先進国経済の成長促進に資する移民
IMF Blog, June 19, 2020
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- 先進国経済の成長促進に資する移民
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Bibliographic details
- Authors: Philipp Engler, Margaux MacDonald, Roberto Piazza, Galen Sher
- Published: June 19, 2020
概要
- 2020年4月「世界経済見通し」第4章に基づく最新研究を紹介。
- 研究は、移民が受入国の経済成長と生産性を一般に高めることを示している。
- パンデミックにより移民が突然止まり得る点、及びそれが長期的な受入意欲に与える影響を指摘。
- 移民受入国での移民減少や失業増加は、移民送出国(特に貧困国)で送金に依存する経済に打撃を与える可能性がある。
移民の趨勢
- 移民を出生国以外に居住する者と定義すると、その数は2019年に世界全体で「2億7,000万人」。
- 1990年以降、移民人口は「1億2,000万人」増加。
- 世界人口に占める移民の割合は過去60年にわたって「3%付近」で推移。
- 地域別比率:
- 先進国の全人口に占める移民の割合は「7%から12%」に増加。
- 新興市場国・発展途上国では移民の割合が「2%前後」にとどまる。
- 移民の流向:
- 多くは出身地域内で移動するが、南アジアから中東、また新興市場国・発展途上国から先進国への長距離移動も相当数存在。
- 難民移住は局地的で、新興市場国・発展途上国が難民の発生国であると同時に主な目的地になっている。
押し出し要因と引き付け要因
- 移住コストが高く、地理的・言語的障壁が移民流における重要な説明因子である。
- 所得格差が主要な動機:
- 豊かな国ほど若年層を含め多くの移民を引き付ける。
- 1人あたり所得が低い国ほど他国へ移住する人が多くなるが、極度に貧しい場合は例外。
- 研究では、移民送出国の1人あたり所得が「7,000ドル」を下回ると、所得が低い国ほど先進国への移民も少なくなると指摘(移住費用を賄えないため)。
- 戦争は新興市場国・発展途上国間の移住を主に説明し、難民流動における地理的近接性の重要性を裏付ける。
- 移民送出国の人口規模が移民流出を促す主要因。
経済への影響
- 先進国への移民全体(大半は経済的理由によるもの)と、新興市場国・発展途上国への難民移住の影響を区別して分析。
- 先進国での効果:
- 移民は短中期的にGDPと生産性を押し上げる。
- 流入移民数が総雇用者数に対する比率で「1ポイント」増えると、5年目までにGDPを「ほぼ1%」押し上げる。
- 国内労働者と移民労働者の技能の多様性が補完効果を生み出し生産性を高める。
- シミュレーションでは、生産性の伸びが小さくても国内労働者の平均所得に有益となる場合がある。
- 新興市場国・発展途上国での難民の効果:
- 生産性に関するプラスの影響は見られない。
- これは現地労働市場への参入時に直面する困難を反映している。
将来の移民圧力
- 新興市場国や発展途上国(特にサブサハラアフリカ)の人口は今後「30年」にわたって増加し、先進国への移民圧力が上昇する可能性が高い。
- 例示的指摘: 図からは「2020年から2050年」にかけてアフリカと中東から欧州への移民圧力が高まることが読み取れる(本文より)。
- 世界的には移民圧力は世界人口の「3%程度」とほぼ一定で推移する見込み。
- 所得上昇は新興市場国・発展途上国で移民圧力を低下させると見られるが、より貧しい国(例:サブサハラアフリカ)では当てはまらない可能性あり(所得上昇で移民が可能になる人が増えるため)。
- 気候変動の影響:
- 新興市場国・発展途上国における国内移民や域内移民を大幅に増加させる見込み。
- 先進国への移民に対する気候変動の影響は新興市場国・発展途上国に比べて明確ではないと示唆(所得低下で出身地域に留まる人が増える可能性)。
利益の拡大を図る(政策提言)
- 移民は受入国に大きな利益をもたらし、移民によりより良い暮らしの機会を提供する一方で、特定の国内労働者セグメントは少なくとも一時的に経済的損害を被る可能性があるため、分配の課題が生じ得る。
- 推奨される政策手段(主な例):
- 財政政策や労働市場政策を活用して、労働市場で困難に直面する国内労働者の所得と再訓練を支援する。
- 語学研修や職業資格認定の簡素化といった、移民の統合につながる積極的な労働市場政策・移民政策を推進し、移民が受入国にもたらす効果を高める。
- 難民移住に伴う課題への対処では国際的な政策協調が必要。例として、難民の受け入れや統合にかかる費用を新興市場国・発展途上国と分担すること。
出典:IMF「世界経済見通し」第4章「The Macroeconomic Effects of Global Migration」に基づく記事(執筆陣:フィリップ・エングラー、本條桂子、マルゴー・マクドナルド、ロベルト・ピアッツァ(責任者)、ゲーレン・シャー、指導:フロレンス・ジョーモット)。