新型コロナウイルス流行中の通貨と金融の安定
IMF Blog, March 16, 2020
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- 新型コロナウイルス流行中の通貨と金融の安定
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Bibliographic details
- Authors: Tobias Adrian
- Published: March 16, 2020
概要
- 新型コロナウイルスの世界的拡大は、人的被害のみならず経済見通しと下振れリスクに大きな不確実性をもたらしている。
- 不確実性の急拡大は、経済成長と金融安定性の双方をリスクにさらす可能性がある。
- 的を絞った経済政策と財政措置に加え、通貨と金融の安定性を支える適切な政策が世界経済支援に極めて重要である。
不確実性の高まりと金融環境のタイト化(所見)
- 株式市場のボラティリティを始めとする不確実性指標が世界各地で急上昇している。
- 米国やユーロ圏、日本など主要国の株式市場が急落し、インプライドボラティリティが上昇している。
- 投資家は相対的に高リスク資産から安全資産へと資産配分を見直しており、信用スプレッドが拡大している。
- 高利回り債や新興国債券が特に大きな影響を受けている。
- 新興市場国やフロンティア市場国の米ドル建て債券のスプレッドが急拡大した。
- 結果として、企業の株式・債券市場での資金調達コストが高まり、金融環境は著しくタイト化している。
- 金融環境の急激なタイト化は、企業の投資抑制や個人の消費先送りを通じて経済の重しとなる。
金融政策による対応(所見・勧告)
- インフレ期待が低いことは、金融政策が現在の局面で重要な役割を果たすことを意味する。
- 中央銀行は流動性供給や金利の引き下げを通じて金融環境のタイト化を緩和し、起こりかねない信用収縮を防止するために早急に行動すべきである。
- 市場は中央銀行による積極的な金融緩和を予測しており、世界の多くの国々でソブリン債の利回りが急低下したことに表れている。
- 各国が足並みを揃えて行動することで金融政策の効力が増すため、国際協調が重要である。
- 国内外で十分な流動性を確保することは、金融環境の急速なタイト化を反転させるための必須条件である。
- 市場機能が流動性圧力で脅かされる場合、中央銀行による緊急流動性の供給介入が必要になる可能性がある。
- 経済・金融環境がさらに悪化する場合、政策担当者は過去の金融危機で整備された幅広いツールキットを活用できる。
- 例として、米連邦準備制度が2009年に創設したターム物資産担保証券貸出制度(TALF)。
- イングランド銀行と英国財務省が導入した融資のための資金調達スキーム(FLS)など、低利資金供給による家計・中小企業・非金融企業向けの融資拡大策。
- その他の国でも一部セクターに対する借入コスト引き下げを目的とした各種融資制度が整備されている。
金融安定性政策(所見・勧告)
- 金利の急低下と経済見通しの不安は、銀行の健全性に関する投資家の懸念を高めている。
- 銀行株価は急落し、銀行債券価格にも圧力がかかっている。
- これは潜在的損失の恐れを反映している可能性が高い。
- 朗報として、2008年の金融危機以前と比べて概して銀行の耐性は高まっている。
- 銀行は資本と流動性の面でクッションが大きくなっているため、銀行セクター由来の金融安定性リスクは以前よりかなり低くなっている。
- 監督当局の役割と対応:
- 監督当局は銀行の動向を注視すべきである。
- 感染症流行の「一時的な」性質を踏まえ、銀行は最も影響を受けている借り手に対する融資条件の「一時的な」見直しを検討できる。
- 監督当局は、そうした行動が一時的かつ透明性の高いものとなるよう銀行と緊密に協力する必要がある。
- 目標は銀行の財務健全性と金融セクター全体の透明性の保全である。
- 銀行システム外の脅威への警戒:
- 資産運用会社と上場投資信託に注意を払う必要がある。
- 投資家による高リスク資産の急な現金化が生じうるためである。
- 市場機能と流動性:
- 資産価格の変動幅拡大は市場と金融機関に圧力を与える。
- 多くの市場で流動性がタイト化しているという事例証拠がある。
- 非米系銀行・企業が米ドルでの借り入れを行っている米ドル建て市場で緊張が見られる。
結論と政策的提言(要点)
- 通貨と金融の安定性を維持するため、政策担当者は断固たる行動をとり、世界レベルで協力する必要がある。
- 「最善を願いながらも、最悪に備える」という方針が重要。
- IMFは、この危機が一時的であることを願いつつ、危機に直面する加盟国を必要に応じて支援する。
著者情報
- トビアス・エイドリアンはIMF金融顧問兼金融資本市場局長。
- IMFの金融部門サーベイランスや金融政策・マクロプルーデンス政策、金融規制、債務管理、資本市場に関する業務を統括し、加盟国で実施するIMFの能力開発活動も統括している。
- 経歴の一部:ニューヨーク連銀上級副総裁と調査統計グループ副グループ長を経て現職。プリンストン大学およびニューヨーク大学で教鞭をとった経験がある。学術誌多数掲載。学位等:マサチューセッツ工科大学博士、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス修士、フランクフルト大学ディプロマ、パリ・ドフィーヌ大学修士。バート・ホンブルクのフンボルト高校卒業(文学・数学専攻)。
出典: IMF ブログ記事「新型コロナウイルス流行中の通貨と金融の安定」