公平なワクチン接種とコロナ禍収束に向けた新しい約束

2021年6月1日

イギリスでの主要7か国(G7)首脳会合を来週に控え、その準備を進める中で、コロナ禍をいかに収束させ、世界経済の回復を実現するかが最優先議題となっています。私たちは喫緊の課題に直面しているのです。

現在までに、保健危機に終止符を打たずして復興が広く行き渡ることはないと十分以上に明らかとなっています。両面においてワクチン接種を受ける機会が鍵となるのです。

ワクチン普及の面ではこれまでに素晴らしい進歩が見られました。記録的なスピードで何種類ものワクチンが科学者によって開発されました。ワクチンの研究開発や生産拡大を支援するために官民双方から異例の資金提供が行われました。しかし、豊かな国と貧しい国の間には危険な格差が残り続けています。

事実、富める国々の中には国内の人々を対象にした追加接種の実施をすでに議論している国もある一方で、コロナ対策の最前線で働く医療従事者を含め、発展途上国に暮らす人々の大半は初回のワクチン接種すら受けられていないのです。現在までに実施されたワクチン接種のうち低所得国で行われたものは1%に満たず、こうした国々でのワクチン普及が最も遅れています。

豊かな国々がワクチンを確保する一方で貧しい国々が取り残されており、コロナ禍は一層の二極化を見せつつあります。

不公平なワクチン供給の結果ですが、何百万もの人々が語られることなく新型コロナウイルスに対して脆弱な状態に置かれるだけではありません。より危険な変異株が生まれ世界中に拡散することにもなるのです。変異株の感染が広がる中、ワクチン接種プログラムで先を進む国々も厳格な公衆衛生措置の再導入を迫られてきました。また、一部には移動規制を施行した国もあります。そして、今も続くコロナ禍は経済の進む先に見られる格差拡大に拍車をかけており、その結果、どの人にとってもマイナス影響が生じるでしょう。

ですが、これは宿命ではありません。ですから、私たちは本日、国際的な支援を呼びかけています。世界中にワクチンを届けるために、強化された協調的な戦略を策定・実行できるよう、また、それを支える新たな資金を確保できるよう、新たな水準の国際支援が必要になっています。

国際通貨基金(IMF)が最近発表した提案では、職員が明確な目標、実践的な施策、捻出可能な費用を盛り込んだ計画を提示しています。この提案は世界保健機関(WHO)、また、ACTアクセラレータ(Access to COVID-19 Tools Acceleratorやワクチンを世界中に普及させるCOVAXプログラムにおける同機関の諸パートナーが継続している取り組みを土台にしており、それを支えるものです。また、世界銀行グループ世界貿易機関(WTOなど数多くの機関の成果も同様に反映しています。

試算から導き出された500億ドルの資金を用い、この計画は発展途上国におけるコロナ禍収束を早め、感染と死者の数を減らし、経済回復を加速させ、2025年までに世界GDPを約9兆ドル押し上げることになります。誰にとってもプラスとなる提案です。実現される成長加速分の約60%は新興市場国・発展途上国が享受することになりますが、残り40%は先進国にとっての利益となります。人々の健康や人命の面で生まれる計算不可能な利益を考慮せずとも、これだけの効果が得られるのです。

計画の内容をここで紹介します。第一に、より意欲的な目標を定め、さらに多くの人々を対象にワクチン接種より迅速に行うことです。WHOと同機関のCOVAXパートナーはどの国においても2021年末までに人口の約30%にワクチンを接種する目標を設定しています。しかし、他の協定や投資の急拡大によって、同年末のワクチン接種率を40%という水準まで高め、そして2022年前半には60%以上へと押し上げることができます。

これを実現するためには低所得国・中所得国向けの追加資金が必要となり、こうした資金のかなりの部分が無償資金援助や譲許的な融資によって提供されるべきです。ワクチン接種を至急拡大するためには、COVAX経由を含めて、各国のワクチン接種計画と時期を調整した形で、発展途上国へのワクチン寄付を速やかに行う必要があります。ワクチンの原材料や最終製品が国境を越えて自由に流通し、その供給が増えるように、貿易面での協力も求められています。

第二に、ワクチンの追加接種を必要とするかもしれない変異株の発生など悪化リスクに備えることです。つまり、ワクチン生産能力を少なくとも10億回分拡大するための投資を行ったり、生産能力が現在ほぼ存在しない地域での生産を開始し生産拠点を多様化させたり、技術やノウハウを共有したり、ゲノム・サーベイランスやサプライチェーン監視を強化したり、ウイルス変異や供給ショックに備えた危機管理計画を策定したりといった施策を講じるのです。

