
地政学的緊張の高まりを受け、防衛支出が増加している。本章では、特に新興市場と発展途上国において、防衛支出の急増期がより頻繁に発生するようになっていることを明らかにしている。典型的な急増期では、2年半の間に国防費がGDP比で約2.7%ポイント増加し、その約3分の2が財政赤字によって賄われる。防衛費の拡大は短期的には経済活動を活性化させ得る一方、一時的にインフレを加速させ、中期的には重大な課題をもたらすことになる。財政赤字は対GDP比で約2.6ポイント悪化し、公的債務は3年以内に約7ポイント増加し、対外収支は悪化する。戦時中の防衛費急増はとりわけコストが大きく、公的債務が約14ポイント急増し、社会支出が減少する。防衛支出の財政乗数は平均すると1に近いものの、支出をどのように維持し、財源をどのように確保し、支出をどのように配分しているのか、また、装備品をどの程度輸入しているかによって効果が大きく異なる。

武力紛争は、甚大な人的被害だけでなく、マクロ経済にも深刻な影響を及ぼす。本章では、第二次世界大戦後の紛争に関する世界のデータを活用し、紛争が経済に及ぼす影響を分析する。分析によると、紛争は戦闘が起きている経済圏において、大きく持続的なGDP損失につながり、その損失は金融危機や大規模な自然災害を上回る。さらに他国へもかなりの影響が及ぶ。こうした損失は、金融、財政、対外部門にわたる深刻なマクロ経済上のトレードオフにつながり、長期にわたり傷跡を残すことになる。景気回復は遅く、ばらつきがあり、持続的な平和の確保に大きくかかっている。平和が維持されている場合でも、戦時中の損失を相殺できるほどの回復はない。回復は主に労働力の復帰によって支えられる一方、資本と生産性は低迷したままである。早期のマクロ経済の安定化、債務再編、国際的な支援、制度再建に向けた国内改革が不可欠である。不確実性を低減し、資本ストックを再構築する包括的な政策パッケージは、より力強い回復に向けた外部経済をもたらす。

2025年10月

2026年3月
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