パンデミックとその先に向けたIMF融資

2020年9月18日

写真:ZELJKOSANTRAC/ISTOCK BY GETTY IMAGES

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  新型コロナウイルスがもたらした未曾有の不確実性と経済への深刻な影響を受けて、IMFは状況に応じた変更を融資制度に加え続けている。同時に、IMFは現実的な目標を立て、各プログラムの信頼性を維持し、各国の主体性を促すことを目指している。

これまでに、IMFは主に緊急融資と予防的融資ツールを通じて、約80か国に対して資金面での支援を行っている。

その他にも、30を超える国々が金融セーフティーネットを再構築しパンデミックの余波に対処する上で、IMF支援プログラムに関心を示している。

100年に一度の今回のパンデミックに対する加盟国の対応を支援すべく、各国が初期の感染拡大防止フェーズから安定化、そしてやがては復興へと移行するのに応じて、IMFの融資プログラムはイノベーションや柔軟性の増大を通じて適応を図っている。

IMF

まず集中すべきはマクロ経済の安定化

IMF支援プログラムでは、さしあたり経済の安定化に主な焦点を当てている。それには、支出の優先順位付けを行うことも含まれる。例えば、保健医療などの社会的支出、最も影響を受けている企業・世帯に対する流動性支援と所得支援などだ。金融政策はインフレリスクに注意しつつ可能な限り緩和すべきで、金融セクター政策は健全なバランスシートを維持しつつ信用収縮の回避を追求するものでなければならない。

しかし、伝統的な政策だけでは不十分な可能性がある。状況次第では、追加的な措置を検討しうる。例えば、既存の規制枠組みに組み込まれた柔軟性を最大限に利用できるだろう。また、非伝統的金融政策をさらに活用する余地もあるかもしれない。とはいえ、財政ファイナンスのような一部の措置は、政策決定と制度構築の面でようやく得られた前進を台無しにする恐れがあり、悪しき前例を作り、後戻りは困難となるだろう。

現在の危機においては、緊急融資を対象にするものも含めて、IMFプログラムのモニタリングでは、中央政府の借入といった従来IMF融資に付されてきた具体的で測定可能な条件よりも、支出措置の質とガバナンスにより大きな重点が置かれている。

その理由は単純である。かつてない不確実性が新型コロナ流行によって生じているため、経済政策の立案が以前より難しくなっており、また、目標を立てても急速に陳腐化する恐れがあるからだ。

こうした傾向は、パンデミックが続く間、経済見通しと金融環境についての見方が定まるまで変わらない可能性が高い。その間に政策のより総合的な評価がなされるとしても、各国はIMF資金の適切な活用を証明することが必要となる。

不確実性への対処

その一方で、各国当局は経済ショックへの対応と将来のリスクへの対処に関して機動的であり続けることも必要となる。そのためには、プログラムとサーベイランス(政策監視)の両方において、各国当局とIMF職員が悪化シナリオと適切な政策対応について定期的に話し合うことが重要となる。

債務水準の上昇に伴い、過剰債務に対して脆弱となる可能性が高い国が増えている。ある国で債務持続可能性が不透明な場合、後に債務処理の必要性や範囲が明確化するまでは、政府債務の償還期限を延長することが今後の対応を決定する上で有用となりうる。

それには格付けの引き下げや、あるいはクレジットイベントの認定といったコストを伴うが、市場アクセスの喪失につながった根本的な問題を解決することにより、最終的には投資家にとって利益となりうる。

償還期限の延長は、重要な財源を解放し、外貨準備への圧力を軽減することにより、経済的な痛みを増やす緊縮や金融引き締めの必要性を低下させることにも資する。  

さらに、多くの国ではIMFから融資を受けずにパンデミックとその経済的影響への対応が可能かもしれないが、不測のショックに対する保険を必要とする可能性がある。そうした国々に対しては、IMFの予防的融資ツールが低コストで市場アクセスを改善するための魅力的なオプションとなる。状況の改善に応じて、これらツールの活用を段階的に減らすことができ、例えばフレキシブル・クレジットラインを利用中の国は短期流動性枠へと移行することが可能だろう。

「ニューノーマル」に向けた構造調整の支援

不確実性の後退に伴い、政策余地を回復し債務脆弱性を低減させるべく各国を支援する必要が生じるのを反映して、IMFの融資は徐々にシフトすることになる。

大半の国にとって、パンデミック後の経済はこれまでとは違ったものとなるだろう。景気回復が確固としたものとなり、危機の影響がより明らかになれば、IMFプログラムは成長を促進する改革へとその重点を移し、加盟国が危機からの強力かつ持続可能な回復を実現できるよう支援することが必要となる。

例えば、従業員の採用・離職を容易にするような改革は、ウイルスの封じ込めや経済の安定化にとってはそれほど重要ではないが、各国経済が重大な構造変化を経験し、デジタル技術と気候変動の影響に対処することになりうる「ニューノーマル(新常態)」への適応においては重要となる可能性がある。

そのため、IMFは構造政策の実施に向けて今後も他の国際金融機関と協力する。構造政策には保健医療や債務管理、社会的保護、融資のガバナンス改善に加えて、将来の公衆衛生・気候危機に対する強靭性の向上も含まれる。

今回の危機によって、各国政府と中央銀行の強靭性と機動性が極限まで試されている。こうした取り組みに対して、IMFはパートナー機関とともに国際レベルで応えるよう尽力している。この点に関して、IMFの融資ツールを効率的に活用することが今後もなくてはならない役割を果たすだろう。

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ロバート・グレゴリーは、IMF戦略政策審査局の副室長で融資方針を担当。現職の前には欧州局でアイスランドを担当した。その前にはモロッコとナイジェリアの業務を担った。キャリアをアクセンチュアで開始した後、イギリス財務省とバークレイズ銀行でも勤務した。イギリス政府への出向で貿易政策業務に従事した後、IMFに先日帰任した。

林慧丹(フイダン・リン)IMF欧州局のエコノミストでユーロ圏の金融政策とマクロ経済見通しを担当する。この前にはポルトガルと韓国を担当した。研究では中国、ユーロ圏、アメリカにおけるマクロ経済・金融の諸問題に焦点を当て、成長、銀行、労働市場、企業金融について取り上げてきた。コロンビア大学の経済博士号を取得。中国の北京大学で経済学士号。

マーティン・ミューライゼンIMFの戦略政策審査局長として、IMFの戦略的な方向性と、機関としての方針の設計・実行・評価に関する業務を主導している。また、G20や、国際連合など国際機関とIMFの関係を統括している。

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