継続する世界の不確実性 それが意味すること

2021年1月19日

写真:DNY59 by Getty images

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  新型コロナ流行当初にかつてない水準に高まった世界の不確実性は、その後も高い水準で推移している。世界の経済的・政策的不確実性を測る四半期ごとの指標である世界不確実性指数(WUI)143か国を対象にしているが、それによれば、不確実性は新型コロナのパンデミックが勃発した2020年第1四半期に記録したピークから約60%低下しているものの、依然として19962010年の平均を約50%上回っている。

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世界的な不確実性の要因

米国や欧州連合(EU)といったシステム上重要な主要国・地域における経済成長が、世界の他地域の景気にとっても主要な牽引役となっている。同じことが世界的な不確実性についても言えるだろうか。例えば、各国間のつながりが深まる中で、米国の選挙やブレグジット(イギリスのEU離脱)、米中間の貿易摩擦に伴う不確実性が波及し、他国の不確実性に影響を与えることを予期すべきだろうか。

こうした問いに答えるべく、私たちはシステム上重要な主要国(G7諸国および中国)から世界全体に不確実性がどの程度波及しているかを測定する指標を構築した。特に、143か国を対象とするエコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)の国別報告書に関して、1996年第1四半期から2020年第4四半期までの分についてテキストマイニングを行うことにより、システム上重要な国からの不確実性の波及を明らかにしている。

システム上重要な各国からの不確実性の波及は、各報告書中で「不確実性」という単語がその国に関連する単語の近くで言及されている頻度に基づいて測定した。具体的には、システム上重要な国ごとに、かつ四半期ごとに、国別報告書中でその国に関連する単語の近くに現れる「不確実な(uncertain)」や「不確実性(uncertainty, uncertainties)」という単語を探した。各国固有の単語には、国名や大統領の名前、中央銀行の名称、中央銀行総裁の名前、(ブレグジットのような)当該国の主な出来事などが含まれる。

測定を各国間で比較可能なものとするために、「不確実性」の単語数を各報告書の総単語数に対する比率として計算し直した。指数の上昇は不確実性の高まりを意味しており、低下はその反対である。私たちの研究結果からは、2種類の重要な事実が明らかになっている。

第一に、システム上重要な国における不確実性は確かに世界全体の不確実性にとって重要な意味を持つ。

第二に、米国とイギリスにおける不確実性のみが顕著な波及効果を有しており、その他のシステム上重要な国が果たす役割は概して小さい。

まず米国について見てみよう。下のグラフは、不確実性全体に対する米国関連の不確実性の比率の世界平均(米国を除く)を示したものである。このグラフからは、過去数十年間に、米国関連の不確実性が世界全体の不確実性の主な源泉となってきたことが見て取れる。

例えば、2001年から2003年にかけては、米国関連の不確実性が他国における不確実性に約8%寄与し、世界的な不確実性が歴史的平均値を上回った分の約23%が米国関連の不確実性に由来していた。直近の4年間では、米国関連の不確実性が他国における不確実性に約13%寄与し、ピーク時にはそれが約30%に達した。そして、世界の不確実性が歴史的平均値を上回った分のうち、約20%が米国関連の不確実性に由来するものであった。

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イギリスとEUのブレグジット交渉に関連する不確実性は、この4年間で世界に大きな波及効果をもたらし、ピーク時には不確実性全体の30%以上を占めた。また、この期間に見られた世界的な不確実性の高まりに約11%寄与した。

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最後に、不確実性全体に対するシステム上重要なその他の国関連の不確実性の比率を見ると、カナダと中国、フランス、ドイツ、イタリア、そして日本を合わせても、世界に対して不確実性の波及効果をほとんど及ぼしていないことがわかる。その例外は近年の中国であるが、中国関連の不確実性の大半は米国との貿易摩擦に由来するものである。とはいえ、システム上重要なその他の国々から世界全体への不確実性の波及は限定的であるものの、ドイツからEU諸国や中国へ、あるいは日本から一部のアジア諸国へなど、地域的にはそうした国々の不確実性が重要な影響を及ぼしている。

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ヒテシュ・アヒアIMF調査局の上席調査官。住宅市場と予測評価を調査専門分野としている。以前には米州開発銀行に勤務し、コーノ・スール諸国の分析を補助した。ジョンズ・ホプキンス大学院で経済学を学んだ。

 

ニコラス・ブルームはスタンフォード大学の経済学教授で、全米経済研究所の生産性・イノベーション・起業家精神プログラムの共同ディレクターを務めている。マネジメント慣行と不確実性に研究の焦点を当てている。過去には、イギリス財務省とマッキンゼー・アンド・カンパニーに勤務した。ニューヨーク・タイムズ、ウォール・ストリート・ジャーナル、ファイナンシャル・タイムズといったメディア上で研究が取り上げられてきた。アメリカ芸術科学アカデミーのフェローで、アルフレッド・スローン・フェローシップ、アメリカ国立科学財団キャリア賞、ベルナセール賞、フリッシュ・メダルを授与されている。ケンブリッジ大学で学士号、オックスフォード大学で修士号、ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンで博士号を取得。

ダビデ・フルチェリIMFアジア太平洋局地域研究課の課長補佐。現職の前には調査局と中東中央アジア局に勤務した。IMFに勤務する前は、欧州中央銀行(ECB)財政政策局や経済協力開発機構(OECD)経済局マクロ経済分析課でエコノミストを務めた。マクロ経済や公共財政、国際マクロ経済、構造改革の分野の様々なトピックについて主要な学術誌や政策専門誌に幅広く執筆。エコノミスト、ファイナンシャル・タイムズ、ウォール・ストリート・ジャーナル、ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト、ビジネス・ウィークといったメディア(新聞・雑誌、オンライン)に研究が引用されてきた。イリノイ大学で経済学博士号を取得。

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