## 輸出制限の課題

## Source details

**Canonical URL:** [輸出制限の課題](https://www.imf.org/-/media/files/publications/fandd/article/2023/june/japanese/bown.pdf)

## Other formats

- [Markdown version](/-/media/files/publications/fandd/article/2023/june/japanese/bown.pdf.md)
- [Structured JSON version](/-/media/files/publications/fandd/article/2023/june/japanese/bown.pdf.json)

---

### 概要と主要懸念
- WTOは、目まぐるしく変化する地政学的情勢のもとで機関の役割を定めることに苦闘している。多国間体制は、貿易戦争と実際の戦争の影響のなかを乗り切ろうとしている。
- 禁止、管理、制裁といった輸出制限の再燃は、規則に基づく貿易体制にとって重大な懸念事項であり、各国が他のWTOルールに抵触しつつ自国保護のために追加措置を講じる悪循環のリスクがある。
- WTOの推奨事項（筆者の立場）：
  - 加盟国に対して輸出制限の利用を限定するよう促すこと。
  - 制限を実施しなければならない場合には、制限対象を定め暫定的な措置に留めるよう奨励すること。
  - 特に貿易体制の最脆弱国を保護するための新たな取り組みに着手すること。

### 豊富な事例（過去の経験）
- 2007年から2011年に一次産品価格が急騰した際、各国は広範な農産物に輸出制限を課し、世界の物価上昇と食料不安を招いた。その後の政策的成果としてG20の農業大臣による農業市場情報システム（AMIS）の立ち上げがある。
- 中国は国内の一時的な物価圧力等に対応して原材料や重要材料に輸出制限をかけ、2001年のWTO加盟時の誓約（輸出を制限しない）に関して公式なWTO紛争で2度敗訴し、2016年に3度目の紛争に直面していた。
- 2021年4月、インドは新型コロナワクチンの輸出を禁止。これにより、COVAX向けに誓約された1億回分のワクチンが事実上供給されず、国際的な拠出金の活用が阻害された。
- 2022年には、ロシアが天然ガス輸出を停止してエネルギー供給を政治・経済的圧力の手段として行使した。これを受けて諸国は「懸念国」からの調達縮小策を採った。
- 2022年の「インフレ抑制法」による差別的な税額控除インセンティブ（米国）は、電気自動車バッテリーの材料調達をロシアと中国から移行させることを狙い、既存の製造拠点の偏在を考えれば大きな影響を伴う。
- 先進国は国家安全保障を理由にハイテク製品に輸出制限を課している。事後的に課される場合（戦後の措置）と事前的に課される場合（例：日本とオランダが米国と合意して先進的ノード半導体製造設備の輸出を制限）とがある。

### WTOのルールとその限界
- GATT第11条は「食糧その他輸出締約国にとって不可欠の産品の危機的な不足を防止し、又は緩和するために一時的に課す輸出の禁止又は制限」に例外を認めるが、「不可欠の産品」は定義されていない。
- 第21条は国家安全保障上の例外を定め、安全保障の基幹的な利益を保護するために政策発動を正当化する余地を認める。
- 冷戦期に発展した多国間貿易体制は、輸出制限・軍事的敵国・関連制裁について本格的な対処を強いられる機会が乏しかったが、中国（2001年）とロシア（2012年）のWTO加盟後にこうした課題は顕在化した。
- 国家安全保障に基づく措置に対して公式なWTO紛争解決を通じる場合、法的裁定は多国間体制に負担をかけるだけで成果が乏しいことが多い。
- 米国の提案（最近の声明）として、被害国は訴訟ではなく「非違反」申立てを追求し、仲裁を迅速に行って貿易の「バランスを取り戻す」譲許を行う仕組みが検討されている。この仕組みは互恵主義に基づく報復を想定し、乱用抑止の追加インセンティブとなりうる。

### 新たな脆弱性と加盟国（特に発展途上国）への影響
- ロシアのウクライナ侵攻を背景とする制裁と輸出制限は、「非同盟国」である発展途上国に深刻な影響を与えている。能力に制約のある国は、意図せず違反を犯して二次的制裁を受けるリスクがある。
- 具体的事例：
  - 食料・肥料：ロシア産小麦などを世界市場から締め出すと世界の食料安全保障に悪影響。制裁国は食料や人道支援物資について制裁に例外を設ける努力をしている。
  - 原油・石油製品：G7は上限価格を下回る取引に限りロシア産原油・石油製品の購入を促す計画を策定したが、遵守は情報管理や価格水準変更の可能性などで容易でない。上限価格が他の調達源の価格を下回る状況があり、経済発展への意義とコストが混在する。
  - デュアルユース物品（例：半導体）：小型で民生・軍事両用の可能性があり、米国は輸出制限対象の産品を第三者国に輸送する際に当該産品の再輸出を制限する法を適用する場合がある。第三者国の企業は経済的インセンティブで取引を行いたいが、自国政府が制裁を課す同盟国でない場合、関連影響を完全に把握していない可能性がある。
- 発展途上国は、自国の権利と選択に伴うトレードオフを理解するための支援を必要とする。例えば、国内審査手続きを規定して企業が規制対象の産品を再輸出しないようにすることなどが考えられるが、法的助言が利用できない国は過剰遵守して取引を控えることで追加コストを負う恐れがある。

### WTOが発展途上国を支援できる具体策
- 市場監視と透明性の強化：
  - AMISのような取り組みを拡大・促進し、情報不足と供給不足の恐れから生じる新たな輸出制限の実施を減らすこと。
- 貿易円滑化と制裁遵守支援：
  - WTOの貿易円滑化協定を通じて手続き上の障壁を軽減し、国境管理官と協力して加盟国の制裁遵守を支援すれば、制裁遵守を通じて二次的制裁の罰則を回避しつつ残りの貿易を継続できる。
- 法的支援の提供（ACWLの経験活用）：
  - WTO法アドバイザリーセンター（ACWL）のモデルは、豊富な補助金に基づく法的支援を貧困国に提供し、過去20年以上で数十件の公式なWTO紛争で貧困国の代理を務めてきた実績がある。
  - ACWLは利益相反に関する統治ルールを確立しており、政治から距離を置いた健全な法的助言を提供する仕組みがある。これを制裁と輸出制限の遵守支援に応用することが考えられる。
- 留意点：
  - 補助金に支えられた法的支援を制裁遵守の分野で行うことは政治的にデリケートであるが、能力と資源の乏しい国々にとって支援が欠ければ深刻な経済的影響が生じる可能性がある。
  - グローバル化の恩恵を維持・拡大するため、無実の第三者が無実のままでいられるよう援助する役割がWTOには残されている。

*出典: チャド・P・ボウン「輸出制限の課題」*

---


_Source: https://www.imf.org/-/media/files/publications/fandd/article/2023/june/japanese/bown.pdf_
