大規模な繁栄と経済のダイナミズム
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- 大規模な繁栄と経済のダイナミズム
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- Authors: EDMUND PHELPS
- Published: September 12, 2024
要旨と主張
- 近代的な価値観(個人主義、生気論、自己表現)が台頭した国々では1890年頃から顕著な技術革新、経済成長、人類の進歩が生じ、大規模な繁栄がもたらされたが、1970年頃にイノベーションが鈍化した。
- 高いダイナミズムとは「国民がイノベーションを希求し、それを実現する能力」を指し、これは草の根からの創造性と非金銭的報酬(達成感、満足度)を促す近代的価値観に支えられている。
- 近代的価値観の衰退がイノベーションとその報いの減少要因になっている可能性が示唆される。
近代的価値観の定義と歴史的源流
- 個人主義:独立性と自己実現の志向。起源はルネサンスに遡り、ジョヴァンニ・ピコ・デッラ・ミランドラ、マルティン・ルター、ラルフ・ウォルドー・エマーソン、ジョージ・エリオットなどの思想が影響。
- 生気論:行動的に世界に働きかけ、発見や未知への冒険を楽しむ精神。ヘーゲルやベンヴェヌート・チェッリーニ、セルバンテス、アンリ・ベルクソンらの表現で検討。
- 自己表現:想像力や創造力を通じて自分を表す喜び、新しいものを創造することでの自己理解と啓発。
実証的証拠と主要統計
- 自国発イノベーション率(共著者ライチョ・ボジロフの計算、歴史的比較):
- 米国:1.02
- 英国:0.76
- フィンランド:0.55
- ドイツ:0.42
- イタリア:0.40
- フランス:0.32
- OECD加盟20か国の分析(共著者ギルフィ・ゾエガ):
- 近代的な価値観を強く持つ国の例:米国、アイルランド、オーストラリア、デンマーク
- それに比べやや少ない国の例:スイス、オーストリア、英国、フィンランド、イタリア
- 価値観と経済パフォーマンスの関連(ゾエガの発見):
- プラスの影響を与える要素:率先して行動する意欲、仕事で成果を上げたいとの願望、子どもたちに自立を教えること、競争を受け入れること
- 減少要因:子どもたちに服従を教えること
- 測定指標:TFP(全要素生産性)の伸び、仕事の満足度、男性の労働力参加、雇用
- TFPの20年間累積成長率(ボジロフの計算):
- 1919年~1939年:0.381
- 1950年~1970年:0.446
- 1970年~1990年:0.243
- 1990年~2010年:0.302
- 最近のイノベーションの地理的集中と経済効果:
- AIやEVなどの画期的進歩は存在するが、その多くはシリコンバレーに集中している。
- MITのダロン・アセモグルの見解(本文引用):今後10年間でAIが米国の経済生産にもたらす効果は1%に満たないだろう。
イノベーション喪失の経済的・社会的コスト
- 経済的コスト:
- 賃金上昇率がほぼ停滞している。
- 投下資本に見合う収益が伴わず、多くの資本形成が抑制されている。
- 実質金利の低下に伴い、資産価格(住宅など)は1973年頃から2019年にかけて上昇し、住宅取得能力は最低レベルに低下した。
- 社会的コスト:
- 米国の仕事の満足度は1972年以降低下している(一般社会調査の世帯データ)。
- 「絶望の蔓延」を示すデータ(アン・ケース、アンガス・デイトン著『Deaths of Despair and the Future of Capitalism』)との関連。
提言と政策的含意
- 近代的価値観の回復とダイナミズムの強化が不可欠:
- 草の根レベルから大規模な繁栄を実感できるような、ダイナミズムを高めた経済設計が経済学者に求められている。
- 機関・組織の焦点変更の例:
- アスペン経済戦略グループは研究の焦点を「回復力」から「ダイナミズムの強化」に変更している(本文の言及)。
- 近代的価値観の復権に向けた方策(本文の主旨に基づく示唆):
- 個人の率先行動や仕事での達成を促す教育・文化の強化。
- 競争と自立を奨励する社会的規範の育成。
- 草の根イノベーションを支援する制度・環境整備。
出典: エドマンド・フェルプス「大規模な繁栄と経済のダイナミズム」、F&D セレクト記事、2024年9月。