投資ファンドを通じてグリーンへの移行を促進する方法

写真: Fototocam by Getty Images

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2021年10月4日

 

よりグリーンな経済への移行を成功させるには、サステナブルな投資ファンドの規模拡大が必要

温室効果ガス排出量実質ゼロへと移行していくには、企業や政府による類例のない変革が求められ、また今後20年間に20兆ドルもの追加投資が必要となる。 グリーンな経済への移行を促進するためには強固な財政政策と、それを補完する幅広い規制や金融政策が必須だ。

「国際金融安定性報告書(GFSR)」の一部として発表されたIMFの最近の研究によれば、よりグリーンな経済へと移行するための資金調達と、気候変動の危険な影響を回避する一因として、50兆ドル規模の世界の投資ファンド業界、特に持続可能性(サステナビリティ)を重視したファンドが、重要な役割を果たしうる。

サステナブルなファンドは従来型ファンドとは異なり、投資収益を追求しつつも、持続可能性目標を掲げている。サステナブルファンドの分類は幅広いが、その中には環境に焦点を絞ったファンドがあり、さらなる細分類として、とりわけ気候変動緩和に関するファンドがある。

気候スチュワードシップと企業資金調達

投資ファンドが果たしうるポジティブな役割は、ファンドの企業部門への影響力と直結している。企業との直接的関与や議決権の代理行使を含むスチュワードシップを通じて、ファンドは持続可能性に関する企業の慣行を変えることができる。例を挙げると、今年初め、エクソンモービルの気候戦略を変えさせるための努力の一環としてアクティビスト投資家が同社取締役会でポストを獲得し、投資業界やエネルギー業界を驚かせた。

最新の「国際金融安定性報告書(GFSR)」では、気候関連の問題について、投資ファンドがいかに企業に対する議決権代理行使行動を強化しているかを示している。従来型投資ファンドは、2020年の気候関連の株主決議の約50%に賛成したが、これは2015年の約20%に比べると増加している。持続可能性を重視するファンドの実績はそれを上回り、そうした決議の約60%で賛成票を投じ、環境がテーマのファンドの場合は70%近くに達する。

IMF

さらに、サステナブルファンドへの投資の人気が高くなっていることは、持続可能性評価の高い企業がより多くの資本にアクセスできることを意味し、そうした企業の社債や株式の発行額が増加している。

依然小さ過ぎる規模

だが投資戦略において持続可能性が主流になってきているとはいっても、巨大な投資ファンド界では、サステナブル投資ファンドがまだごく一部に過ぎない。2020年末時点で、サステナビリティラベルが付いているファンドの総額は3.6兆ドルで、投資ファンドセクター全体のわずか7%だった。具体的に気候に焦点を当てるファンドは、その総額のうちわずか1,300億ドルを占めたに過ぎなかった。

それでも、最新の動向を見ると、サステナブル投資ファンドは従来型ファンドよりも急速に成長している。サステナブルファンドへの純流入額は2020年に顕著に増加し、気候がテーマのファンドの成長は一層速く、運用資産残高48%増という驚異的な伸びを示した。

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サステナブルファンドや気候ファンドを後押しするには

では、サステナブル投資ファンド部門の影響増大を支援するには、政策当局者は何ができるだろうか。

まず第1に、 企業と投資ファンド双方向けに、データ、情報開示、サステナブルな金融の分類を含む気候変動に関する情報の世界的なアーキテクチャを強化することだ。例えば、ファンドの分類システムを改善してファンドのラベル付けや分類法が統一的に運用・理解されるようにすれば、ファンドの投資戦略や関与、スチュワードシップに対する全般的なアプローチを示すのに役立つ。実際、特に市場の小売セグメントでは資金フローの促進要因としてラベルがますます重要になってきていることが、IMF分析で明らかになっている。

その実現に向けては、IMFは世界銀行や経済協力開発機構(OECD)と共に、そのような分類システムの原則を策定して既存の各種アプローチを調和させ、サステナブルファイナンス市場の発展を支援していくことを目指している。 

 

2に、「グリーンウォッシング(環境に配慮していると虚偽の主張をすること)を防止するための適切な規制監督、すなわち、ラベルがそのファンドの投資目的を公正に示すことを確実にしなければならない。そうすることで市場の信頼感が高まり、サステナブルファンドへの資金流入をさらに後押しすることになる。

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3に、そうした要素が揃った後には、グリーンへの移行を促進するファンドに預貯金を向かわせるためのツールが重要になる。例えば、年金プランや生命保険商品をはじめとする貯蓄型商品の税制上の優遇措置を受ける資格を気候がテーマのファンドへと拡大することで、炭素税など他の気候変動緩和策を補完することが可能だろう。

 

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ファビオ・マッシモ・ナタルッチは金融資本市場局副局長。国際金融安定性リスクに関するIMFの評価を示す「国際金融安定性報告書(GFSR)」の責任者を務めている。米連邦準備制度理事会(FRB)金融政策局上級局長補を経て現職。201610月から20176月まで米財務省国際金融安定・規制部門の副次官補を務めた。ニューヨーク大学経済学博士。

 

フェリックス・サンタイムIMF金融資本市場局国際金融安定性分析課で金融セクターのシニアエキスパートを務める。イギリス金融行為監督機構経済局での勤務経験あり。主な研究専門分野は実証的企業財務・金融仲介。イタリアのボッコーニ大学より金融学博士号、また、ボン大学より経済学の学位を取得。

 

ジェローム・ヴァンデンビュッシュIMF金融資本市場局の課長補佐。2004年にIMFでの勤務を開始。その後、各局に勤務し、直前は欧州局ドイツ担当。ハーバード大学経済学博士。