## 金融リスクの上昇と政策的含意

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### 最近のリスク上昇の要因
- 2011年4月の国際金融安定性報告書（GFSR）公表時以降、金融リスクは上昇している。主たる要因は以下の三点である。  
  - 第一に、基本シナリオでは二極化した世界景気回復が継続する想定だが、下振れリスクが増加している。  
  - 第二に、ユーロ圏周縁国における債務持続性と調整政策への支援状況に関する不安から市場圧力が高まり、飛び火（コンタミネーション）への懸念がある。米国や日本など一部先進国でも政治的リスクの高まりにより中期的な財政健全化の実現性に疑問が生じている。  
  - 第三に、長期にわたる低金利の結果、投資家が「利回りの追求」からよりリスクの高い資産へ向かう可能性がある。特に一部の新興市場国では金融面の不均衡拡大の恐れがある。  
- 以上のリスク上昇とともに、金融システムの頑健性強化に関する基本的課題は未解決のままであり、政策当局は残る脆弱性の解消努力を急ぐ必要がある。解決に許された時間的猶予はさほどない。

### 市場の見通しと資産市場動向（ミッドサイクルの減速）
- 基本シナリオは改訂世界経済見通し（WEO）が示すとおり二極化した景気回復だが、最近の経済データの下振れを受け投資家の見方が修正されている。  
- 米国では住宅市場の再びの軟化により成長見通しが下方改訂され、国債の実質利回りが低下した。  
- リスク資産の需要変化として、株式から債券への乗り換えが始まり、世界株価は4月末の高値を最後に下げに転じている。商品価格も下落し、先物市場での買い持ち残高が圧縮されるとともに価格変動が極めて激しくなっている。

### ユーロ圏周縁国とソブリン債リスクの悪化
- ユーロ圏周縁の小国の債務持続性と調整政策への支援状況に対する市場の疑念が再び高まっている。  
  - ギリシャのCDSスプレッドは高値を更新した。  
  - 欧州の中核国の銀行システムは周縁国へのエキスポージャーが依然高い。  
  - 市場で深刻な事態が発生した場合、直接的な対外エキスポージャーとリスク選好の低下からユーロ圏以外へショックが波及する可能性がある。  
- ソブリン債リスク見通しの悪化はギリシャ、アイルランド、ポルトガルだけでなく他のユーロ圏諸国にも広がっている。これは財政再建と構造改革をめぐる政治的合意獲得が困難との不安を反映している。  
- 米国では、対応がとられない場合には8月末に政府債務残高が法定上限に達すると予想されており、上限引上げ法案の可決見通しが市場の当座の関心事になっている。これらの一時的デフォルトリスクを反映し、米国はAAA格付であるにもかかわらずCDSスプレッドがより格付の低い国を上回る事態が起きている。4月にS&Pが米格付にネガティブ・アウトルックを付したことも疑念材料となっている。  
- 日本についても政府の財政赤字削減能力への疑問から格付が引き下げられている。

### 「利回りの追求」と新興市場への波及
- 先進国の長期にわたるゼロ金利・極めて緩和的な金融環境により「利回りの追求」が強まり、投資家は金融的レバレッジや金融工学的手法を採用する傾向が強まっている。  
  - 借入資本コストはオールインでみても低下し、一部でレバレッジの拡大を促している。  
  - レバレッジ・ローンの価格回復と利回り低下により、投資家は二桁の収益率を狙う動きに傾斜している。プライベート・エクイティ案件の対象企業のバランスシートのレバレッジは危機前の水準に近づくものもある。  
- 新興国への影響：  
  - 新興国市場、特に社債市場と対企業貸出市場への資金流入が高まっている。  
  - 新興国の対外社債発行額は2011年第１四半期に650億ドルと三年ぶりの高水準を記録し、年全体では過去最高水準になると予想されている。  
  - 新興国社債は米国高利回り債の代替投資物件とみなされ始めており、同じ格付でも利回りが高く幅広い投資家に魅力的である。  
  - 資金流入は変動が激しく、国内流動性の拡大を助長する場合がある。過大な資金流入が続くと企業価値評価の過大やレバレッジの急回復による脆弱性高まりのリスクがある。投資家のデュー・デリジェンスが甘くなっている点も指摘される。  
  - 不利な出来事でリスク選好が急速に低下すると資金が突如引き揚げられる危険性がある。  
- 不動産市場：急成長中のアジアの一部と他の新興地域で不動産価格上昇への懸念がある。中国ではインフレ抑制のための金融引き締めや政策金利引上げが経済減速を想定以上に強めた場合、不動産価格への影響が大きくなる恐れがある。

### 金融システムの頑健化に向けた課題と政策優先事項
- 緩和的な金融政策と豊富な流動性により脆弱性が目立たなくなっているが、基本的課題は未解決である。特にユーロ圏周縁国問題に対しユーロ圏全体としての解決策を明確化する必要がある。迅速な対応が欠けると市場の我慢が限界に達し市場混乱を招く恐れがある。  
- 優先すべき点（抜粋）：  
  - 先進国の危機の結果残された不良資産を整理し、足下で金融システムをより強靱なものにすること。  
  - 金融改革の各項目を出来るだけ早期に実現すること。  
- 欧州における具体的課題：  
  - 銀行は依然として資金調達上の問題を抱えている。銀行債の金利は上昇しており、一部の欧州周縁国の金融機関はECBの流動性支援に大きく依存している。銀行の償還債務への前倒し備えが必要な国がある。  
  - 銀行はバランスシート上のリスクを十分に縮小しておらず、不良資産を抱えたままのケースや不動産関連エキスポージャーが大きいケースが残る。  
  - 資本の増強を急ぐ必要がある。欧州銀行監督機構が予定するストレス・テストは脆弱銀行の特定に好機となる。資本不足が確認された銀行への早急な資本補填と存続不可能な銀行の整理を行う仕組みが整っていることが決定的に重要である。  
- 新興国当局への含意：  
  - 信用の大幅な拡大とインフレ率上昇、強い資本流入にさらされている国では景気過熱と金融不均衡拡大に注意が必要である。企業のレバレッジ上昇により、より弱い企業も資本市場からの資金調達が可能となり、外的ショックに対する脆弱性が高まっている。  
  - マクロプルーデンス政策や場合によっては資本規制の限定的利用が、資本流入とその影響に対処する上で補完的な役割を果たしうる。ただし、これらは適切なマクロ経済政策の代替とはならない。  
- 要約された政策優先事項（原文の要約箇条書きに準拠）：  
  - 景気の下振れリスクが表面化しており、世界経済回復の基盤は従来想定より弱い。既存の脆弱性に対処する時間はあまり残されていないかもしれない。  
  - 伝統的な財政金融政策を活用したショック対応の余地は狭まっている。  
  - 大規模ショックにも耐え得るよう金融システムを強化する必要がある。具体的には、先進国の不良資産の整理と金融システムの強靱化、金融改革項目の早期実現が優先される。  
  - 経済の回復を支えながら将来に向けた過大なリスク蓄積を防ぐため、インフレ圧力と金融不均衡にさらされる新興国ではマクロ政策の引締めとマクロプルーデンス政策の活用が必要である。

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