新型コロナウイルスと腐敗

2020年7月29日

写真:Ingram Publishing/Newscom

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私的利益のための公職乱用である腐敗は、単なる資金の浪費ではない。それは社会契約を損ない、どの市民にとってもためになる経済成長を実現する政府の能力を弱めることになる。腐敗は危機以前から問題であったが、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)によってガバナンス強化の重要性が高まっている。それには以下の3つの理由がある。

第一に、パンデミックと戦い、人々や企業に経済的なライフラインを提供するために、世界全体で経済における政府の役割が大きくなっている。こうした役割の拡大は重要だが、腐敗の機会が増えることにもなる。各国政府にとっては、資金や対策がそれを最も必要とする人々の役に立つようにするために、タイムリーかつ透明な報告や事後的な監査・説明責任の手続き、市民社会および民間部門との緊密な協力が必要となる。

第二に、財政の悪化に伴い、各国は脱税や、公的支出における腐敗に起因する資金の浪費・喪失を防止する必要がある。

第三に、危機は政府や制度に対する人々の信頼を試すことになり、また、医療サービスの需要がこれほど大きい時には倫理的行動の重要性が高まる。腐敗の証拠が明らかになれば、危機に効果的に対応する各国の能力を損ないかねず、経済への影響が深刻化し、政治的・社会的結束が失われる恐れがある。

今回の危機において、IMFはガバナンスと腐敗防止に関する取り組みを引き続き注視している。各国政府に対する私たちのメッセージは明瞭である。それは「必要な支出はすべて行うべきだが領収書はとっておくように」というものだ。というのも、私たちは一連のプロセスにおいて説明責任が置き去りになることを望んでいないからだ。

IMFの融資業務においては、喫緊のニーズに応えるべく迅速に融資を実行している。同時に、各国のパンデミック対策を支援する緊急融資は、新型コロナ関連支出を追跡するためのガバナンス強化措置がセットとなっている。

借入国は、(1)危機関連支出の独立的な事後監査を実施・公表し、(2)受注企業およびその実質的所有者に関する情報を含め危機関連の調達契約を政府ウェブサイト上で公表することを約束している。またIMFでは、緊急資金がIMFセーフガード評価の対象となるようにしている。

危機の先に待つ息の長い改革

新型コロナ関連の緊急支援に関するガバナンス対策は、加盟国の良い統治(グッドガバナンス)と腐敗撲滅への努力を向上させるためにIMFが進めているより包括的な取り組みの一環をなすものである。

この数年で、IMFはガバナンスと腐敗により一層重点を置くようになっている。2018年には、IMFの各国との業務をより率直で、公平で、有効なものとすべく設計された、強化された枠組みを採択した。これは、IMFの新型コロナ関連の政策・融資対応においてガバナンス強化の重要性が一層高まる中で、その基礎となっている。

最近、私たちは近年の前進について評価を行い、IMF職員による分析の中でその結果を公表した。そのポイントは以下のとおりである。

  • 私たちは各国とガバナンス問題について率直かつ詳細な議論を行っている。テキストマイニング分析によれば、IMFによる各国経済の健全性に関する年次評価と融資プログラムにおいて、ガバナンス・腐敗問題に関する言及が増えていることがわかっている。枠組み採択以降の18か月間で、IMF職員の報告書におけるガバナンス関連の言及は2017年と比べて倍以上となった。2019年、IMFはそれまでの10年間の平均と比べて4倍の頻度で各国とガバナンスについての議論を行った。例えばごく最近でも、IMFのサーベイランス(政策監視)で、リベリアにおける中央銀行のガバナンスと業務やモルドバにおける金融セクター監督、メキシコの腐敗防止枠組みに焦点が当てられた。IMF職員は、ガバナンスと腐敗防止に関してより具体的な勧告を行っている。
  • IMFが支援する融資プログラムには、ガバナンス・腐敗防止改革に関する特定のコンディショナリティが付されており、現在では多くのプログラムにおいてガバナンス向上が中核的な目標のひとつとなっている。
  • 私たちは、各国のガバナンス・腐敗防止に関する取り組みの強化を支援するために、技術支援と研修を拡充している。税務行政や支出管理、財政透明性、金融セクター監督、腐敗防止制度、政府幹部職員の資産申告といった分野で各国のガバナンス向上を支援することを私たちは目指している。それには、12か国を対象としたガバナンス診断の訪問団派遣も含まれ、法的枠組みに基づいてガバナンス上の弱点の詳細な分析を行い、優先順位を付した解決策を提案している。
  • さらに、これまでのところオーストリア、カナダ、チェコ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、スイス、英国、米国の先進国10か国が、国際的な腐敗の機会を制限するための自国の枠組みについて任意の評価を受けている。IMFが実施する本評価では、(1)外国公務員に対する贈賄の犯罪化と訴追、(2)外国公務員が腐敗によって取得した利益を自国の金融システムあるいは国内経済の中に隠蔽することの防止という2点につき、各国の実行度合いを測定することを目的としている。IMFは、加盟国に対して、年次の経済健全性診断の一部としてこうした点を任意で含めるよう強く促している。

腐敗を抑制するには、改革に関する政府の主体性と国際協調、そして市民社会や民間部門との共同の取り組みが必要となる。それにはまた、政治的意思と、長い年月にわたって改革を根気強く実行することが求められる。

パンデミックは人々と各国経済に壊滅的な影響と犠牲をもたらしており、今回の危機によって私たちは今後の活動の重点をより一層ガバナンスに置くことになるだろう。最も順調な時でさえ貴重な資源を無駄にする余裕がない国では、パンデミックの最中やその後においてはなおさらその余裕がない。もし仮に腐敗防止改革を行うべき時があるとすれば、それは今である。

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ヴィトール・ガスパールは、ポルトガル国籍でIMF財政局長。IMFで勤務する前には、ポルトガル銀行で特別顧問など政策関連の要職を歴任。20112013年にはポルトガル政府の財務大臣。20072010年に欧州委員会の欧州政策顧問局長、19982004年に欧州中央銀行の調査局長を務めた。ノーバ・デ・リスボン大学で経済学博士号とポスト・ドクター学位を取得。また、ポルトガル・カトリカ大学でも学んだ。

マーティン・ミューライゼンIMFの戦略政策審査局長として、IMFの戦略的な方向性と、機関としての方針の設計・実行・評価に関する業務を主導している。また、G20や、国際連合など国際機関とIMFの関係を統括している。

ローダ・ウィークス・ブラウンIMFの法律顧問兼法律局長。融資、規制、提言機能を含めIMF業務の法務的側面に関して、IMFの理事会、マネジメント、職員と加盟国政府に助言を行っている。IMFでのキャリアを通じて、広範にわたる重要な業務方針や各国の問題について法律局の業務を統括してきた。IMFの法律の全側面について記事や理事会向けペーパーを執筆し、本テーマに関してチューレーン大学でセミナーを共同で教えた。

過去にはIMFコミュニケーション局の副局長としても勤務し、アフリカ、アジア、欧州での広報活動を主導し、IMFの広報戦略の変革において重要な役割を果たし、重要な法律や金融のトピックに関するIMFの戦略的な政策コミュニケーションを統括した。

ハワード大学で経済学士号(最優等)、ハーバード大学ロースクールで法務博士号を取得。IMFでの勤務前にはスキャデンのワシントンDCオフィスに務めた。ニューヨーク州、マサチューセッツ州、コロンビア特別区の弁護士会に所属している。最高裁弁護士会の一員でもある。また、世界の女性リーダー育成に注力する非営利団体TalentNomics, Inc.の理事を務めている。

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