新型コロナの男女格差

2020年7月21日

写真:STR/NurPhoto/Zuma

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  新型コロナウイルスの大流行は、増えてきた女性の経済的機会を縮小させ、30年間にわたって進歩が見られてきたとはいえ今なお根強く残るジェンダー格差を拡大させる恐れがある。

適切に設計された回復促進政策は、現在の危機が女性に及ぼすマイナス影響を軽減し、男女平等のさらなる後退を阻止できる。女性のためになることは、最終的に所得格差、経済成長、強靭性に関する取り組みのためにもなる。

なぜ新型コロナは女性とその経済的状態に不釣り合いなほど大きい影響を及ぼしてきたのか。これにはいくつかの理由がある。

1に、女性はサービス業、小売業、観光業、ホスピタリティ産業など対面での接触が必要な種々の「社会的セクター」で働いている可能性が男性よりも高い。これらのセクターは、社会的距離確保や感染抑制措置によって最も深刻な打撃を受けている。米国では、20204月から6月の女性の失業率は男性に比べ2%ポイント高かった。就いている仕事の性質上、多くの女性にとってテレワークという選択肢はない。米国では、社会的セクターで働く女性の約54%がテレワークできずにいる。ブラジルでは、その割合は67%だ。低所得国では、遠隔勤務が可能な人は多くても人口の12%程度に過ぎない。

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2に、低所得国では女性は男性よりもインフォーマルセクターで雇用されている可能性が高い。非公式の雇用は当局の監督が及ばない現金払いであることが多く、女性たちはより低賃金で、労働法による保護もなく、年金や健康保険のような福利厚生もなく働くことを余儀なくされている。インフォーマルワーカー(非公式労働者)の生活は、新型コロナ危機により多大な影響を受けている。コロンビアでは、経済活動の停止により女性の貧困が3.3%増加している。中南米やカリブ地域では、今般の感染症大流行によって貧困状態で暮らす人の数が1,590万人増加して合計で21,400万人に達することになると国際連合は試算している。その多くが女性や少女たちだ。

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3に、女性は男性よりも無償の家事労働を多く行う傾向にある。厳密に言うと、男女差は毎日約2.7時間だ。学校閉鎖など封鎖措置が講じられたり、重篤化リスクが大きい高齢の親を守ろうと警戒したりする結果、家族の世話が必要となっている。その責任も女性が主に引き受けている。封鎖措置が解除された後も、女性の完全雇用回復は遅れている。カナダの5月の雇用報告は、同国の雇用増加率は男性が2.4%だったのに対し女性は1.1%だったことを示している。保育の課題が根強いためだ。そのうえ、6歳未満の子どもが1人以上いる両親の場合、男性が女性の約3倍の確率で仕事に復帰している。

4に、パンデミックにより人的資本を失うリスクは女性の方が高い。多くの発展途上国では、少女たちが学校を中退して働き世帯収入を補うことを強いられている。マララ基金の報告によれば、リベリアで学校に通っていない少女の割合はエボラ出血熱危機後にほぼ3倍に増え、ギニアでは女子の復学率が男子より25%低かった。インドでは、新型コロナ感染拡大防止のための都市封鎖措置が講じられて以降、新規登録者数が30%急増したと大手の結婚紹介ウェブサイトが報告している。家族が娘の将来の安定を求めて縁談を調えるからだ。教育がなければ、こうした少女たちは人的資本を恒久的に失うという憂き目にあい、生産性向上が犠牲になり、女性の貧困連鎖が永続化してしまう。

感染症流行が女性に長期的な影響を残さないように、その爪痕を抑える施策を政策当局者が採用することが極めて重要である。それには脆弱層に対する所得支援の延長や、雇用関係の維持、仕事と家族の世話を両立させるインセンティブの付与、医療や家族計画へのアクセス向上、小規模企業や自営業者への支援拡大などが重点事項として含まれるだろう。女性の経済力向上に対する法的障壁の撤廃も優先課題のひとつだ。一部の国は、素早く行動を起こして、こうした政策のいくつかを採用している。

  • オーストリア、イタリア、ポルトガル、スロベニアは、一定年齢未満の子どもがいる親が(一部)有給の休暇を取得する制定法上の権利を導入している。フランスは、代替的な保育や勤務体制が利用できない場合に、学校閉鎖による影響を受けた親の病気休暇を拡大している。
  • 中南米の女性指導者たちは「女性の経済的エンパワーメントのための行動に向けた連合」を設立した。これは、パンデミック収束後の経済回復に女性がさらに参画できるよう促進するために政府全体として行う取り組みの一部となる。
  • トーゴの新しいモバイル現金給付プログラムを見ると、その参加者の65%が女性だ。この制度によって、インフォーマルワーカーが最低賃金の30%の補助金を受け取ることが可能になっている。

より長期的には、女性が働くための環境を整えたり、そのインセンティブを考案したりすることで、男女格差の問題に取り組むよう政策を設計できる。最近のブログ記事で述べられているように、特に有効なのが、教育やインフラへの投資や、保育料の補助や、育児休暇の提供など男女平等志向の財政政策だ。これらの政策は、女性の経済的エンパワーメントにかかる制約を取り払うために極めて重要であるばかりでなく、新型コロナ収束後の包摂的な回復を促進するためにも必要なのだ。

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クリスタリナ・ゲオルギエバ

ステファニア・ファブリジオは、IMF戦略政策審査局の副ユニット長。IMFでの勤務開始前はスペインのサラマンカ大学で客員教授を務めた。研究関心分野はマクロ経済、公共財政、財政制度などで、特にマクロ経済の政策と改革が所得分配に与える影響に関連した政策課題について幅広く研究している。経済学分野の有名な学術誌に研究論文を掲載。欧州大学院(EUI)で経済学博士号を取得。

林清雲Cheng Hoon Lim)はIMF西半球局の局長補新興市場国と先進国のサーベイランス(政策監視)を幅広く経験し、複数の書籍の共同編集を含めて、様々なトピックについて発表してきた。スミスカレッジの学士号を極めて優等な成績で取得し、全米優等学生友愛会の会員。1994年にケンブリッジ大学の博士号を取得。

マリナ・タバレスIMF調査局のエコノミスト。以前にはIMF戦略政策審査局でエコノミストとして勤務し、IMFとイギリス国際開発省が共同で行った格差に関わる業務を主導した。IMFでの勤務前にはメキシコ自治工科大学(ITAM)で助教授を務めた。純粋・応用数学研究所(IPAM)で修士号、ミネソタ大学で経済学博士号を取得。研究関心分野はマクロ経済学、公共財政、ジェンダー、格差などである。

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