危険な水準に達した世界の債務負担、決定的な協力が不可欠
IMF Blog, April 11, 2022
Source details
- Canonical URL
- 危険な水準に達した世界の債務負担、決定的な協力が不可欠
Other formats
Bibliographic details
- Authors: Vitor Gaspar, Ceyla Pazarbasioglu
- Published: April 11, 2022
現状の評価と主要メッセージ
- 世界は不確実性の高い「危険な時代」にあり、パンデミックが3年目に入り、戦争が新たなリスクをもたらしている。
- ソブリン債のリスクが増大する中で、債務問題を秩序ある解決に導き、債務不履行を防ぐために「世界が協力し合うアプローチ」が不可欠。
- IMFは、きめ細かい政策助言と能力強化を通じて高リスク債務の根本的原因の解決を支援するが、流動性支援だけでは不十分な場合がある。
記録的な債務—規模と構成
- パンデミック期に赤字と負債は過去の景気後退局面(世界大恐慌や世界金融危機を含む)をはるかに超える速さで増加した。
- IMFのグローバル債務データベースに基づく主要統計:
- 借入は2020年に28%ポイント急増。
- 借入残高はGDPの256%まで上昇。
- この256%のうち約半分は政府が占め、残りは非金融企業と家計部門。
- 公的債務は世界全体の40%を占め、ここ60年弱で最大。
- 新興市場国および途上国(中国を除く)の増加寄与は比較的小さいが、近年着実に債務は増加している。
- 債務返済費用の急増:
- 低所得国の約60%は、債務返済の危機に陥っているか、そのリスクを抱えている。
インフレ加速と市場リスク
- 先進国の記録的公的債務に対する懸念を和らげていた要因(最近まで):
- 名目金利が非常に低かった(ドイツや日本、スイスなどでイールド・カーブ上の償還期間を問わずゼロに近いまたは負の水準)。
- 実質中立金利が多くの国で急低下。
- 実質金利が実質成長率を下回ることで財政拡大が痛みを伴わないという理解があったが、金融引き締めの見通しとリスク認知の高まりにより脆弱性が再浮上。
- 高い公的・民間部門の借入残高は財政的脆弱性をもたらし、債務比率が高い先進国の増加は、ファンダメンタルズが弱い国の長短金利格差を拡大し、借入コストを増加させるリスクを招く。
- インフレの影響:
- 予期せぬインフレは短期的に対GDP債務比率を下落させ得るが、持続的なインフレとインフレ・ボラティリティは借入コストを増加させる可能性がある。
- このプロセスは償還期限が短い国で短期間に発生し得る。
新興国・途上国の困難と人道的影響
- 先進国では経済活動とプライマリーバランス、歳出、歳入が2024年までにパンデミック前予想の水準まで戻る見込みだが、途上国の状況は厄介である。
- 新興国と低所得国ではGDPおよび歳入の低下が続いており、プライマリー支出が持続的に減少するとSDGs達成がさらに難しくなる。
- エネルギーと食料価格の急騰は最も貧しく脆弱な国にさらに圧力を与える。
- 低所得国では、食料が家計消費支出の最大60%を占める。
- 石油や食料の輸入に頼る低所得国では、人道的支援の差し迫ったニーズと非常に切迫した財政的制約が同時に存在する。対応として、無償資金の増加や譲許性の高い融資の提供が必要となる可能性がある。
グローバル金融環境の変化
- グローバルな金融環境は引き締め傾向にあり、主要中央銀行がインフレ抑圧のために利上げを実施している。
- ほとんどの新興国のソブリン債は、米国債とのスプレッドがパンデミック前の水準をすでに越えている。
- 中国の対外融資の減少は信用収縮を悪化させている。背景には不動産部門の支払能力問題、主要都市でのロックダウン延長、新しい経済成長モデルへの移行、途上国への既存ローンに関する問題がある。
国際協力の必要性と政策提言
- 債務再編の頻度は増加が見込まれ、債権者特性の多様化により協調は従来より複雑化する。
- より秩序ある債務再編のための体系整備は、債権者と債務者の双方にとって利益となる。
- 現状の制度上の課題と必要な対応:
- 低所得国向けの債務支払猶予イニシアティブ(DSSI)は2021年末に期限を迎えた。
- G20によるDSSIを超える債務処理の共通枠組みはまだ実現していない。さらなる改善が必要。
- DSSIの枠組みに入れない幅広い新興国・途上国も、世界的協力の恩恵を受けられるような選択肢を模索すべき。
- 協調が欠ける「なんとなく切り抜ける」対応は、債務者・債権者および世界の安定と繁栄に対するコストとリスクを増大させる。最終的な負担は最も貧しい家計に及ぶ可能性が高い。
- 債務者と債権者の見解と利益は、バランスを取って反映させる必要がある。
著者と立場
- ヴィトール・ガスパール—ポルトガル国籍。国際通貨基金(IMF)財政局長。IMF加入前はポルトガル中央銀行で政策に関わる複数の要職を歴任。2011年から2013年にポルトガルの財務大臣、2007年から2013年に欧州委員会欧州政策顧問局(BEPA)局長、1998年から2004年に欧州中央銀行調査局長を務める。ノーバ・デ・リスボン大学で経済学博士号とポスト・ドクター学位を取得。ポルトガル・カトリカ大学でも学位を取得。
- セイラ・パザルバシオグ—IMFの戦略政策審査局長。IMFの戦略的方向性と方針の設計・実行・評価を主導。G20や国連など国際機関との関係を統括。
出典:国際通貨基金(IMF)記事「危険な水準に達した世界の債務負担、決定的な協力が不可欠」