## 変わりゆく地政学的基盤

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### 戦争の影響と伝播
- ロシアによるウクライナ侵攻は国際関係に新たな時代をもたらし、世界経済秩序に重大な影響を与えている。
- 戦争は震源（ロシアとウクライナ）を中心に波及的影響を与えている。一次産品価格の急騰、貿易ルートの寸断、難民危機、各国の財政悪化などが波及効果として生じている。
- 欧州での難民流入は、侵攻開始から3か月も経たずにおよそ600万人に達している。
- 供給網の混乱はコーカサス諸国、中央アジア、東欧、バルト三国などロシア・ウクライナに隣接する貿易相手国に大きな影響を与え、さらに広範囲に波及している。

### 主要な経済影響と数字
- IMFの予測によると、2022年の経済成長率はウクライナがマイナス35％、ロシアがマイナス8.5％である。
- ロシアが蓄えた外貨準備はロシアGDPの37％に相当するが、その大半が凍結された。
- 戦争と経済制裁は世界的に経済活動を減速させ、物価上昇圧力（インフレの加速）をもたらしている。
- 先進国が予想よりも速いペースで金融政策の引き締めに動いたことが、金融環境のタイト化の間接的要因になっている。

### 米ドルの役割と「新・トリフィンのジレンマ」
- 米ドルの優位性は絶対的かつ有機的であるが、最終的に脆弱であるという指摘がある。
- 米ドルが絶対的である理由は、国際決済手段、ユニット・オブ・アカウント、価値保存手段として他に対抗し得る国際通貨が存在しなかったためである。
- ドルの優位性は1971年のドルと金の兌換停止後も、ネットワーク効果、絶対的な流動性、米国財政の安全性により維持・上昇してきた。
- 米国の世界経済に占める割合は新興市場国の発展に伴い低下し、「新・トリフィンのジレンマ」が生じる。具体的には、世界経済成長に占める米国の割合が縮小すると、米国が永久に世界唯一の安全資産供給国であり続けることはできなくなる。

### 外貨準備の凍結と制裁の意味
- ロシア中央銀行の外貨準備の凍結は、2014年以降に構築された「要塞ロシア」の中心を狙うものであった。
- 外貨準備が凍結されたため、ロシアは戦費調達のために継続的なエネルギー輸出に大きく依存しており、ここが重大な弱点になっている。
- 中央銀行への経済制裁は、ドル建て準備の有用性に疑問を投げかける。ドル建て資産の使途に制約が課され得るという予想は、ドル建て資産離れを引き起こす「地政学的なトリフィンのジレンマ」をもたらす可能性がある。

### IMFの課題と政策提言
- 地政学的二極化が進む環境下で、世界経済の統合推進を目的とするIMFが機能することはますます困難になる。
- 分断が進むと、安全資産へのアクセスが一層限定的になり、国際金融セーフティネットの包括性が低下する。こうした世界ではIMFの必要性は高まる一方である。
- IMFは以下の役割を果たす必要があるとされる：
  - 財政支援と専門知識を必要に応じて提供すること。
  - すべての加盟国を支え、責任を負う使命を遂行する道を模索すること。
  - 地政学的基盤の乖離が始まる時に、それをつなぎとめる橋をこれまで以上に築いていくこと。
- 組織としての選択肢として、歴史的困難に直面するなかで野心を縮小して一部のブロックに注力する道もあるが、それでは現在の歴史的困難に立ち向かうことはできないとの立場が示されている。

*ピエール・オリヴィエ・グランシャ（IMF経済顧問兼調査局長）*

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