供給拡大を阻害している要因はすべて取り除かれるべきで、私たちはWTO加盟国に対し、知的財産権について実利的な解決策に向けた交渉を加速させるように呼びかけます。低所得国・中所得国の中には自前の生産能力を国内に持とうとして投資を行っている国もありますが、これは現在のコロナ禍を収束させるためだけでなく、次のパンデミックに備える上でも重要となります。

第三に、検査・追跡、医療用酸素、治療薬、公衆衛生施策を迅速に推進しつつ、ワクチン接種を拡大することです。また、ACTアクセラレータの取り組みも促進すべきです。WHO、国連児童基金(UNICEF)、世界銀行、Gaviアライアンスが140か国以上の発展途上国を対象にワクチン接種の準備態勢を評価し、ワクチン接種に備えるための現地支援と資金提供を行ってきています。

費用についてはどうでしょうか。500億ドルのうち、最低でも350億ドルを無償資金援助とすべきだとする論拠が十分にあります。G20諸国の政府は2021年にACTアクセラレータに約220億ドルの追加資金を提供する重要性を認識しており、こうした国々からは前向きな姿勢が感じられます。

2022年にワクチン供給を促進したり、また、検査、治療薬、サーベイランスを強化したりするためには、追加で約130億ドルの資金が必要となります。計画全体に必要な残りの約150億ドルですが、国際開発金融機関の支援を受けて各国政府が支出できるかもしれません。例えば、世界銀行はワクチン接種を目的とした120億ドルの融資制度を設けています。

この計画が成果を出すためには、「スピード」と「協調」という2種類の追加条件を満たす必要があります。

本計画では資金の手当て、ワクチン寄付、予防的な投資・計画のいずれについても、現実化するのが遅れるかもしれない単なる約束を交わすのではなく、「即座に実行」すべきだと呼びかけています。こうした要素を全部、なるべく早く利用可能にすることが重要です。

また、世界が協調的に行動を起こすことも求められます。その際に土台とすべきは調達と提供における完全な透明性です。この戦略の成功は、官民、国際金融機関、財団といった関係機関が足並みを揃えて動けるかに左右されます。

コロナ禍収束のために行う500億ドルの投資は、私たちが生きている間に行う最善の公的資金利用となる可能性があります。開発面で大きな効果を生み出し、世界中で成長を促進し、人々の福祉を向上させます。しかし、このチャンスを活かせる期間は駆け足で過ぎ去りつつあります。待っている時間が長いほど、人々の苦しみと経済損失の両面で代償が大きくなるでしょう。

本日、私たちは4つの国際機関を代表して、必要な資金の確保を推進し、ワクチンについて生産を強化しつつ国境を越えた原材料と最終製品の円滑な流通を確実化するために協力を進めるという新たな決意を表明します。これは、ワクチン普及を飛躍的に進展させて、医療対策と経済回復を支え、必要となっている希望を生み出すためです。

私たちの機関はこの希望を実際に実現するために、取り組みを進めています。IMFは加盟国の外貨準備と流動性を向上させるために異例の特別引出権(SDR)配分を実施する準備を行っています。WHOは戦略的準備対応計画(SPRP)とACTアクセラレータのパートナーシップのために至急必要となっている資金を確保できるように、財源の特定を進めています。一方で同機関の「新型コロナ技術アクセスプール(C-TAP)」がノウハウやテクノロジーの共有を行う動機づけを行っています。世界銀行グループは今年半ばまでに50か国以上でワクチン接種プロジェクトを開始できるようにしており、同グループの国際金融公社(IFC)が発展途上国を対象にしたワクチン供給を推進できるように民間部門の参画を促進しています。そしてWTOは本計画が成功できるように、自由なサプライチェーンの実現に取り組んでいます。

コロナ禍の収束は解決可能な問題ですが、世界的な行動が今すぐに求められています。一緒に力を合わせ、この危機を終わらせましょう。

 

クリスタリナ・ゲオルギエバは国際通貨基金(IMF)専務理事、テドロス・アダノム・ゲブレイェソスは世界保健機関(WHO)事務局長、デイビッド・マルパスは世界銀行グループ総裁、ンゴジ・オコンジョイウェアラは世界貿易機関(WTO)事務局長。

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