持続可能な開発目標 達成に向けて総力結集を

2021年4月29日

写真:Saiyna Bashir/IMF Photos

写真:Saiyna Bashir/IMF Photos

コロナ禍の影響は世界の貧困層にとって特に厳しいものとなった。新型コロナウイルス感染症によって、2020年だけをとってみても約1億人の人々が極度の貧困に陥ることになるかもしれない。一方で、国際連合は一部地域で貧困が過去30年間に見られなかった水準まで悪化しうると警鐘を鳴らしている。今般の危機を受けて、低所得途上国は人命と生活の糧を守るために緊急に必要な支出と、医療、教育、物理的インフラやその他必須のニーズのための長期的な投資との間でバランスを実現せねばならず、基本的な開発目標の達成に向けた進歩が阻害されている。

持続可能な開発目標(SDGs)の達成を支援するために、長期的な成長を加速させ、歳入動員を図り、民間投資を呼び込む政策面での選択肢を発展途上国が評価できる枠組みを私たちは新しい研究で提案している。国内における意欲的な改革をもってしても、大半の低所得途上国はこうした目標達成のための資金を確保できないだろう。これら諸国は、民間・政府の援助機関、国際金融機関など国際社会からの大規模かつ果敢な支援を必要としている。

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大幅な後退

2000年、世界のリーダーは貧困に終止符を打つため、あらゆる人々が豊かさと機会を享受できるよう前進するために動き始めた。こうした目標はミレニアム開発目標の中に位置づけられ、15年後、2030年を期限とする持続可能な開発目標に引き継がれた。持続可能な開発目標は、人々と地球が今も未来も平和と豊かさを実現できるようにするための構想図として共有されている。この目標達成のためには、人的資本と物理的資本の両方に相当の投資を行う必要がある。

最近まで、ばらつきはあるものの着実な発展が見られており、貧困と乳幼児死亡率の削減については成果が数字に表れていた。コロナ禍が勃発する前から、持続可能な開発目標を2030年までに達成できる見込みでない国は多かった。新型コロナウイルスは15,000万人を超える感染者と300万人以上の死者を発生させ、開発アジェンダを大きく揺るがした。感染症の結果、世界は深刻な景気後退に陥り、低所得途上国と先進国・地域の所得格差に見られてきた収斂の傾向が逆転した。

パンデミック当初から現在までに国際通貨基金(IMF)は86か国を対象として総額1,100億ドルにのぼる緊急融資を提供してきた。こうした融資の受け手のうち52か国が低所得国である。現時点までに設定された融資枠は合計で2,800億ドルとなり、予定されている特別引出権の一般配分(6,500億ドル)は債務負担を増加させることなく貧しい国々を助けることになるだろう。世界銀行などの開発パートナーも支援を提供してきた。しかし、それだけでは不十分だ。

私たちのペーパーでは、持続可能な開発目標のための資金確保など開発資金を動員する戦略を評価する一助となるように新しいマクロ経済ツールを策定している。持続可能かつ包摂的な経済成長の中核要素である5分野(医療、教育、道路、電気、上下水道)における社会開発と物理的資本への投資に焦点を当てている。こうした主要な開発分野が大半の政府予算において最大の支出先となっている。

この枠組みをカンボジア、ナイジェリア、パキスタン、ルワンダの4か国に私たちは当てはめてみた。これら諸国が持続可能な開発目標を2030年までに達成するには平均で、毎年、対GDP14%を超える資金調達を追加で行う必要がある。この規模はコロナ禍前の水準と比較すると約2.5%ポイントの増加だ。言い換えるならば、資金確保を拡大できなければ、新型コロナウイルスは持続可能な開発目標の達成に向けた前進にとって足かせとなり、これら4か国は最大で5年ほどの遅れを経験することになる。

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こうした後退は、コロナ禍の結果、経済に恒久的な後遺症が残ることになれば、さらに大きく悪化しうる。封鎖措置はこれまでに経済活動を大幅に停滞させており、人々は所得を失ったり、子どもが学校に行けなくなったりしている。私たちは、各国の人的資本損失が解消するまでに長い時間がかかり、そのため潜在的な成長力も長期的に悪影響を受けるため、1年あたり対GDP1.7%ポイントの開発資金が追加で必要になりうると試算している。

試練に立ち向かう

パンデミックが引き金となって、こうした困難な環境が新たに生じている今、持続可能な開発目標の達成に向けて意味ある進歩を実現するために、各国は何を願うことができるだろうか。

前進は簡単ではない。開発資金の確保と債務持続可能性の保持との間で、また、長期的な開発目標と即時対応すべき喫緊のニーズとの間で、くわえて、人々への投資とインフラ向上との間で、各国は適切なバランスを保つ必要があるだろう。コロナ禍対策という当面の課題にも向き合い続けることが求められる。しかし、同時に下記の事項を優先する非常に意欲的な改革アジェンダも追及していかなければならない。

