IMF に つ い て


マラウィにおける食糧危機、戦略的穀物備蓄とIMF
(ファクトシート)

この記述の最終更新日は2002年7月です。

2002年7月

天候不順がマラウィを含む多くの南アフリカ諸国での近年の不作や食糧不足の一因となっています。しかし、マラウィにおける食糧不足の原因はそれだけでなく、政府による早期警戒システムの失策や国内市場の歪み、食糧備蓄の誤った運用などが複雑に絡み合っています。このファクトシートではこれらの諸要素に加え、多くのメディアによって誤って報道されてきたIMFの役割について説明しています。2002年4月から6月にかけての収穫によりマラウィの食糧危機は一時的に緩和されはしたものの、今年の後半には深刻な食糧不足が予想されており、飢餓を予防するための緊急の対策が必要とされています。マラウィ当局はドナー諸国と連携して適切な打開策を慎重に策定しています。

食糧政策とIMFと世界銀行の支援プログラム

1998年と2000年におけるIMFと世界銀行の支援プログラムの下でのマラウィ政府の戦略はトウモロコシ市場に対する政府の介入をやめて貧しい人々に食糧補助を行なうというものでした。農業開発マーケティング公社 (ADMARC) を通じた市場介入は物価や他の市場指数を混乱させ市場の発展を妨げていました。政府がADMARCを繰り返し救済することにより仲介コストを負担してきたため、価格は高騰していました。さらに、これらの介入のほとんどは透明性を欠いており、そのため管理問題が発生していました。

1998年、マラウィ政府は、ADMARCを通じたトウモロコシの価格維持操作を中止しADMARCが厳密に商業ベースに基づいて活動するよう準備することに同意しました。政府は戦略的穀物備蓄の運営を含む災害救助活動をADMARCに代わって管轄させるため国家食糧備蓄局 (NFRA) の設立に同意し、これら2つの組織の業務責任を明確に線引きしました。

ところが、1999年、NFRAは設立されるや否や大規模な物価安定操作を行い、ADMARCが放棄した価格維持機能を引き継ぐことになってしまいました。NFRAは豊作を受けて価格維持のため市場に介入し、1999年末までに16万7千トンもの在庫を積上げました。この購入にかかった費用のほとんどが商業銀行貸付によって調達されました。(一方、1987年から1999年までの期間、マラウィは戦略的穀物備蓄を継続し、最大で年間約8万トンを維持していました。) このような動きをしていれば、NFRAがそれ以前のADMARCのように国家予算を圧迫する存在になってしまうことは十分にあり得ることでした。そのため、世界銀行とIMFの職員はマラウィ政府に対して、透明かつ規則にのっとった費用効率の良い食糧保全政策を策定するよう要請しました。中でもNFRAの新しい運営指針を制定するよう要求しました。

2000年、マラウィ政府は欧州委員会から資金を得て、新しい食糧安全政策の基盤を形成するための研究を委託しました。その研究の結果、トウモロコシの緩衝在庫が3万トンから6万トンあれば局地的な災害に対応するには十分であるという結論に達しました。この緩衝在庫量は(危機の可能性を6-9ヵ月前に予告する) 早期警戒システムの利用やトウモロコシの輸入計画、一般的にみた備蓄食糧それ自体の価格の約20%にあたるトウモロコシ緩衝備蓄の高い維持費に基づいています。この研究では大量の緩衝備蓄をするよりは食糧不足を防止するために必要なトウモロコシの輸入資金を調達するための外貨準備高の増強が提案されました。

その後、マラウィ政府はこの勧告、すなわち1999年末の大量の備蓄量から6万トンの水準にまで備蓄量を大幅に削減することを受け入れました。実施に際しては、NFRAが価格維持のための介入を行なう可能性を除去し災害救助活動のみに従事することを明確にするため、NFRAの信頼行動を変える必要がありました。これらの対策は世界銀行の理事会によって2000年12月に承認された「第3次財政再建と規制緩和プログラム(Third Fiscal Restructuring and Deregulation Program)」によっても支持されています。

世界銀行は農業や食糧安全政策の改革の主要なアドバイザーとしての役割を果たしました。しかし、農業が予算に与える影響が大きいこともあり、これらの改革のある部分が最近のIMFとの取り決めによって支援されていることも事実です。マラウィ政府は2000年12月にIMF宛に提出したレター・オブ・インテント(趣意書)において、トウモロコシの備蓄を削減することやNFRAの役割を災害救助に制限することには言及していますが、食糧保全政策に関連する融資条件については一切含まれていません。

食糧危機の発生

食糧不足の原因は複雑ですが収穫量の減少から始まります。2000-2001年と2001-2002年の農期における降雨量は不規則でしたが、干ばつと洪水とが相まって収穫量は大幅に減少しました。2000-2001年においては豊作の後で政府が備蓄穀物を国内市場に売却したため生産者価格が押し下げられました。これによって農家は肥料や種を購入するのに十分な収入が得られなくなったため、収穫量が減り、農業金融の債務不履行につながりました。その上、2002年の初めには打開策の一環として作物の早期収穫が行われ、これが2002年4月に始まる農期の収穫量の減少に拍車をかけました。

いくつかの地域で飢餓が発生しているとのNGO(非政府組織)からの報告を受けて、2002年2月、マラウィ政府は現地調査を行ないましたが、その結果、食糧不足の程度が通常の季節要因をはるかに超えていることが判明しました。政府は2002年2月後半に食糧非常事態宣言を出しました。周到に準備された食糧安全政策の2つの構成要素が、期待された程には有効に実施されていなかったということが露呈しました。

