世界経済の不均衡是正 前進あるも課題が残る
IMF Blog, July 17, 2019
Source details
- Canonical URL
- 世界経済の不均衡是正 前進あるも課題が残る
Other formats
Bibliographic details
- Authors: Gita Gopinath
- Published: July 17, 2019
概要・主要な所見
- 世界金融危機後、経常収支の黒字額と赤字額の合計は対世界GDP比で2007年の約6%から2013年の約3.5%へと縮小した。
- その後の縮小は小幅にとどまり、2018年には同3%となった。
- 不均衡の中心は新興国から先進国へと移行している。
- 中国では2018年に経常収支がファンダメンタルズと大方一致する水準となった。
- 貿易制限措置や貿易をめぐる緊張は、現時点では世界的な経常収支の不均衡に大きな影響を及ぼしていないが、投資と経済成長に対する負の影響を通じてリスクを高めている。
- 世界の対外ストック不均衡(対外純資産と対外純負債の合計)は拡大を続け、対世界GDP比40%と過去最高に達している。
- 対世界GDP比でのストック不均衡は1990年代初頭に比べて4倍となっている。
- 一部の国では、近年に政府・民間の対外債務総額が急速に拡大していることが観察される。
対外不均衡に伴うリスク
- 経常収支の黒字や赤字が必ずしも問題ではない理由として、若く急成長する経済が赤字を計上し先進国からの借入で成長するケースなどの合理性があることを指摘。
- 短期間での過度の対外借入は、資本フローの急停止に対する脆弱性を生じさせ、債権国への外資産喪失という形で波及する可能性がある。
- IMFは2018年に、経常収支の黒字・赤字全体の約35-45%が過剰であったと評価している。
- 経常収支の過剰な黒字はユーロ圏(主にドイツとオランダ)と比較的小規模なアジア先進国(韓国・シンガポール)に集中している。
- 経常収支の過剰な赤字は英国や米国、そして一部の新興市場国(アルゼンチン・インドネシア)に集中している。
- 経常収支赤字と債務は大半が準備通貨を発行する先進国に集中しており、短期的にはリスクは概して封じ込められているものの、全ての国が安全であるわけではない。
- 中期的には、是正政策がなければ貿易をめぐる緊張が持続し、対外債務のさらなる拡大はコストの大きい破壊的な調整を誘発し世界に波及する恐れがある。
不均衡是正の方法(政策提言)
- 多くの国が完全雇用に近く財政余地が限られるため、国内・対外双方の目標を達成するための入念な政策調整が必要。
- 過剰な経常収支赤字を抱える国(例:英国、米国)
- 成長に配慮した財政健全化策を採用・継続することが望ましい。
- 過剰な経常収支黒字を抱える国(例:ドイツ、韓国)
- 公共インフラ投資や潜在成長力を押し上げるために財政余地を活用すべきである。
- 段階的で個別事情を勘案した構造政策の重要性
- 参入障壁の除去や社会的セーフティネットの強化は投資を促進し過度な貯蓄を抑制することで、過度な黒字国の不均衡是正を支える。
- 生産性や労働者のスキル基盤向上は、過度な赤字国が輸出を増やす上で適切である。
- 中国や日本のように対外ポジションがファンダメンタルズと大方一致している経済でも、国内不均衡に対処し対外不均衡の復活を防ぐ政策(例:サービス分野での競争促進)が求められる。
為替と国際協調
- 為替レートの柔軟性は対外調整を進める上で引き続き鍵となる。
- ただし、グローバル・バリューチェーンへの統合度や米ドル等の支配的通貨による貿易決済の程度など、国際貿易の特徴が為替の役割を短期的に制限する可能性がある。
- 為替の柔軟性の便益を確保するため、融資へのアクセス改善や輸送インフラ強化など輸出面での政策によって支援される必要があるかもしれない。
- より一般的には、どの国も貿易を歪める政策を控えるべきであり、代わりに黒字国と赤字国は多国間貿易制度のルールを強化し国際貿易の再活性化に取り組むべきである。75年以上にわたって世界経済に役立ってきた多国間貿易制度の維持が提起されている。
ギータ・ゴピナート, 2019年7月17日