異例の危機に世界は異例の対応を

2020年4月21日

写真: IMF

写真: IMF

新型コロナウイルス危機ですが、私は「他に類を見ない」とここしばらく申し上げてきました。今回の危機の特徴ですが、次の点が挙げられます。

  • 複雑性が高く、医療と経済に相互に結びついたショックをもたらしています。この結果、私たちの暮らしは完全停止に近い状態に陥りました。
  • 次に不透明感の強さがあります。というのも、感染症治療、感染拡大防止策の有効性向上、経済再開のいずれも、段階的にしか方策が明らかになってきていません。
  • また、この危機は真に世界的です。新型コロナウイルスにも、このウイルスが起こす経済的ショックにも、国境は関係ありません。

世界経済の見通しは惨憺たるものです。世界的な経済活動が世界恐慌以来で最も大きく低下すると私たちは予測しています。

2020年の1人あたりの所得について私たちが出した予測では、数か月前、160か国で増加が見られることになっていました。しかし、現在、この指標は170か国で低下すると考えられています。

これまでの対策

異例の事態には、異例の対応が必要です。多くの点で国際通貨基金(IMF)加盟国は「他に類を見ない対策」を講じてきました。

感染症が世界的に流行する中で、人命を救い、社会と経済を守ろうと、世界各国の政府が前例なき対策をとってきています。これまでの財政措置は総額で8兆ドルの規模となっており、各国の中央銀行も巨額(一部、無制限)の流動性を注入してきています。

IMFについて申し上げると、私たちは世界金融危機勃発時の4倍となる1兆ドルの融資財源を持っており、加盟国189か国のためにこの資金を活用できます。世界的で、変化が急速であり、初期の行動がより大きな価値と効果を持つという、この危機の特徴を認識した上で、IMFは特に低所得国を対象に迅速な融資を提供する能力を最大化しようと取り組んできました。

この点において、IMFは能力を強化してきており、たった2か月の間に異例の措置を講じてきています。こうした措置の例を挙げましょう。

  • 必要性が見込まれる1,000億ドルの融資を提供できるように、迅速な実行が可能な緊急融資の利用可能額を2倍に増額しました。これまでに103か国が緊急融資をIMFに打診してきており、IMF理事会は今月末までにこれら要請の約半数について検討を完了することになっています。
  • 加盟国中で最も脆弱な最貧国29か国(うち23か国がアフリカ諸国)を支援するために、速やかな債務救済を可能にする大災害抑制・救済基金の改革を進めました。この債務救済のための資金を14億ドルまで増やせるようにドナー国と力を合わせています。イギリス、日本、ドイツ、オランダ、シンガポール、中国から多額の拠出を頂戴した結果、最も貧しい加盟国を対象に即時の債務救済を行えるようになっています。
  • 最も脆弱な国々を対象に、貧困削減成長トラスト(PRGTを通じた譲許的な融資枠を3倍に増やすことを目標としています。IMFは新しい融資財源として170億ドルの資金を確保しようとしており、日本、フランス、イギリス、カナダ、オーストラリアが合計117億ドルの拠出を約束してくださっていることを励ましく思っています。こうした国々の貢献のおかげで、目標資金の約7割が確保できています。
  • 最貧国に債権を持つ政府に対して2020年末まで債務返済を一時的に猶予することをG20が支持しましたが、これは画期的です。このG20による合意の結果、必要性が最も大きい国々が120億ドルを活用できるようになります。民間部門の債権者にも同様の条件で参加を呼びかけています。これが実現すると、さらに80億ドルの債務返済が猶予されることになりえます。
  • 新たに短期流動性枠が設けられることになりました。各国はこの仕組みを経済安定性と信頼を高める上で役立てられます。

先週、IMFのバーチャル春季会合期間中に国際通貨金融委員会(IMFC)は上記の一連の対策を承認しました。

これは強力な政策対応を意味します。こうした政策対応の結果、IMFは支援を切実に必要とする国々や人々を、支援を求められた瞬間に、求められた局面で、速やかに助けることが可能になります。まさしく今、支援の手を差し伸べられるのです。

