## 産業政策への回帰

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### 地政学と貿易政策の変化（背景）
- 地政学が国際貿易の景色を一変させている。
- 1990年代から2000年代にかけて、発展途上国や過渡期の経済国は市場を開放し、グローバル化を受け入れた。
- 世界貿易機関（WTO）が設立され、ルールに基づき差別的でない貿易システムが確立した。
- 現在は、世界経済の分断と国際貿易ルールの軽視が懸案事項である。
- 介入の形態として、産業政策や補助金、国家安全保障や環境への懸念に基づく輸入規制、地政学的ライバルに対する制裁や輸出規制が増えている。
- 近年の主要な政策事例：
  - 中国：習近平体制下で経済の国家管理を再開、「中国製造2025」、「双循環」戦略。
  - アメリカ：鉄鋼・アルミニウムの保護、CHIPS法、インフレ抑制法（半導体の国内回帰の補助金、電気自動車の自国調達規制）。
  - EU：2020年に「開かれた戦略的自律性」を強化する産業戦略。

### 歴史の読み違いと輸入代替論の批判
- 産業保護が富裕国の成功を説明するという単純化は誤りであると論じられる。
- アメリカは高い関税下でも移民・資本・科学技術に開かれた経済として成長し、19世紀後半に英国を1人当たり国民所得で追い抜いたが、これはサービス業の労働生産性向上が主因（Broadberry、1998）。
- 西ヨーロッパの成長は農業から工業・サービスへのリソースシフトと関連。ドイツなどの一部では保護政策が移行を遅らせた可能性がある。
- 全面的な輸入代替は過去に支持されなくなったが、産業政策に関する議論は継続中。

### 東アジアの経験と誤解（韓国の事例）
- 1960年、韓国は過大評価された通貨と、GDPのたった1％しかない輸出に悩んでいた。輸入能力はほぼ完全にアメリカの支援に依存していた。
- 1960年代初頭から半ばにかけて平価切り下げを行った後、韓国の輸出は競争力を得て爆発的に増加し、1970年初頭にはGDPの20％に達した。
- 主要な政策は、対象を特定産業に限定せず、すべての輸出企業に低利の信用を供与し、現実的な為替レートを設定することなどであった（Irwin、2021）。
- 韓国の本格的な産業政策（重化学工業振興策）は1973年から1979年にかけて実施され、その後コストと非効率性を理由に打ち切られた。急成長は産業政策以前に始まっていた。

### 補助金とその効率性に関するエビデンス
- 一般論：産業政策は生産性向上と構造変革に寄与するとする意見と、汚職や非効率を招くとする意見が対立。
- 定量的モデルでは「最適に設計された産業政策」でも得られる利益は小さく、改革をもたらす可能性は低い（Bartelmeほか、2021）。
- 中国の造船業（2006年に「戦略産業」と位置づけ、大量の低利融資・投資補助を実施）のケース：
  - エビデンスは、こうした政策が大きな利益を生んでおらず、過剰生産能力を生み、市場をゆがめたことを示す（Panel、Kalouptsidi、Bin Zahur、2019）。
  - 補助金は効率性の低い生産者の参入・拡大を招き、過剰生産能力と産業の断片化を助長した。
  - 援助の大半は国有企業に流れ、資金融資は政治的動機が強かった。
  - 造船業は経済全体に大きな波及効果をもたらさず、産業全体の学習の形跡も乏しい。

### 貿易規制のコストとグローバル関与の利点
- 貿易規制への転換は、発展途上国が国際市場参加から得た利益の一部を犠牲にする恐れがある。
- 多くの国が市場開放と世界経済への積極的関与を通じて経済発展を遂げてきた。
  - 中国の豊かさは産業政策ではなく、農業生産性の向上、製造業への外国投資の受け入れ、民間部門の開放に起因すると指摘。
  - インドは1991年の改革で「ライセンス・ラージ（許認可王国）」を解除し経済を開放、成長を続けている（更なる改革は必要）。
  - バングラデシュは外国投資の開放により恩恵を受け、いまやインドよりも1人当たりの国民所得は高い。
  - エチオピアやベトナムも経済的関与から多くの成果を得ている。
- 1990年前後からは、発展途上国が急速に成長し、先進国に収束し始めたという研究成果（Patel、Sandefur、Subramanian、2021）。

### 発展途上国への示唆と政策勧告
- 米中EUの補助金・貿易介入の動きに追随して国内産業を育成することは危険とされる。
  - 補助金は高コストで恩恵が得られない可能性が高い。
  - 貿易規制は保護貿易主義の内向きな危険性を孕み、輸出収入を減らし、必要な輸入品の購入も縮小させる。
- 産業補助金は富裕国の「ぜいたく品」のようなものであり、財政がひっ迫している発展途上国は同様の手段を採る余裕がない。
- リカルド・ハウスマンの指摘（原文）：
  - 「抱えている問題に関して他国の解決策を真似したり、あまり重要でない流行の課題に注力したりするのは、惨事とはいわないまでも非効率なだけだ」
- 発展途上国は乏しい政府支出を効率的に運用するため、産業への直接的な補助よりも医療や教育の改善、貧しい国民の救済を優先すべきである。
- グローバル化放棄は賢明でない：世界経済への関与を通じて技術・投資の恩恵を受ける余地は依然大きい。閉鎖的政策への回帰は多くを失わせる恐れがある。

*出典: ダグラス・アーウィン「産業政策への回帰」*

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