産業政策は低成長に対する万能薬ではない
IMF Blog, April 10, 2024
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- Authors: Era Dabla-Norris, Daniel Garcia-Macia, Vitor Gaspar, Li Liu
- Published: April 10, 2024
概要・主要メッセージ
- 多くの国が安全保障上の懸念や生産性・長期成長の再活性化を狙い、特定部門のイノベーションを促す産業政策を強化している(例:米国の「CHIPSおよび科学法」、欧州の「グリーンディール産業計画」、日本の「経済産業政策の新機軸」、韓国の「K-CHIPS法」など)。
- IMFの「2024年4月 財政モニター」第2章に基づき、産業政策は万能薬ではなく、適切な設計と条件が揃わなければ生産性向上や厚生改善をもたらさないとする結論が示されている。
- 基礎研究への重点とイノベーション・技術の広範な普及を促す財政政策の組合せが、成長拡大とグリーン/デジタル経済への移行を加速させうる。
産業政策が正当化されうる条件とリスク
- 産業政策が生産性上昇と厚生改善をもたらすための厳格な条件:
- 支援対象セクターが炭素排出量削減や他セクターへの知識スピルオーバーなど、目に見える社会的利益を生むこと。
- 政策が外国企業を差別待遇しないこと。
- 政府が政策を管理・実施する強固な能力を備えていること。
- リスクと過去の教訓:
- 多くの産業政策は高コストな補助金や減税に依存しており、対象を効果的に絞らなければ生産性と厚生に悪影響を与える恐れがある。
- 政治的つながりによる誤配分や、外国企業差別による報復・自滅的な影響の可能性。
- 世界の多くの国は他国で生まれたイノベーションに依存している現実。
グリーンイノベーションと補助金の留意点
- グリーンイノベーション支援は正当化されうるが、条件付けが必要:
- 補助金は透明性を確保すべきである。
- 環境目標に焦点を定め、財政コストを最小限にするために強固なカーボンプライシングで補完することが必要。
イノベーション推進型のポリシーミックス(政策設計の提案)
- 推奨される政策手段(相互補完的ポリシーミックス):
- 基礎研究の公的資金。
- 革新的なスタートアップ企業への研究開発補助金。
- 企業間の応用イノベーションを促す税制インセンティブ。
- IMFの試算に基づく数値的示唆:
- 平均的な先進国で、こうした政策への支出をGDPの0.5%ポイント、すなわちOECD加盟国の現水準の約50%増やすことにより、GDPを最大2%押し上げる可能性がある。
- この水準でイノベーションに支出すれば、長期的に債務対GDP比さえも減るかもしれない。
- 設計上の注意点:
- 補助金はイノベーションのライフサイクルの初期段階を対象にする場合に最も効果的。
- 税制インセンティブは容易に活用できなければ既存の大企業しか恩恵を受けない恐れがある。
- 財政余地が限られる国は短期的に他の支出の優先順位見直しや歳入増を検討する必要がある。
国別の優先事項と国際協調
- 技術水準が高くない国の優先事項:
- 他国で開発された技術の普及を促進する政策が生産性向上により寄与しうる。
- 技術の流入から利益を得るために人的資本と戦略的インフラへの投資が必要。
- 国際協調の重要性:
- グリーンおよびデジタル改革を加速して繁栄を実現するには、緊密な国際協調と大規模な知識交換が不可欠。
- 内向きな政策は世界の革新的潜在力を損ない、技術普及を遅らせる恐れがある。
- 政府の行動指針:
- 技術的能力への投資、環境変化に応じた支援の修正、開かれた競争市場に従うこと。
- 無駄な支出を避け、世界貿易のさらなる分断化につながりかねない保護貿易措置の回避を視野に入れること。
出典:2024年4月 財政モニター 第2章に基づく IMF ブログ記事
Content in this bundle
- CHAPTER 2 ExpandIng FrontIErs: FIscal polIcIEs For InnovatIon and tEchnology dIFFusIon