  • 成長の促進

    成長を促す結果、好循環を生み出せることになる。経済全体を拡大させることで、開発のための追加資金を生み出すことができ、その結果さらに成長を刺激できる。マクロ経済安定性や制度の質、透明性、ガバナンス、金融包摂を向上させる努力など成長促進型の構造改革がしたがって必須となる。私たちの研究は、ナイジェリアとパキスタンの力強い経済成長がどのように2015年にかけて極度の貧困を削減する大きな一歩を可能にしたか明示している。人口の多い両国でそれ以降に停滞している成長を飛躍的に加速させることが重要となる。

  • 徴税能力の強化

    主要な開発目標の達成に必要となる基礎的な公的サービスをまかなう資金を生み出すためには税を徴収する能力の改善が必要となる。経験則的に、租税政策・税務行政の包括的な改革を通じて税の対GDP比を中期的に平均5%ポイント引き上げることは多くの発展途上国にとって思い切った目標だが実現可能な範囲だ。カンボジアが同様の目標をすでに実現している。コロナ禍が始まるまでの20年間に同国の税収を対GDP10%未満から同約25%まで増加させたのだ。

  • 支出の効率性向上

    発展途上国における公的投資の約半分が無駄になっている。経済運営の改善と透明性・ガバナンスの強化を同時に行って効率性を向上させることで、各国政府はより少ない資源でより多くを成し遂げることができる

  • 民間投資の誘発

ガバナンス改善と規制環境の強化によって制度的枠組みを向上させると、さらなる民間投資を呼び込む一助となるだろう。その成功例としてルワンダの水部門とエネルギー部門を見ると、2005年から2009年には実質皆無だった民間投資が2015年から2017年には対GDP比で1.5%強まで増加している。

こうした改革を同時に推進することで、持続可能な開発目標の達成に向けて大きな進歩を実現するために必要となる資金の最大半分を生み出せるかもしれない。しかし、こうした意欲的な改革プログラムをもってしても、これら国々単独の努力となった場合には、分析対象4か国中の3か国で開発目標の実現が10年以上遅れることになるだろうと私たちは試算している。

だからこそ国際社会がさらに力を入れることも重要となるのだ。開発パートナーが政府開発援助額を国民総所得の0.3%から国連が目標とする0.7%まで段階的に引き上げると、多くの低所得国が2030年までかその後すぐに開発目標を達成できる状態になりうる。現在国内の問題に注力しているだろう先進国・地域の政策担当者にとって、こうした支援を提供することは非常に困難な課題だ。しかし、開発を支えることは意義ある投資であり、どの人にとっても大きなメリットをもたらす可能性がある。ジョセフ・スティグリッツ氏の言葉を借りるなら、共有された豊かさだけが持続可能な真の豊かさなのだ。

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アブデルハク・センハジは現在、IMF財政局副局長。職務のひとつとして、低所得国向け業務を統括している。過去には財政に関するIMFの旗艦刊行物「財政モニター」の業務を管理した。財政局での勤務の前には、IMFで複数の要職を経験した。これまでに主著者・共著者として数々の政策ペーパーを執筆したほか、マサチューセッツ工科大学(MIT)出版局が出版した危機後の財政政策についての書籍を共同編集した。ブリュッセル大学の経済学士号と計量経済学修士号、ペンシルベニア大学の経済学博士号を取得。

ドーラ・ベネデクIMF財政局租税政策課の課長補佐。租税政策に関する調査研究を行い、同分野における能力開発を主導している。過去には、ベラルーシ、ボスニア・ヘルツェゴビナ担当のシニアデスクとして地域局で勤務し、融資プログラムや経済政策監視に参加した。IMFでの勤務前には、ハンガリーの財政評議会や財務省に務めた。中央ヨーロッパ大学で博士号を取得。

エドワード・ジェマイエルIMFアフリカ局のアドバイザー。現在は、チャド担当のミッションチーフ。過去には戦略政策審査局、中東中央アジア局で様々な職務に従事した。また、アフリカ、中東、中央アジア諸国への訪問団を統括した。IMFでの勤務前には、レバノン中央銀行に課長として勤めた。レバノンでは、ベイルート・アメリカン大学とセントジョセフ大学の講師として経済学と金融を教えていたこともある。

アレクサンダー・ティーマンIMF財政局財政運営2課の課長補佐。現職では、財政問題に関する国別業務や国際的な分析を通じてIMFのマクロ財政アジェンダに貢献してきた。IMFでは19年間にわたり勤務しており、サンマリノ担当のミッションチーフやトルコ担当シニアエコノミストを務めたほか、マケドニアのスコピエでの駐在代表の経験もある。くわえて、金融セクターのサーベイランスやストレステスト、国別のサーベイランスやプログラムも担当した。IMFでの勤務開始前には、オランダのアムステルダムにある自由大学とティンバーゲン・インスティテュートでミクロ経済学を教えたほか、オランダ銀行の調査局で勤務した。アムステルダム自由大学とティンバーゲン・インスティテュートからミクロ経済学の博士号を取得している。

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