景気後退の長期化を阻止する

しかし、さらに多くのことを実現する必要があり、今こそ未来を見据えるべきです。カナダの偉大なアイスホッケー選手ウェイン・グレツキーの言葉をここで借りると、「パック(球技のボールに相当)があったところではなく、パックが向かう先まで滑っていくべき」なのです。

この危機がどこに向かっているか、また、加盟国を支援する準備をどう行うかを考える必要があり、リスクと機会の両方を念頭に置く必要があります。この危機の当初の段階で、その爪痕が世界経済に長期的に残ることを避けるために力強い対応を行ったように、私たちは苦痛を伴う景気後退の長期化を避けるために、たゆまぬ努力を継続していきます。

私は特に新興市場国と発展途上国について心配しています。これらの国々からは、史上最大となる1,000億ドルの証券投資資金が一斉に流出しました。一次産品輸出に依存する国々には、輸出品価格の低落という、さらなるショックが生じています。観光に依存する国々や所得を支える上で国外からの送金に依存する国では、収入が急減しています。

新興市場国については、予防的な性質のものを含めて、通常の融資制度を用いてIMFは関与を行うことができます。市場でプレッシャーがさらに高まると、相当規模の資金が必要となるかもしれません。プレッシャーが広がらないように、IMFは融資資金を余すことなく駆使する態勢を整えていますし、国際金融のセーフティネットをすべて動員していきます。この点では、特別引出権(SDR)の配分がさらなる支援となるか検討します。

IMFに加盟する最貧国については、条件がもっと譲許的な融資が必要です。感染症拡大のピークがまだ到来していないことを踏まえると、公衆衛生危機に対策を講じ、企業倒産や失業を最小化するために、多くの国々でかなりの財政支出が必要となるでしょう。その一方で、国外から資金を調達する必要性も大きくなります。

融資を増やすことがどの国にとっても最善の解決策であるわけではありません。今回の危機によって、債務負担が膨らみ、多くの国々で債務の推移状況が今後、持続不可能なものになりえます。

ですから、この危機のトンネルをくぐり抜けた時に国々の強靭性が高まっているよう支援するために、私たちは新しいアプローチを検討し、他の国際機関だけでなく民間部門とも緊密な協力を進める必要があります。

この異例の危機において、加盟国同様に、IMFも従来の枠を大きく超える新しい領域で異例の措置が必要か検討すべきかもしれません。

景気回復に備える

強力な景気回復の基盤を固める力になれるよう、私たちの政策助言を変化する現実に合わせて調整する必要があります。各国が経済の再開を徐々に進めるにあたって直面する課題、リスク、両立困難な目標について、個別具体的に理解を深めていく必要が出てくるでしょう。

重要な問いとしては、非常時の刺激策と非伝統的な政策措置をいつまで継続するか、これらの政策をどのよう収束させるか、高い失業率への対策、さらに長期化する低金利への対処、金融安定性の保持が例として挙げられます。また、部門調整や債務整理の促進も必要になる場合があるでしょう。

私たちが一致団結して対応すべき長期的な課題についても忘れてはいけません。例えば、経済成長の原動力としての貿易に再びアクセルを踏むこと、この危機の最中に有用性を証明してきたフィンテックやデジタル変革の利益を共有すること、そして気候変動との戦いです。最後の点については、環境にやさしく気候変動への耐性が高い経済を推進するために景気回復を強化する刺激策を用いることができます。

最後の点ですが、新型コロナ後の新しい世界では社会的な一体感を当然のものとして扱うことができません。ですから、格差是正を進め、脆弱な人々を守り、誰もが機会を得られるよう推進することを目的に社会政策を調整する国々の努力を私たちは支えるべきです。

今、私たちは人類を試す試練に直面しています。連帯の精神でこの試練に立ち向かうべきです。

大きな不確実性が私たちの未来のかたちを隠しています。しかし、この危機をチャンスとして積極的に捉え、より優れた未来、異なる未来を一緒に形作ることもできるのです。

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クリスタリナ・ゲオルギエバ

IMFコミュニケーション局
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