WEO
世界経済では幾つかの前向きな展開があったが、ブレグジットは新たな不確実性の波を生んだ。(写真: Demos Vrublevski)

IMF、世界経済成長予測をブレグジットで 下方修正、成長見通しのリスクを警告

2016年7月19日

  • ブレグジット(英国の欧州連合離脱)は経済、政治、制度の各面で大きな不確実性をもたらしている
  • 2017年の世界経済成長予測は、0.1%下方修正し3.4%に
  • ブレグジットが決定されなければ、世界経済成長予測は上方修正されていたであろう

国際通貨基金(IMF)は、2016年と2017年の世界経済成長率予測を下方修正した。企業及び消費者の心理が既に脆弱だったところに、予想に反した英国の欧州連合離脱(ブレグジット)を決定した国民投票が不確実性の波を生んでいるためだ。

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本日発表された「IMF世界経済成長見通し(WEO)」の改訂見通しは「ブレグジットを選択した英国民投票結果は経済、政治、制度の各面で不確実性の大幅な増大を含意し、それは欧州先進諸国・地域を中心にマイナスのマクロ経済的結果をもたらすことが予想される」とした。

IMFのチーフエコノミスト兼経済顧問であるモーリス・オブストフェルドは「ブレグジットのために我々の作業が複雑になった」と指摘した。同報告書は、これはまだ進行中のため、その潜在的影響を数量化することは大変難しいとしている。

6月23日に実施されたこの英国民投票によって最も打撃を受けるのは政権交代がもたらされた英国と、欧州となる。この結果、既に低調だった世界経済成長は悪影響を受け、政策担当者に銀行システムの強化と急務である構造改革の実行を迫っている。

特に英国とEUの政策担当者が、欧州や他の地域の成長をさらに阻害し得る不確実性を抑制する上で主要な役割を負う、とIMFは考えている。そして、これらの政策担当者に「従来の英国とEU間の貿易による利益を最大限維持できるようなブレグジット後の貿易及び金融での新たな関係への円滑で予見しやすい移行」を達成するようIMFは求めている。

世界経済成長は依然抑制されており、英国の成長に打撃

IMFは世界経済の本年の成長率を3.1%、2017年を3.4%と予想する(表を参照)。この予測は両年とも4月のWEO予想値から0.1パーセントポイント下方修正したものだ。

英国の今年の予想成長率は1.7%で、4月時点の予想値から0.2パーセントポイント下方修正した。来年については1.3%成長へと減速、4月時点の予想からは0.9パーセントポイント低く、先進国中最大の下方修正となった。ユーロ圏については今年の成長率を0.1パーセントポイント上方修正して1.6%、来年については0.2パーセントポイント下方修正して1.4%とした。

もしブレグジットが選択されなかったら、IMFは今年の成長率予想を概ね据え置く方向であった。ユーロ圏地域の経済状況が予想を上回るパフォーマンスで、米国の期待外れな第1四半期の成長を相殺していたためだ。また、2017年についても世界の成長率をわずか0.1パーセントポイントながら上方修正する予定であった。ブラジルとロシアを中心に幾つかの大きな新興市場国経済の状況が改善していたためだ。

今回の改訂見通しは諸影響が「悪性ではない」との仮定の下に算出されている。つまり英国国民投票結果を受けた不確実性が徐々に減少、EUも英国も経済的障壁の大きな増加を防ぐことに成功、金融市場への影響も限定されるとの仮定だ。

マイナス影響の確率― 2つのシナリオ

とはいえIMFは「より悪影響が出る可能性は間違いなくある」と警告している。オブストフェルドは「ブレグジットの真の影響は徐々に広がり、経済と政治面に不確実性をもたらす」と述べ「そして今度は、追加された不確実性が重なりあい金融市場の負のショックへの反応が増幅することになるかもしれない」と続けた。

第一の「下方」シナリオは、来年の前半まで英国や残りの世界の各地域でも現在の想定より金融環境が引き締まり、消費者心理も弱まって、英国の金融サービスの一部がユーロ圏へ徐々に移転するというものだ。その結果は世界成長が今年も来年もさらに減速するというものだ。

第二の「更なる下方」シナリオは、特に欧州を中心として金融ストレスが激化、金融環境のより強い引き締まり、そして信認も一層冷え込むというものだ。英国とEU間の貿易が世界貿易機関(WTO)規則に準拠したものに戻ることになる。このシナリオでは、2017年末まで「世界経済はより大きな減速を経験」し、それは先進諸国・地域でより顕著となる。

他の先進、新興市場国見通し

ブレグジットの影響は、日本に出そうだ。円高が進み成長を抑制するからだ。今回の改訂では同国の今年の成長率を4月時点の予想から0.2パーセントポイント引き下げて0.3%とした。世界第3位の経済大国である日本の来年については、消費税引き上げの延期が決定されたため4月時点より0.2パーセントポイント引き上げて0.1%と予想した。

米国については第1四半期の成長が予想より低かったため、2016年については4月時点の予想より0.2パーセントポイント引き下げて2.2%とした。来年の成長率については4月予想を据え置き2.5%とした。

中国については今年の予想を4月時点より0.1パーセントポイント引き上げて6.6%、2017年については6.2%と前回予想を据え置いた。世界第2位の経済大国である中国へのブレグジットの影響はあまりなさそうだ。中英間の貿易や金融での連関は限定的なためだ。

ただ、IMFは「欧州連合の成長が相当影響されれば、中国への悪影響も実体を伴うものとなる可能性がある」と指摘した。

他の新興市場及び途上国・地域の経済見通しはさまざまで、4月時点と比べ概ね変化はない。とはいえ、新興市場国・地域グループのプラスは、低所得国・地域グループのマイナスと一致している。実際、低所得諸国は2016年について大きな下方修正があった。それは主にナイジェリアの経済縮小とアンゴラとガボンの見通しの悪化によるものだ。

世界に広がるリスク

IMFは経済見通しへの他のリスクも指摘しており、それらはブレグジットによってさらに悪化する可能性がある。具体的には「特にイタリアとポルトガルを中心とした欧州の銀行システムの未解決のままの以前から問題」である。

「金融市場の混乱が長引き、世界的なリスク回避が強まれば、特に脆弱な経済の国々での銀行の健全性の問題の激化などを通じて厳しいマクロ経済的影響が出る可能性がある」と改訂見通しは指摘した。

IMFはまた、「先進諸国・地域の政治的亀裂が長期的な構造問題と難民問題への解決に向けた努力の障害となる恐れ」があり、貿易での「保護主義的政策への移行は明白な危険」であるとした。

また、地政学的緊張とテロリズムは中東諸国を中心に複数の国の経済見通しを大きく悪化させており、国境を超えたさらなる影響も伴っている。

政策的含意―成長の加速とさらなる安定が必要

見通しの変化の政策に対して持つ意味についてIMFは、先進国・地域では「短期的な需要底上げ策と中期的な成長を再活性化する構造改革策の組み合わせが不可欠であり続ける」と指摘した。それは先進国・地域が「経済資源の大きな余剰と弱いインフレ見通し」に苦しみ続けるためだ。

IMFはまた、先進国・地域に対し経済浮揚のために金融政策に過度に依存せず、多様な政策手段の相乗効果を利用すべきと促した。

改訂見通しは「政策余地のある債権国では特にそうであるが、国内需要を支援する政策を強化することは世界の不均衡を削減する一助となる一方、より力強い世界成長の実現に貢献するだろう」とした。

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