危機下における企業の環境パフォーマンス

2020年10月26日

画像:iStock Design

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 危機に際して、リーダーは試練に立ち向かうよう求められることが多い。企業とその経営者は、目下の保健・経済危機において最善を尽くしているが、行く手にはまた別の危機が控えている。パンデミックの緊急性によって見えにくくなっているが、環境危機が迫っており、企業(およびその他の主体)による行動が必要となっている。では、ビジネスリーダーと企業による対応はどのようなものとなるだろうか。

私たちの最新の分析では、過去にあった金融・経済ストレスの事例に注目し、現在の危機が企業の環境パフォーマンスに与えうる影響を評価している。

一方では、新型コロナのパンデミックによって環境リスクに対する認識が高まり、消費者の選好や企業の活動、投資家の行動に変化が生じて、低炭素経済への移行が加速する可能性がある。しかし他方では、経済の不確実性が高まる中で、財務力が低下した企業が資本集約的な長期のグリーン案件への投資を削減し、移行が減速するリスクもある。

過去からの予測

20022019年の期間について見た上場企業の大規模な国際的サンプルに基づく私たちの分析によれば、財務上の制約を抱える企業では制約がない企業に比べて環境パフォーマンスが著しく低くなることがわかっている。

私たちの分析には、一般に財務上の制約の代替指標として用いられる様々な要因を取り込んでいる。例えば、小規模で無格付けの企業は、大規模で格付け対象の企業よりも財務上の制約を抱えている可能性が高い。同様に、財務上の制約がある企業は配当の支払いに消極的となる可能性がある。私たちの環境パフォーマンスの主な尺度としては、資源利用、排出削減、製品のイノベーションなど主要なパフォーマンス指標に基づくスコアを用いている。

配当を行わないか、無格付けまたは小規模な企業の場合には、大規模であるか配当を行い、あるいは格付け対象となる企業に比べて、環境パフォーマンスのスコアが平均で1030%低くなる。

新型コロナ危機のように、マクロ経済と金融に大きな影響を及ぼすショックは、不確実性を高めるとともに経済活動の混乱を招き、そのことが企業の財務上の制約を増幅させる傾向がある。それは、結果的に企業のグリーン投資に負の影響を与える可能性が高い。

下のグラフに示すとおり、2020年上半期に見られた平均的水準に匹敵するような、世界的な金融ストレスと不確実性の急激な高まりがあると、企業の環境パフォーマンスが低下し、過去10年間に得られた成果を覆す可能性がある。深刻なのは、ショックから3年経ってもショック前の環境パフォーマンス水準まで回復しないという点だ。同様に、私たちの分析では経済産出量が減少すると企業の環境パフォーマンスも低下することがわかっている。

IMF

現在言えること

こうした結果は、新型コロナ危機、また、世界の温室効果ガス排出を削減する喫緊の必要性を踏まえると、重要な意味を持っている。

第一に、最新の「世界経済見通し(WEO)」で提唱されたグリーン投資の推進といった気候変動に関する政策行動がなければ、財務上の制約の悪化と経済の不調が企業の環境パフォーマンスにとって有害となり、グリーン投資を減少させ、低炭素経済への移行を潜在的に遅らせる可能性がある。したがって、想定される企業の環境パフォーマンス悪化を相殺するためには、企業の財務上の制約を緩和し、グリーン投資を支援するような気候政策を実施することが非常に重要となる。

第二に、グリーン復興パッケージにくわえて、持続可能な金融の促進を目指す政策が鍵となる。

  • 企業が持続可能性に関して同等かつ一貫性のある報告を行えば、企業の環境パフォーマンスをより効果的に評価できるようになるだろう。正確で適切に標準化された報告と情報開示があって初めて、投資家は各企業の気候関連財務リスクへの実際のエクスポージャーを判断できることになる。
  • 持続可能性が単に人目を引くラベルなのではなく、根底にある持続可能な投資決定を反映したものであるという点について投資家の信頼を得ることが重要である。そのためには、何が持続可能な投資ファンドに該当するかについて、さらなる標準化と明確化を行うことが必要となる。
  • 取り組みを強化し、持続可能な資産市場の細分化を防ぐには、国際協調と、現在世界で進められている各種イニシアティブに対する協力的なアプローチが非常に重要である。IMFはこうした努力に貢献を果たしていく。

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ピエール・ゲランは、IMF金融資本市場局国際金融安定性分析課のエコノミスト。過去には経済協力開発機構(OECD)経済局とカナダ銀行国際経済分析局に勤務した。研究分野はマクロ計量経済モデル、国際金融、エネルギー経済学。欧州大学院(EUI)で経済学博士号を取得。

ファビオ・マッシモ・ナタルッチは金融資本市場局副局長。国際金融安定性リスクに関するIMFの評価を示す「国際金融安定性報告書(GFSR)」の責任者を務めている。米連邦準備制度理事会(FRB)金融政策局上級局長補を経て現職。201610月から20176月まで米財務省国際金融安定・規制担当次官補代理。ニューヨーク大学経済学博士。

フェリックス・サンタイムは、IMF金融資本市場局国際金融安定性分析課のシニア金融セクターエキスパート。イギリス金融行為監督機構経済局での勤務経験あり。主な研究専門分野は実証的企業財務・金融仲介。イタリアのボッコーニ大学より金融学博士号、また、ボン大学より経済学ディプロマを取得。

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