アフリカのワクチン生産支援は世界全体に恩恵をもたらす

写真: Bruno Deméocq/IMF Photos

写真: Bruno Deméocq/IMF Photos

2022年1月13日

信頼性が高く強靱なアフリカのワクチン生産能力は国際公共財であり、世shashinn
界の支援に値する。

新年の始まりは、思考を巡らし、再評価を行う良い機会である。パンデミックが3年目に突入する今も、私たちは健康危機とそれに伴う経済の不確実性への不安を拭い切れずにいる。

そこで私は、楽観的な気持ちを取り戻したいと願う人に対してシンプルな提言をしたい。

アフリカに目を向けよ

12月上旬、私は新型コロナウイルス感染症の大流行が始まって以降初めてアフリカに足を運び、セネガルとコンゴ民主共和国を訪ねる機会を得た。そこで目の当たりにしたのは、この地域が今回の危機を乗り越えるために発揮している発想力やエネルギー、起業家精神だった。

特にダカールにあるパスツール研究所への訪問は、そう感化させてくれた体験のひとつである。同研究所は感染症への取り組みにおいて既に世界トップクラスの指導的な機関であり、地域内と世界各地から専門家を引きつけ、訓練を実施してきた。現在は、研究所の職員たちがアフリカにおける新型コロナの喫緊の課題に対処する道を主導している最中だ。また、未来のパンデミックと闘い、より定期的な予防接種のニーズを満たすアフリカの能力を築き上げている。

ワクチンの生産製造能力を構築する上で、アフリカが必要な資金とツールを備えていることは不可欠である。アフリカ大陸全土の新型コロナワクチン接種率が今も10%未満で伸び悩んでいる現状を踏まえれば、このニーズは特に切迫していると言えよう。アフリカが感染第4波に直面する中で出現したオミクロン株は、アフリカが今回のパンデミックと闘い、将来的な医療ニーズに対処する上で、世界規模の協力が必要であることを改めて考えさせる。

IMF

直近のニーズを満たす

パスツール研究所の多大な努力にもかかわらず、アフリカは現在も新型コロナワクチンの輸入と寄付に依存し続けている。緊急の最優先事項は、COVAXや「アフリカ・ワクチン入手トラスト(AVAT)などを通じて、ワクチン供給の予測可能性を保証することである。さらに、ワクチンの重要性を繰り返し説明し、誤情報やワクチン躊躇を払拭する啓蒙活動を行うなどして、アフリカの保健システムがワクチン到着後迅速に地元住民へワクチン接種を行える体制を整えることも必要になるだろう。ワクチン以外にも、同地域は検査、治療法、防護具へのアクセスを必要としている。

IMF職員は昨年にパンデミック収束に向けた計画を提案し、2021年末までにあらゆる国で人口の40%2022年半ばまでに同70%[1]にワクチンを接種させる目標を掲げた。接種率の進展には目覚ましいものがあるが、世界にはまだ改善の余地がある。ワクチンその他のツールの分配では、憂慮すべきほどの二極化が進んでいるからだ。例えば、アフリカでは2021年の接種率目標40%を達成できた国は7か国しかなく、多くの国では70%という目標達成に暗雲が漂っている。

これら全てを実現するには、国際社会による協働と支援の強化が必須である。例えば、ACTアクセラレータ(Access to COVID-19 Tools Accelerator)は大部分がアフリカを対象としているため、不足資金である230億ドルを拠出すれば、歓迎すべき第一歩になるだろう。また、ワクチンの公平性を高めるには供給量の問題に対処するだけでは不十分であり、各国は最終地点へのラストマイル配送を強化するための支援も必要としている。

端的に言えば、この国際支援は慈善事業ではなく、賜物は国際公共財である。今では周知の事実となったが、全ての人が安全になるまでは、誰も安全ではないのだ。

IMF

未来のために強靭性を構築する

ただし、喫緊のニーズへの対応に尽力する代わりに未来のニーズを犠牲にすることがあってはならない。未来に向けた強靭性の強化もまた優先課題であり、その中には新型コロナウイルスを始め、将来生じる恐れのあるほかの疾病に対してアフリカが自ら対処する能力も含まれる。例えば、予測可能で信頼できるワクチン供給が欠如しているために、保健当局は突然のワクチン受け入れに対応することをしばし余儀なくされており、こうしたワクチンは有効期限が限られがちであるため、既に逼迫している保健システムの配送物流に大きな混乱を招いている。要するに、アフリカが本来の強靭性を備えるためには、国際社会の度重なる寛大な援助に依存してはならなず、現地製造能力の拡大と域内サプライチェーンの強化が求められているのだ。

アフリカには域内でワクチン接種を完結させる仕組みが不可欠であり、これは実現可能である。

ワクチン製造は専門的な設備、材料、保管施設、技能労働者を要する高度な事業である。しかし、こうした事業はアフリカでは実施できないと主張する者がいれば、それは然るべき注意を払っていない証だ。

ダカールのパスツール研究所の活動からは、疾病に対する世界的な取り組みにおけるアフリカの野心を垣間見ることができるだろう。米国、欧州連合(EU)、国際的な財団の資金援助に加えて、セネガルが今般のSDR配分の一部を上手く活用したことで、新しい製造施設が既に建設中である。この施設が完成すれば、アフリカ大陸で最初の一貫生産工場のひとつとなり、アフリカの新型コロナや他疾病のワクチン供給を担う極めて重要な拠点になる可能性を秘めている。

さらに、パスツール研究所はアフリカ唯一の中核的な研究拠点では決してなく、アフリカを跨ぐ目覚ましい保健・科学コミュニティの一員である。同コミュニティは世界の保健に貴重な貢献をしており、直近の例を挙げれば、オミクロン株を発見し、ゲノム解析を行った。現在、12か所の稼働中または建設中の生産施設がアフリカ6か国(アルジェリア、エジプト、モロッコ、ルワンダ、セネガル、南アフリカ)に存在し、広範な新型コロナワクチンの生産を担うと見込まれている。

国際公共財

新年について思案を重ねると、信頼性が高く強靱なワクチン生産能力をアフリカに確保することは世界の支援に値する国際公共財であることが明白となる。現下の危機や将来のパンデミックにおいて、アフリカの成功は私たち全員の命運を握っているのだ。

私はアフリカにその力があると固く信じている。国際社会には、科学における国境を越えた協働を強化する力と義務があり、技術移転のインセンティブを高めることによって、ワクチンや人命を救うほかの医療ツールの生産拠点を上手く分散すべきである。

ルイ・パスツールはかつて「科学に国境はない。なぜなら知識は人類の遺産であり、世界を照らす灯火だからだ」と述べた。パスツールのビジョンの英知が今ほど切実に感じられる時代はない。私たち皆が自己の責務を果たすことで、私たちの知識から得られた成果を人類全体のために迅速かつ公平に分かち合うべきである。

 

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クリスタリナ・ゲオルギエバ



[1] 当初の接種率目標は2022年半ばで60%だったが、新変異株が猛威を振るっていることを受けて70%へと上方修正された。