危機の次段階 さらなる行動で強靭な回復を

2020年7月16日

写真:Boonyachoat/iStock by Getty Images

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今年4月、G20の財務大臣と中央銀行総裁が前回の会合を行った時、世界は新型コロナウイルス流行によって「大封鎖」の様相を呈していました。今般の感染症危機はまだ収束していませんが、多くの国々が段階的な経済再開を進めている中、G20財務大臣・中央銀行総裁会合が今週、バーチャル形式で開催されます。危機が新たな段階に入っていることは明白です。持続的な回復を共有するために、政策面でのさらなる機動性と行動が求められることになります。

先月、国際通貨基金(IMF)は経済見通しの悪化を公表し、世界GDPが今年4.9%縮小することを予測しました。世界の経済活動は今年、異例の収縮を見せた後、ゆるやかに成長を始めています。この点は、ある程度、より明るい知らせとなっています。2021年にも部分的な回復の継続が見込まれています。G20諸国など多くの国々が異例の措置を講じてきました。財政政策面では約11兆ドルに上る措置が実施され、中央銀行は巨額の流動性を注入してきています。こうした取り組みによって、世界経済の下降を阻止する足場が置かれたのです。こうした並外れた努力を過小評価してはいけません。

しかし、トンネルの出口はまだ見えていません。大規模な感染第2波が世界的に生じ、経済活動のさらなる混乱につながるかもしれません。その他のリスクとしては、過大気味の資産価格、不安定な一次産品価格、保護主義の台頭、政治的な不安定性が挙げられます。

より望ましい面では、ワクチンや治療法に画期的な医療進歩が起こり、景況感や経済活動を改善する可能性があります。こうした代替シナリオを見ると、不確実性が非常に高い状態であり続けていることが明白です。

IMF

多くの国々がこの危機の経済的な後遺症に悩まされることになるでしょう。労働市場から切り離されてしまう人々が多く生じるのではないかというのが大きな懸念点です。一部諸国では、世界金融危機の終息以降に創出された雇用よりも多くの雇用が今年3月から4月に失われました。学校が閉鎖されたことで、労働市場に参加する能力に影響が生じました。この点は女性に顕著です。雇用の一部は幸いにも回復しましたが、生産年齢人口に占める雇用者の割合は2020年初頭に比べて非常に低い状態です。さらに、労働時間が減った労働者が多い中、労働市場への総影響はもっと大きい可能性が高いのです。

IMF

企業が持つ現金のバッファーが枯渇していく中、破産がより一般的になりつつあります。

そして、人的資本も危機にさらされています。例えば、162か国で10億人を超える学習者の教育が中断されました。

この感染症危機は、貧困と格差を拡大させる可能性が高く、悲しいことに医療制度の弱点や労働の不安定さを一層露呈させ、若年層は切実に必要とする機会へのアクセスがさらに困難になると想定されます。

より強靭で、社会に広く行き渡る復興のために、(1)国内政策と(2)共同努力という重要な2側面において、さらなる行動が必要でしょう。

  1. 国内政策:対象をしっかり設定したライフラインを維持する

国によって感染症の流行段階が違っていますので、対策も異なることになります。IMFがこれまでに強調してきたように、新興市場国と発展途上国が今回の危機から一番大きな打撃を受け、先進国よりも大きな課題に直面し、より困難なトレードオフを迫られることになります。こうした国々は、より多くの支援をより長きにわたって必要とすることになるでしょう。とはいえ、広く当てはまる国内政策面の重要ポイントが複数あります。

人々と労働者を守る

世界中の国々が個人と労働者を対象に経済的なライフラインを強化してきました。こうしたセーフティネットの例としては、低所得世帯向けの有給疾病休暇や、医療保健・失業保険への加入、インフォーマルセクター(非公式部門)の人々を対象とした現金・現物の給付を挙げることができます。デジタルの仕組みが支給方法として最適であることが多いでしょう。こうした制度は、必要に応じて維持する必要があり、拡大すべき場合もあります。格差の深刻度が高い国ほど、より大規模な世帯支援を行っており、脆弱な層も支援の対象でした。この点には励まされる思いがします。

IMF

一方、今回の危機によって長きにわたり消費のパターンが変わり、多くの雇用が失われたまま二度と戻ってこないでしょう。ですから、労働者への支援を継続すべきです。その一環で、再訓練など、縮小する産業から伸びる産業へと労働者が移行できるよう支援する必要があります。

