アフリカの夢を実現する

(写真:Melba-agefotostock-Newscom)

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2020年2月26日

サブサハラアフリカ地域の学校を訪れてみると、将来への希望に満ちたビジョンと、それを実現する難しさの両方が伝わってきます。最近訪問したシエラレオネとニジェールで、私はこの二面性を改めて痛切に感じました。

シエラレオネのリージェント・スクエア市立学校の教室は、同国の最も貴重な資源、すなわち子ども達の力を引き出そうとする政府の野心的な「質の高い無料教育」プログラムを体現しています。熱心な生徒達は授業に集中し、頑張っていますが、1学級あたりの生徒数が多い、教師の業務負担が重く、訓練も不十分である、そして教材の不足など、様々な要因によってその教育の質は制約されています。

一方のニジェールにも変革への強い意欲が見られます。サヘル砂漠のはずれにある研究センターでは、科学者たちがハイテクを駆使したマラリアや気候変動の解決策を研究しています。しかし、そこからほんの数マイル離れた場所では、色々な年齢の生徒達がワラでできた校舎で基礎教育を受けています。教室には黒板はありますが、本はほとんどありません。

変革を推進する教育とテクノロジー

様々な困難にもかかわらず、最も印象的だったのは、改革の推進力として教育にフォーカスし、それを実現するために積極的にテクノロジーを活用しようとする姿勢です。将来への希望が感じられる状況であり、こうした国々が国内外から新たな資金源を確保でき、また発想力豊かにテクノロジーを活用することで資金不足を克服できれば、なおさらです。

シエラレオネは2002年に10年にわたる内戦を終結させ、復興への道を歩みはじめました。16億ドルの債務免除を受け、巨大な鉄鉱床の採掘にも着手しました。しかし2014年にエボラ熱によってギニアやリベリアなどの隣国とともに甚大な打撃を受け、同時期には世界的な商品価格の暴落にも見舞われました。シエラレオネの人々はこれから、失った時間を取り戻さなければなりません。

現在、政府の野心的な開発計画は、インフラと人的資源への投資に重点を置いています。その計画のカギを握るのがテクノロジーであり、たとえばデジタル化によって教育改革の進捗を評価することなどが挙げられます。デビッド・モイニナ・センゲ初等・中等教育担当大臣(政府の最高イノベーション責任者も兼務)は、アフリカを代表する知性の1人です。マサチューセッツ工科大学(MIT)で博士号を取得し、その後IBMで人工知能(AI)研究を率いていたセンゲ氏は、教育にかかわる取り組みの指揮を執っており、それは15歳未満が人口の40%以上を占める同国においてきわめて重要なものです。

未来のための投資

シエラレオネの国家開発計画の中心にあるのは、子ども達とその教育への投資です。この取り組みには今後数十年でGDPを40%成長させ、所得格差を縮小させる潜在力があります。それは1人あたりGDPが500ドル強で、人口の半分以上が貧困状態にある同国に大きな違いをもたらすでしょう。

しかし、国家はどうすれば投資の原資を確保できるのでしょうか。重要な課題のひとつは公平な徴税、そしてより政府支出の有効性を高めることです。ガバナンス強化(汚職対策も含む)の取り組みは、この両面に効果があるでしょう。これはIMFがシエラレオネと協力している分野のひとつでもあり、歳入動員や税務管理などの分野で研修をはじめとする具体的支援を提供しています。興味深いことに、シエラレオネはAIや機械学習を使った技術的解決策によって、こうした問題への対応を進めています。

国際社会はエボラ危機の際には支援を強化したものの、近年の援助水準は過去の例を下回っています。例えば、ルワンダやモザンビークは内戦終結後の10年間、GDPの約8~9%に相当する無償援助を受けました。一方、現在のシエラレオネへの無償援助は、GDP比2~3%に落ち込んでいます。

ニジェールが直面する課題

ニジェールも非常に困難な課題に直面しています。近年は力強い成長を遂げ、2022年には原油輸出が始まる予定です。しかし、人口増加率が世界最高(年率3.8%、母親1人あたり7人以上を出産しており、小児死亡率も高い)という状況の中、生まれたばかりの民間部門の育成と雇用創出が最優先課題となっています。

さらに厄介なことにニジェールは、軍事衝突と気候変動という国家の存亡にかかわる2つの脅威に直面しています。これはサヘル地域の国々に共通する問題です。

マリ、ブルキナファソ、ナイジェリアとの国境を越えて侵入してくるテロ組織によって、ニジェールでは武装勢力による衝突が徐々に拡大しています。経済的に見ると、ただでさえ資金的に厳しい状態の中、安全保障のための支出が増えれば公共財政を圧迫し、経済発展のために使えたはずの資金が奪われることになります。

また年間降水量がわずかにもかかわらず、経済がほぼ農業で占められるニジェールにとって、気候変動は逃れられない現実です。


サヘル地域の気温は地球全体平均の1.5倍ペースで上昇しており、降雨は不安定化し、雨季は短くなっています。国際連合の推定では、サヘル地域の農地の80%が劣化しています。

北アフリカでのテロ活動の活発化や、同地域からの移民流入を懸念する先進諸国の政府にとって、武力紛争と気候変動は関心を向けるべき問題です。とりわけヨーロッパについては、経済発展と安全保障の両方にかかわる共通の利害があります。

夢を現実へ

ニジェールやシエラレオネのような国々が、自らの力だけで問題を解決することは期待できません。国連の持続可能な開発目標の成否は、国際社会が設定した高い目標を達成するために、こうした国々が国内と国際社会の両方から資源を動員できるかにかかっています。

こうした国々に足を運び、草の根の取り組みを目の当たりにすれば、人々の思いがどれほど強く、また1つひとつの前進がどれほど重要なものであるかがわかるでしょう。より多くの資金を確保できれば、こうした国々はさらに多くの成果をあげ、夢を現実へと変えることができるでしょう

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デビッド・リプトン は2011年から国際通貨基金の筆頭副専務理事を務めている。IMFに勤務する以前は、クリントン米大統領特別補佐官、米大統領府国家経済会議・国家安全保障会議の国際経済問題担当局長を務めた。また、クリントン政権下の財務省で国際問題担当の次官補および次官も務めた。それ以前は、米シティグループのマネージング・ディレクターを務めた他、世界的ヘッジファンドであるムーア・キャピタル・マネジメントやカーネギー国際平和財団で要職を歴任。ウッドロー・ウィルソン学術センターのフェローも務めた。

1989年から1992年には、ジェフリー・サックス米ハーバード大教授(当時)とともに、資本主義体制への移行期にあったロシア、ポーランド、スロベニアの各国政府の経済顧問を務めた。

ハーバード大学で修士号および博士号を、ウェズリアン大学で学士号を取得。

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