世界経済のために強固な足場を見つける

2020年2月20日

写真:Tryaging-iStock-by-Getty-Images-iStock

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主要な先進国や新興市場国で構成される20か国グループ(G20)の財務大臣と中央銀行総裁は今週、サウジアラビアのリヤドに集いますが、不透明な経済環境に直面しています。

2019年の成長は残念なものに終わりましたが、米中貿易交渉の第一段階合意を含めて、安定化とリスク低下の兆しが見え始めています。今年1月、IMFは世界経済の成長率が2019年の2.9%から2020年には3.3%2021年には3.4%へと上昇すると予測しました。この予測される成長率上昇は、一部の新興市場国・発展途上国の成長加速に左右されます。

これまで、金融政策と財政政策が自らの役割を果たしてきています。事実、金融緩和は昨年、世界経済成長率を0.5%ポイントほど押し上げました。49の中央銀行が合計71回の利下げを行い、世界金融危機以後で最も一斉に金融施策が講じられました。

しかし、まだ世界経済の土台は決して強固ではありません。不確実性の一部が後退した一方で、新たな不確実性が生まれています。真実を申し上げると、不確実性が新たに日常の一部になってきているのです。

コロナウイルスが私たちにとって最も喫緊の不確実性です。この世界的な公衆衛生危機を私たちは1月時点で想定していませんでした。心もとない回復が想定外の出来事によって脅かされうる点をまざまざと思い出すことになりました。ウイルス流行をどれだけ早く抑制できるか次第で、いくつものシナリオが考えられます。ウイルスによる混乱が迅速に収束すれば、中国経済はすぐに急回復するだろうと私たちは見込んでいます。その結果、中国のGDP成長率は2020年第1四半期に大きく下がりますが、2020年全体の成長率については小さな減少にとどまるでしょう。他の国々への波及効果は主にサプライチェーンの一時的な混乱、観光と移動制限によって生じることになりますが、相対的に小規模で短期的なものとなるでしょう。

しかし、ウイルス流行が長引いて深刻化すると、中国経済の成長鈍化はさらに長期化・大規模化するでしょう。これが世界に及ぼす影響は、とりわけ伝染病が中国国外で広がった場合に、サプライチェーン寸断の拡大、また、投資家心理悪化の長期化を通じて、増幅されることになるでしょう。

しかし、最善のシナリオ下でも、世界経済を見渡すと、予測される成長率はあまりにも多くの国々でさえない状況にあります。

そして、中期的には、成長率が歴史的な平均を下回り続けるだろうと予想されます。

こうした文脈において、病気のような不確実性の一部はコントロールできませんが、回避可能な場合に新たな不確実性を生み出してはなりません。

サウジアラビアでのG20会合において、未来の行動に関する不確実性をより払拭する上で財務大臣と中央銀行総裁が進歩を実現できる分野が3つあると私は信じています。これら3分野とは、貿易、気候変動、格差です。

さらに優れた世界貿易制度を構築する

米中貿易の第一段階合意は、世界経済に差し迫ったマイナス影響を一部取り除いています。

この合意は、貿易摩擦に伴って2020年のGDP水準に生じることになる負荷を0.2%(影響全体の約4分の1)軽減するだろうと私たちは試算しています。

出所: EM-DAT, IMF職員による試算

なぜより大きな削減が行われないのでしょうか。この合意は最近導入された関税のごく一部を対象にしたものであり、中国が一定以上の対米輸入増を行うよう明示しています。こうした二国間で管理される貿易合意は貿易や投資を歪めたり、世界経済の成長を損なったりする可能性があります。事実、私たちの推計は、この貿易管理規定によって、世界経済が1,000億ドル近くの損失を被ることを示唆しています。

また、より広い視点での懸念点もあります。米中間の根本的な問題の多くが対処されないままになっています。さらに、知的財産権を保護しつつ、サービスやeコマースの可能性を余すところなく解き放つことができる、今の時代に適した世界貿易制度をこの世界は必要としています。

