機会創出のための格差是正

2020年1月10日

写真:Jeffrey Arguedas-EFE-Newscom

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この10年で、格差が世界経済にとって最も複雑で頭の痛い課題のひとつとなりました。

機会の格差 世代間格差 男女間の格差 に加えて、もちろん所得と 富の格差 もあります。こうした格差はいずれも各国社会に見られるもので、残念ながら多くの国で拡大しつつあります。

私たちにその意志があればの話ですが、これらの問題に対処するためのツールを私たちは持っています。改革の実行には政治的な困難が伴いますが、その見返りとして得られる成長や生産性は努力に見合う価値があります。

格差に対処するための政策

格差対策のために、再検討が必要な点があります。まずは、財政政策と 累進課税 です。

累進課税は、有効な財政政策にとって重要な構成要素です。私たちの研究では、所得分布の最上位層について限界税率を引き上げても経済成長が犠牲にならないことが分かっています。

また、デジタルツールを徴税に活用することも、国内歳入を増やすための包括的戦略の一端を担えます。 腐敗 を削減することは、徴税を改善する一方で、政府への信頼を高めます。最も重要な点としては、こうした戦略によって、後れを取っている地域や個人のために機会を拡大する投資を行う上で必要な資源を確保できるようになります。

ジェンダー予算 もまた、格差是正の闘いにおいて有益な財政ツールです。多くの国で男女平等と女性のエンパワーメントの必要性が認識されています。こうした中、男女平等をより一層前進させるような形で歳出と課税を構築するために、各国政府はジェンダー予算を利用することができます。それは女性の労働参加拡大をもたらし、成長と安定を促進することにつながります。

第二に、格差対策において社会支出政策の関連性が高まっています。社会支出政策は正しく実施されれば、所得格差を緩和する上で、また、所得格差が機会の格差や社会の一体性に及ぼすマイナス影響を和らげる上で、重要な役割を果たします。

例えば教育は、若者が社会に貢献する生産的な大人になるよう備えます。医療は命を救うとともに、生活の質を向上させます。年金制度は高齢者が老後、尊厳を保つことを可能にします。

社会支出を拡大する力は、持続可能な開発目標(SDGs)の達成にとっても重要です。 IMFの新しい研究 によれば、必要とされる支出拡大は国によって大きく異なります。

  • ひとつ例を挙げましょう。新興市場国では、医療や教育、優先インフラといった重要分野において毎年、追加支出が必要となり、2030年にはその額がGDPの約4%に上るだろうと私たちは推定しています。これに対して、平均的な低所得途上国では追加支出額がGDPの15%に達すると見られています。

第三に、経済構造の改革により、格差是正へ向けた取り組みをさらに支えられるでしょう。調整コストを引き下げたり、地域間格差を最小化したり、増えつつあるグリーン雇用に従事できるよう労働者を教育したりすることによってです。

  • 積極的な労働市場政策により、労働者のスキル向上と失業期間の短縮が可能になります。求職支援や訓練プログラム、そして場合によっては「賃金保険(wage insurance)」などが考えられます。
  • 労働者の企業間や産業間、地域間での移動性が促進されれば、調整コストが最小化され、迅速な再雇用が促されます。労働者の移動性は、住宅や貸付、インフラに関する政策によっても支えることが可能です。
  • 対象地域を特定した政策や投資は、既存の社会給付を補完できます。

IMFが行う格差是正に向けた各国への支援

過去10年間、国際通貨基金(IMF)は格差是正の取り組みをサーベイランス(政策監視)や融資、調査、能力開発の業務に組み込んできました。これからの10年間もこれを継続していきます。

経済的包摂の問題に対する私たちの取り組みの土台となっているのは、 IMFの 社会支出戦略 です。

IMFによる各国への関与は「十分な社会支出が必要であるが、支出が効率的に行われ、財源が持続可能な形で確保されるべき」という前提を出発点としています。これは単なる目安ではなく、私たちの政策助言を方向づけ、支える原則となっています。

例えば、社会支出は持続可能な開発目標を達成したり、脆弱な貧困世帯の大多数を保護したりするのに不十分な場合、拡大が必要です。

同様に、人口構造の変化によって、財政の持続可能性の問題が医療や年金支出といった社会支出に関する議論の前面に押し出されることもあるでしょう。

最も大事なのは、貧しく脆弱な人々が調整に伴って受ける負の影響を和らげることが現在も、将来的にも重要な目標であるという点です。

実践を通じて実現

社会支出に関しIMFが各国に対して行っている関与の最近の例から、貴重な教訓が得られています。

  • エジプトでは、IMFの支援を受けたプログラムを実施する過程で、現金給付の対象が2倍以上に拡大し、230万世帯に達しています。
  • ガーナでは、中等教育の普遍化という目標を達成できるよう、公教育への支出を拡大するための財政余地を創出する支援を行いました。
  • 日本に対しては、高齢化に伴って大いに必要となっている年金改革の選択肢を準備する上で提言を行いました。

重要な点として、体裁のいい報告書を新たに出したところで、それが本棚で眠ることになった場合、誰の得にもならないことを私たちは認識しています。そのため、私たちはIMFによる関与が、各国固有の選好や事情により沿ったものとなるよう、社会支出戦略をIMFの業務に織り込む形で実施するための取り組みを行っています。

パートナーとの協力

私たちは、格差の是正にしろ、社会支出に関する取り組みにしろ、単独では行えないことを理解しています。

私たちは、こうした取り組みを国際機関や学界、各国当局、市民社会、民間部門との協力によって行うことを構想しています。社会支出政策の強化と、持続可能な開発目標の達成に向けた土台作りのために協力するのです。

  • 例えば、最近私はG7諸国の労働大臣にお会いしましたが、これら7か国の大臣はIMFの政策助言にとって参考となる社会や雇用、労働の問題に関して多大な専門知識をお持ちです。そして、私たちの側からは、こうした問題への関心を、安定や成長をめぐる経済政策の一連の議論において高めることを通じて、貢献できます。
  • また、世界銀行や国際労働機関(ILO)のような国際機関にも社会支出に関する貴重な知見があります。
  • さらに、市民社会や学界、シンクタンク、労働組合も独自の視点をそれぞれ提供してくれます。こうした視点によって私たちの見解はさらに優れたものとなり、私たちは集団思考の誘惑に打ち勝ち、各国固有の事情をより認識できるようになるのです。

当然のことながら、社会支出に関しては万能の解決策はありません。各国の選好は異なり、直面する課題も様々で、望んでいることも同じではありません。しかし、私たちは協力することによって正しい問いを立てられる可能性が高まり、その結果、正しい答えも見つかりやすくなるのです。

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