企業を支援する

存続可能な企業にライフラインを提供することは、人々や労働者への支援にもなります。G20諸国全般で、より多くの企業に対して、税負担・社会保障負担の軽減、助成金、金利補助金による支援が行われてきています。その大部分が中小企業向けであり、中小企業が雇用促進の大きな原動力であることを考えれば、この点は特に重要です。IMF職員の分析は、そのような支援がなければ中小企業の経営破綻がパンデミック前の平均4%から2020年には3倍の12%にまで増えかねず、失業率を増加させたり銀行のバランスシートを悪化させたりする恐れがあることを示唆しています。

経営破綻が増加すると、政府は企業支援を実施すべきか、どう支援するのかという困難な選択を迫られることになります。企業の流動性や支払能力の将来性をしっかりと分析することは、こうした選択を行う上での指針として役立つでしょう。売上低下が一時的な産業では流動性の提供で十分かもしれませんが、例えば、パンデミック対策に欠かせない企業が支払不能に陥った場合や、多くの人の命や生活がかかっている企業の場合には、資本注入が必要かもしれません。

この支援の財政コストは相当額になり、債務水準の高まりは重大な懸念事項ですが、現在の危機局面では、必要な場合に支援を継続する費用よりも支援縮小が時期尚早となることの代償の方が大きいでしょう。もちろん、措置は対象を絞って実施すべきですし、予算は費用対効果や中期的な債務持続可能性を考慮して評価しなければなりません。

金融安定性を保つ

失業や経営破綻や業界再編は、金融機関や投資家が被る貸倒損失も含め相当の課題を金融部門に突きつけかねません。既存の資本・流動性バッファーの国際基準に沿った柔軟な使用を規制や監督によって支えていくべきです。それにより、存続可能な企業への継続的な融資提供が円滑化するでしょう。GDPギャップが大きく物価上昇率が目標に達していない場合には金融政策は引き続き緩和的であるべきです。現在の危機では、この点が多くの国にあてはまります。

政策当局者にとって国内の重点課題のひとつは、短期金融市場、外国為替市場、証券市場が有効に機能するようにすることです。この点では、中央銀行間の協調や国際金融機関からの支援が今後も極めて重要であり続けるでしょう。

  1. 共同での取り組み:より良い未来へのチャンスをつかむ

事実、この危機を最短で収束させ、力強い回復を実現していくためには、国際協力が不可欠です。共同での行動が重要になるのは例えば以下の分野です。

  • 医療物資の十分な供給を保証する:有効な治療薬やワクチンの生産、購入、公正な流通に関して、国際協力も含む協力を行うことで実現します。
  • 国際貿易体制のこれ以上の断絶を回避する:各国は、国際的なサプライチェーンをオープンに保ち、WTOの改革に向けた努力を加速化し、デジタル課税に関する包括的合意を求めていくために最善を尽くすべきです。
  • 発展途上国が重要支出ニーズに対応する資金を調達し、債務持続可能性の課題も克服できるようにする:G20の債務返済猶予イニシアティブを引き続き進捗させていくことが特に重要です。
  • 国際金融のセーフティネットを強化する:スワップラインのさらなる期限延長やIMFの特別引出権(SDR)の活用強化も検討できます。

IMFは、72か国への緊急融資を3か月で実施するなど、今般の危機に異例の対応を行ってきました。189の加盟国の支援を得て、私たちは次の重要局面において、さらなる取り組みを行っていく所存です。

私たちは、レバノン出身の偉大な詩人ハリール・ジブラーンから学ぶことができるでしょう。「人の気持ちや考えを理解しようと思うなら、その人がすでに成し遂げたことではなく、これから達成を目指していることしていることを目にとめなさい」とジブラーンはかつて述べました。

パンデミックは苦痛をもたらしましたが、そうした中でも、世界の変革を目指すことができると私は信じています。私たちは、より良い未来を築くための100年に1度のチャンスに恵まれているのです。より公正かつ公平で、より環境にやさしく持続可能性の高い、よりスマートで、そして何よりも、より強靭な世界にしていくための好機が訪れているのです。

このチャンスをつかみ、より高い強靭性を実現するには、(1)教育、医療、社会保護など人々への投資、また、危機がもたらしかねない急激な格差拡大を阻止するための投資を行うため、(2)公共支出の賢明な配分などによって、低炭素かつ気候変動耐性が高い成長を支援するため、(3)デジタル変革を最大限に活かすために、行動が必要になります。3点目については、行政手続きを簡素化しつつ効率性や透明性を強化することを目的に電子政府プラットフォーム利用を拡大できますし、オンライン学習やテレワークを進めることが可能です。

G20諸国の政策当局者が、そして私たちの誰もが力を合わせて、こうした未来を現実のものにすべく、目の前のチャンスをつかむべきなのです。

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クリスタリナ・ゲオルギエバ

IMFコミュニケーション局
メディア・リレーションズ

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