- 早期警戒システムが危機を予告しなかった。

このシステムは天候や収穫高を人工衛星と地上評価の双方により監視かつ予報するものですが、2001年のトウモロコシの不作を予告しています。しかしながら、この予告は、他種の穀物の収穫増によってトウモロコシの不作は補われて余りあるであろうとする欠陥のある農業統計に基づいたものでした。このシステムの欠陥は2002年の2月になって初めて明らかになりましたが、その時にはマラウィの食糧は底をついてしまっていました。

- NFRAは2001年初頭までに事実上全てのトウモロコシの備蓄を売却してしまい、2001年の不作も手伝って、備蓄を補充できなかった。

備蓄穀物を循環させること、つまりトウモロコシ備蓄を全て売却してもそれと併行して新鮮なトウモロコシを購入することが必要であることは一般に認められていたことです。ところが、NFRAは2001年の収穫に関する情報が手に入る前にトウモロコシ備蓄を売却してしまいました。マラウィ政府は2001年末になって15万トンのトウモロコシの輸入を開始しましたが、物流上の問題のためトウモロコシの到着は遅れました。

危機が認知されてからは、政府は社会的セフテイーネット・プログラムを拡大し、ドナー諸国は人道的努力を強化し、世界食糧計画は緊急措置を開始しました。この取組みの一環としてIMFの代表団も2月25日のマラウィ到着後直ちにマラウィ政府やドナー諸国との討議を危機への対応に絞り込んだのでした。

4月の収穫によって危機は回避されましたが、5月末、国連の食糧機関は今度の収穫が前年よりも悪化するだろうとの結論を出しました。国連は2002年8月から2003年3月の期間、48万5千トンのトウモロコシ不足を予想しました。国連は不足分のうち半分は貧しい人々への人道的援助として、そして残り半分は商業ベースで提供さるべきであると算定しています。ドナー諸国の確約分が人道的援助に必要とされる見積り量をほぼ網羅し、欧州委員会が戦略的穀物備蓄の補充を行っています。マラウィ政府は商業ベースの輸入の大半を引き受けて、そのトウモロコシを助成価格で供給する意向です。IMF職員は食糧救済に必要とされる政府支出は財政赤字を増やすことにより調達すべきであるという認識の下、予算および国際収支上の影響についてマラウィ当局との対話を進めています。

食糧保全政策の強化

トウモロコシ操作の透明性を改善し、物価の歪みを是正し、更に予算への負担を削減するための戦略はいくつかの分野においては成功しませんでした。

- 透明性の改善: NFRAに代わってADMARCは戦略的穀物備蓄の運営を続けていましたが、2000年8月から2001年1月の間、NFRA経営陣の許可なしに-おそらく許可のことも知らなかったようですが-6万8千トンの備蓄食糧を売却してしまいました。更に、トウモロコシの一部が市価より低い価格で政治家と交際のある人々の手に渡ったとの疑惑がニュース・メデイアで流されたりもしました。会計検査長官が監査を実施、汚職対策庁が調査を開始しました。そして、マラウィ政府はドナー諸国からの求めに応じ外部監査を承諾しました。

- 価格の歪み除去:2000年半ばから2001年1月までの間、ADMARCとNFRAが売却したトウモロコシのほとんどが国内市場に流れました。このような取引は2000年の豊作の後トウモロコシ価格を一段と押し下げましたが、その結果、生産者の生産意欲の減退を招き2002年初頭の食糧不足の一因となりました。

- 予算への負担削減:2000/01会計年度において予算は頓挫しましたが、これは一つには政府がNFRAの商業貸付の返済を行いNFRAを救済したためです。(予算には負債の利子支払資金のみが計上され、負債の完済資金は含まれていませんでした。) 加えて、同会計年度においては、ADMARCに対しGDPの1.5%に相当する予算上の支援が行われました。

食糧危機はまたマラウィの農業政策の弱点を示しています。まず、マラウィがトウモロコシに過剰に依存しているという問題があります。トウモロコシは干ばつに弱く土壌の栄養素を急速に痩せさせることから、収穫量を維持するためには肥料が必要となり毎年新しい交配種の種子を必要とします。他の食用作物への多様化は農業政策の1つの成果であるかのようでした。ところが、今日のデータはこの多様化が以前信じられていたよりもはるかに小さな規模でしかなかったことを示しています。その上、農業への無償資金投入を含む政府による食糧市場への介入では計画通りに農家の収入を増加させることにはなりませんでした。

欧州委員会と世界銀行のスタッフはトウモロコシの緩衝備蓄の規模などに関する2000年の政府委託研究による提案が健全なもので未だに有効であることを再確認しました。

現在、国際ドナー諸国は現時点での穀物不足への対処に追われながらも、マラウィ政府と共に食糧安全戦略の実施強化の作業を進めています。世界銀行は英国国際開発省と協力して、マラウィ政府による食糧安全事業改革の支援に率先して当たろうとしています。世界銀行は現在までのところ、マラウィの農業政策の検討を開始し新たなプロジェクトを立ち上げようとしています。欧州委員会はNFRAの運営規則の改善に向けてマラウィ政府と共同作業を始めます。IMFはこれらの取組みを引続き支援します。