膨らんだ債務と急速に変化する世界経済

2019年4月10日

写真:Zhang Tao/SIPA/ASIA Pacific Press/Newscom

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現在世界中で経済成長が減速しつつあり、公的債務は依然として高い水準にある。その一方で、人口動態の変化と科学技術の進歩が世界経済のあり方に変化をもたらしている。

良い教育を受ける機会や、雇用動向、医療、退職所得は、政府がこうした課題に対処していく上で行う課税と支出の選択によって左右される。政策担当者は何をすべきだろうか。

IMFの最新の「財政モニター」において私たちは、政策担当者は長期的な視点に立って、経済の成長を加速し、その包摂性の向上を促進することができると主張している。これは次の景気後退に備えるために債務を徐々に削減し、人々の未来への投資に向けて財政政策を改善しながら、財政を正常化していくことを意味している。そのためには、政府支出をより適切に配分し、予算により多くの余裕を持たせる一方で、租税政策を改善することが必要とされる。

次の景気後退に備える

債務が膨らむと、拡大する財政赤字を補填するための融資を債権者が避ける傾向が強まる可能性があり、経済成長の停滞を相殺するために支出を増やしたり税を引き下げたりする政策担当者の能力が制限されかねない。また、債務の利息支払によっても、国の成長を長期的に支える教育や保健医療、インフラといった投資への支出が不可能になってしまう。

各国が、次の景気後退期に経済を支えられるよう、予算にゆとりを作り出すための適切な戦略を特定することが必要になるだろう。

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多額の債務を抱える国々は、歳入増や過度の支出の制限を図らなくてはならないだろう。これは特に、米国のように現在の経済成長率が長期的な潜在成長率を超えている国や、ブラジルやイタリアなど、借入コストが高くて資金調達の必要性が大きい国に当てはまる。

一方でこれらの国々は、支出の優先順序を見直すか、税控除の廃止や税務行政の改善などを通じて課税基盤を拡大し、教育、保健医療、インフラへの投資を維持する必要がある。

ドイツや韓国のように資金調達に関する問題が少ない国では、政策担当者はインフラや教育への投資を拡大して、当面の経済を支えると同時に今後数十年の包摂的な成長を促進していくことが可能だろう。

人々の未来に投資する

次の不況に向けた備えのさらに先を見通すことも、財政政策の策定において必要とされる。人口動態の変化や新しい科学技術が現在、経済成長や所得と富の分配に深い影響を及ぼしつつある。これらの動向は公共財政にも影響を与える。

例えば人口が急速に高齢化する先進国では、2050年までに、年金や医療といった高齢化に関連する公的支出にGDP4分の1が費やされることになると、私たちは予測している。

逆に、新興市場国と低所得発展途上国の人口は若く、急速に増加している。インフラと公共サービスに関する国連の持続可能な開発目標の達成に向けて進歩を実現していくためには、これらの国々で追加的な政府支出が必要となるだろう。

このような世界的な潮流に適応し、債務を減らしていくために、各国は何ができるだろうか。

各国の政府は円滑な変化に向けて、より賢明で迅速な政策の実施に努めることができるだろう。これは、3つの面から財政政策を改善していくことを意味している。

支出を変化させる

第一に各国政府は、成長を促進する投資となるインフラ、教育、医療への支出を拡大し、それと同時に、非効率的なエネルギー補助金などの無駄な支出を削減していく必要がある。

例えば燃料補助金を徐々に撤廃し、最も脆弱な人々を保護することで、各国が人々と成長に投資するための資金に世界GDPの最大4%相当分が追加されると見込まれる。

デジタル化と機械による自動化が進む中、生涯学習と継続的なスキル向上を促進する政策に比重を置くことも重要である。例えば、シンガポールでは成人した国民全員が職業人生を通じて研修の助成金を受けることができ、オランダでは従業員教育に税額控除が適用される。

財政モニター」の第2章に示しているように、汚職などの腐敗の防止も追加的資金を増やして無駄を削減する助けとなるだろう。

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予算の余裕を増やす

第二に、公共財政管理の改善と歳入の増加に向けた措置の実施によって、予算のゆとりを広げることが見込めるだろう。201810月の「財政モニター」に示されているように、先進国では政府の金融資産管理の向上によって、毎年GDP3%に相当する追加歳入を得ることができると考えられる。

新興市場国と低所得発展途上国では、歳入徴収を強化する必要がある。例えばサブサハラアフリカ諸国では、現行税制度の効率化を図ることによって、今後5年間にGDP比で35%の追加歳入が平均で見込まれる。

租税政策を改善する

第三に、先進国は所得税の累進課税制度を再度強化するべきであり、これが格差解消に資するだろう。また大半の国々には、相続や土地、不動産への課税によって歳入を著しく増加させる余地が残されている。

それと同時に各国の政府は、特にデジタル企業を中心に、多国籍大企業への課税制度を改革するために力を合わせる必要がある。こうして利益移転と世界レベルの租税競争を抑制することが、低所得途上国も含め、各国の収入の増加につながると考えられる。

長期的な経済成長は公的債務の負担を軽減する重要な要素であるが、上記のような措置を講じることは経済成長を後押しするだろう。同時に、経済的恩恵を国内外により広く届け、経済の安定に必要な制度への国民の信頼を回復させる手段にもなる。

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