インフレが後退する中、世界経済には3重の政策転換が必要
IMF Blog, October 22, 2024
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- インフレが後退する中、世界経済には3重の政策転換が必要
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- Authors: Pierre-Olivier Gourinchas
- Published: October 22, 2024
現状認識とインフレの見通し
- 総合インフレ率は、2022年第3四半期に前年比「9.4%」とピークに達した。
- IMFの予測では、総合インフレ率は「来年末には3.5%」まで低下する見込み。
- この3.5%は、パンデミック前20年間の平均を若干下回る水準である。
- 多くの国で物価上昇率は中央銀行の目標付近で推移しており、主要中央銀行が金融緩和を進める道が開けている。
- サービスの物価上昇率は依然として高く、パンデミック前の水準の「ほぼ2倍」となっている。
世界成長の現状と地域別見通し
- 世界経済の成長率は「2024年から2025年にかけて3.2%」で安定的に推移すると予測されている。
- 先進国:米国の成長は「今年は2.8%」となるが、「2025年は潜在成長率へと回帰」する見込み。
- 欧州の先進国:来年に緩やかな回復が見込まれ、GDPは潜在GDPに近づく。
- 新興市場国と発展途上国:今年と来年ともに「約4.2%」と非常に安定している。特にアジア新興市場国で力強いパフォーマンスが見られる。
- 中期(5年先)の成長見通しは「3.1%」と数十年ぶりの低水準であり、この数字の大半は中国の見通しの悪化を反映している。
ディスインフレの要因と金融政策の役割
- インフレ低下の主因は、パンデミック後の供給寸断の緩和や一次産品価格の急騰といったショックの解消が大きい。
- フィリップス曲線は上方にシフトし、その傾きが急になったが、労働市場の正常化と金融引き締めで物価上昇率は急速に低下した。
- 金融政策は、インフレ期待の安定化や賃金・物価の悪循環回避に決定的な役割を果たした。
- 主要中央銀行は「今年6月以降」政策金利の引き下げを開始しており、中立的なスタンスに移行しつつある。
- 主要国の金利低下は、新興市場国への圧力緩和、対米ドルでの新興国通貨上昇、金融環境の改善をもたらす可能性がある。
- 一方で、いくつかの新興市場国はインフレ圧力の再燃に直面し、政策金利を再び引き上げ始めている。
- 気候、衛生、地政学的緊張による供給寸断は日常化しつつあり、同時に価格上昇と産出量低下が生じるショックへの対応は金融政策だけでは困難である。
下振れリスクと地政学的・政策的懸念
- 中東をはじめとする地域紛争の激化は一次産品市場に深刻なリスクをもたらす恐れがある。
- 望ましからざる貿易・産業政策へのシフトは、GDPがベースラインを大きく下回る可能性をもたらす。
- 金融政策が過度に長期間引き締められれば、金融環境が急激にタイト化するリスクがある。
- 次回のショックでは、労働者や企業が給料と利益を守ろうとし、インフレ期待の安定がより難しくなる可能性がある。
第1の転換:金融政策
- 進行中:主要中央銀行による利下げ開始(「今年6月以降」)で中立的スタンスへ移行しつつある。
- 効果:労働市場が冷え込みの兆候を示す中で経済活動を下支えする可能性。
- 注意点:
- 失業率の上昇は緩やかで、差し迫った景気減速を示唆してはいない。
- サービス物価の高さや供給ショックの常態化により、利下げの効果は制約されうる。
- 一部新興市場国では既に利上げ再開の動き。
第2の転換:財政政策
- 必要性:財政余地はマクロ経済と金融の安定の要であり、債務ダイナミクスを安定化し、財政バッファーを再構築する必要がある。
- 財政効果:政策金利の低下は資金調達コストを下げるが、長期実質金利がパンデミック前の水準を大きく上回っていることを踏まえると十分ではない。
- 多くの国で基礎的財政収支(元利払い費を除いた歳入と歳出の差)を改善する必要がある。
- 一部の国(米国や中国を含む)では現行の財政計画で債務ダイナミクスの安定には至らない。
- 選択肢の狭さ:
- 健全化を先送りすれば、市場から秩序なき調整を押し付けられるリスク。
- あまりにも急激な財政引き締めは経済活動を損ないかねない。
- 実行要件:財政健全化が必要な場合は、複数年にわたる持続的で信頼性のある調整を遅滞なく実行することが求められる。財政再建の信頼性と規律性が高いほど、金融政策が利下げを行いつつ補助的役割を果たす余地が大きくなる。
第3の転換:成長促進と構造改革
- 必要性:成長見通しの改善と生産性向上のために、さらに多くの改革が必要であり、これが財政バッファー再構築や高齢化・人口減少、クライメート・トランジション、レジリエンス向上、最脆弱層の生活改善などの課題への唯一の解である。
- 現状:多くの国で5年先の成長見通しは力強さを欠き、「3.1%」と低水準。
- 課題:
- 対外競争の激化や製造業・生産性の構造的脆弱性に対して、産業・貿易政策で自国保護の動きが見られる。
- 産業・貿易政策は短期的に投資と活動を押し上げる場合もあるが、報復措置を招き持続的な生活水準向上に至らないことが多い。
- 補助金を国債で賄うような措置は中長期的な解決にならない。
- 政策提言:
- 経済成長は、技術革新の促進、競争・資源配分の改善、経済統合の強化、生産的な民間投資の刺激を実現する意欲的な国内改革によってもたらされるべきである。
- 政策は明確に特定された市場の失敗や狭い範囲に限定された国家安全保障上の懸念に慎重に対処する場合を除いて、保護的措置を避けるべきである。
改革の政治的実行可能性と信頼構築
- 改革は大きな社会的抵抗に直面することが多く、単なる情報戦略では限界がある。
- 成功要因:
- 政策設計の全段階を通じた双方向のプロセスで政府と市民の間の信頼を構築すること。
- 潜在的な弊害を相殺する適切な補償措置を並行して実施すること。
- 国際協調の重要性:
- ブレトンウッズ機関創設80周年を迎えた今年、共通の課題に対処するため国際協調と多国間の取り組み強化の方法を考えることが重要な教訓である。
本ブログ記事は、2024年10月「世界経済見通し(WEO)」に基づいている。