、過去5年間に少なくとも38か国から約20億ドルを盗んでいる。  
- 国際決済銀行によれば、金融部門が経験している新型コロナウイルス関連のサイバー攻撃の割合は、医療部門に次いで2番目に大きい。  
- 2020年10月、ウガンダ最大のモバイルマネーネットワークであるMTNとエアテルがハッキングされ、4日間にわたるサービス取引の大混乱が生じた。  
- 2020年2月、欧州中央銀行総裁クリスティーヌ・ラガルドはサイバー攻撃が深刻な金融危機の引き金になり得ると警告。2020年4月、金融安定理事会（FSB）は「重大なサイバーインシデントは重要金融インフラを含む金融システムに大混乱を招くおそれがあり、金融安定性により幅広い影響が出かねない」と注意喚起。

### リスクの性質と進行中の動向
- デジタルトランスフォーメーションの加速（新型コロナウイルスのパンデミックが促進）により、金融システムの脆弱性が増している。  
- オンライン金融サービス需要の増加、在宅勤務の定着、中央銀行によるデジタル通貨や決済システムの検討が進む中で、単発のインシデントでも信頼毀損やイノベーションの頓挫を招きやすい。  
- 悪意ある攻撃者は金銭目的のみならず、混乱や破壊を目的とする事例も増加。データやアルゴリズム、取引の健全性を破壊する攻撃は、技術的対抗手段が乏しく、より広範な信頼の損失を招く懸念がある。  
- 高所得国での被害が報道されやすい一方、低所得国・下位中所得国の脆弱なターゲットへの攻撃増加は十分に注視されていない。これらの国々では金融包摂の進展によりモバイル決済等が普及しており、攻撃の標的となりやすい。

### ガバナンス上の課題（責任の空白）
- サイバーセキュリティ保護の責任の所在が不明確であり、国家安全保障、外交、金融監督、業界の間で断絶がある。  
- 多様なステークホルダーが縦割りで動き、権限や任務の違いにより協調が困難。金融当局はレジリエンス、外交は行動規範、国家安全保障当局は抑止、業界は各企業固有のリスクに注力している。  
- 地政学的情勢や強い不信が国際協調を妨げ、サイバーセキュリティに関する協力は断片化され、信頼し合う最小限の関係者間に限定されがちである。  
- 国際的かつ複数ステークホルダーにまたがる協力は「なくても支障はないがあると助かる」ものではなく「なくてはならない」もの。

### 国際的戦略（カーネギー報告書の要点）
- 2020年11月、カーネギー国際平和財団と世界経済フォーラムが「International Strategy to Better Protect the Global Financial System against Cyber Threats」を提示。国際協調と断片化解消のための具体的アクションを推奨。  
- 戦略の4つの基本的考え方：  
  - 役割と責任の明確化が必要。  
  - 国際協調は必要火急である。  
  - 断片化を解消すれば取り組むキャパシティを確保できる。  
  - 国際金融システムの保護は他部門の手本になりうる。  
- 推奨される具体的措置（抜粋）：  
  - FSBが金融機関におけるサイバーリスク管理を監督するための基本的枠組みを作ること。  
  - 脅威に関する情報共有の強化と、IsraelのFinCERTの例に倣った金融CERTの設置。  
  - データやアルゴリズムを狙った攻撃への強靭性向上。安全な暗号化を用いたデータ保管により、関係者が迅速に顧客口座データのバックアップを取れることを可能にする。  
  - サイバー攻撃を模擬した訓練を定期的に実施して脆弱点を特定し、行動計画を策定すること。  
  - 各国政府が国際法をサイバー空間にどう適用するかを明確にし、金融システムの健全性を保護する規範を強化すること。  
  - サイバーレジリエンスや国際規範の強化は、制裁や逮捕や資産差し押さえを含む法執行措置や業界との多国間対応を促進する手段となる。  
  - 各国政府は脅威の評価や対応の連携を支援する組織を設立し、情報を同盟国や考えを同じくする国々と共有すべきである。

### 能力構築と実務的支援
- サイバーセキュリティ人材の育成は喫緊の課題。コロナ禍による失業率上昇は人材訓練・雇用の好機となる。金融サービス企業は高校生向けプログラム、見習い制度、大学生向けプログラム等の人材パイプライン構築に投資すべき。  
- 必要なところへの支援提供に注力することが重要。IMFには、2016年のバングラデシュ事件以降、加盟国からサイバーセキュリティに関する支援要請が多数寄せられている。  
- G20諸国の政府や中央銀行は、IMFのような国際機関を取り組みの調整役に指定して国際的な仕組みを形成し、金融部門のサイバーセキュリティ能力を構築できる可能性がある。  
- OECDや国際的な金融機関は、サイバーセキュリティ能力の構築を開発支援の構成要素とし、支援を必要とする国々への支援を大幅に増やすべきである。  
- 金融包摂の進展を維持するため、金融包摂とサイバーセキュリティの結びつきを強化する必要がある。アフリカでは特に緊急の課題であり、アフリカにおけるサイバーセキュリティ重視の専門家ネットワークを形成すべきである。

### 政策優先事項（要点）
- 役割と責任を明確化し、国内外での協調体制を構築すること。  
- 国際的な情報共有メカニズムと金融CERTの設立を促進すること。  
- データ保全（暗号化を用いた安全なバックアップ等）と定期的な模擬訓練を実施すること。  
- 国際法のサイバー空間適用を明確化し、違法行為に対する集団的対応（制裁、逮捕、資産差し押さえ等）を可能にすること。  
- 人材育成と開発支援への投資を増やし、特に低所得国・下位中所得国の能力構築を強化すること。  
- 国際機関（IMF等）を調整役とし、G20やOECDと連携して支援体制を構築すること。

*出典: ティム・マウラー、アーサー・ネルソン。「世界に広がるサイバー攻撃の脅威」。ファイナンス & ディベロップメント 2021年3月。*

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