そして、貿易に取り組むのは出発点に過ぎません。貿易とは別に、喫緊の世界課題となっている、ある問題への対処に失敗したならば、世界経済は大きなショックに直面し続けることになるでしょう。その問題とは気候変動です。

気候危機に立ち向かう

私たちは毎日、気候変動がもたらす人的被害に直面しています。最近オーストラリアを襲った森林火災のことを考えてみてください。経済的損害にも私たちは見舞われています。ひとつだけ事例を挙げると、ハリケーン・マリアがドミニカとプエルトリコにもたらした損害は対GDP比でそれぞれ200%60%を超えました。

本日公表されたIMF職員の試算によると、気候関連の典型的な自然災害は災害発生年に被災国のGDPを平均で0.4%ポイント押し下げます。

出所: Haver analytics, IMF 世界経済見通し、IMF職員による試算

さらには、とりわけ最貧国や自然災害の影響への対処が最も困難な国々で、こうした事象の頻度が高まっています。

出所: EM-DAT, IMF職員による試算

政策担当者が取れる施策とは何でしょうか。緩和と適応があります。

最近のIMF職員の調査によると、石油の世界需要は今後数十年の間にピークに達すると見込まれています。ですから、多角化を進めるための道筋に湾岸協力会議加盟国とG20諸国が改めて重点を置くことは適切なのです。

クリーンなエネルギーと強靭なインフラに投資することは私が「3重の配当」と呼ぶ成果、つまり、将来の損失の回避、イノベーションの果実、最も必要とする人々にとっての新たな機会の創出を実現可能にします。

炭素税がもたらす追加歳入は、例えば他の税の引き下げのために、また、影響を受ける世帯に向けた支援の原資として、さらには、社会格差の一部を埋めるのに役立つだろう支出の資金源として、用いることができます。気候災害リスクが最大の国々やコミュニティにとっては、適応への投資が緊急であり、費用対効果も高いものとなっています。気候変動への適応に関する世界委員会(Global Commission on Adaptation)による分析は、こうした投資の恩恵がコストをかなり大きく上回るかもしれないと示唆しています。

この点を踏まえて、G20の重点分野の3番目かつ最後の点についてお話ししたいと思います。格差縮小についてです。

格差縮小

OECD諸国とG20諸国の多くにおいて、所得と富の格差が相変わらず大きな状態が続いています。男女、年齢、場所によって機会が大きく異なる格差が存在しています。こうした格差が未来の不確実性、政府への不信感、究極的には社会の情勢不安を助長する亀裂にすぐにもなりかねないことを私たちは知っています。大臣たちは今週、生活水準の向上と、より賃金の高い雇用の創出に改めて重点を置くことができるでしょう。

G20を支援するために、IMFは世界銀行と共同で、機会へのアクセスを増やせる重要分野を特定しようとしています。とりわけ、質の高い教育、研究開発、デジタル化への投資です。タイミングは適切です。現在の低金利環境はつまり、一部の政策担当者にとっては、支出のための資金が増えていることを意味するかもしれません。もちろん、どの国にとってもこの提言があてはまるわけではありません。多くの国で公的債務が史上最高水準にあります。ですので、債務の対GDP比率が高い国々では、財政引き締めに今後も正当な理由があるでしょう。

しかし、必要な場合の赤字削減は不可欠な社会支出を保護する形で行われるべきです。そうすることで国々は、あらゆる人々のために機会へのアクセスを増やし、また、国内経済の基盤を強化することが可能になるのです。

終わりに

14世紀にアラブ思想家・歴史学者のイブン・ハルドゥーンは連帯がもたらす力強さという概念と共通目的が持つ力について記しています。コミュニティを生み出せる人々の絆を説明したのです。G20の大臣と総裁が今週サウジアラビアで一堂に会する中、イブン・ハルドゥーンの英知が考慮されることを私は願います。ともに力を合わせることで、私たちは不確実性を減らし、世界経済が立つ地盤をさらに強固なものする上で必要な対策を講じられるのです。

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