「大封鎖」 大恐慌以来最悪の景気後退
IMF Blog, April 14, 2020
Source details
- Canonical URL
- 「大封鎖」 大恐慌以来最悪の景気後退
Other formats
Bibliographic details
- Authors: Gita Gopinath
- Published: April 14, 2020
危機の性質(要旨)
- 新型コロナウイルスの世界的流行(パンデミック)により、多数の人命喪失とともに各国が隔離・社会的距離確保の対策を実施し、世界は「大封鎖」と呼べる状況に置かれている。
- 経済活動はこれまで経験したことがない規模と速度で落ち込んでいる。
- 危機の行方は、ウイルスの疫学的特性、感染拡大防止措置の有効性、治療法やワクチンの開発に大きく依存しており予測が困難である。
- 多くの国が公衆衛生の危機、金融危機、一次産品の急落といった多重的危機に同時に直面しており、これらは複雑に作用している。
- 政策当局者は家庭、企業、金融市場に先例のない支援を提供しているが、封鎖終了後の経済構造の変化については不透明感が強い。
IMFのベースライン予測(前提:感染は第2四半期にピーク、年後半に徐々に収束)
- 2020年の世界経済成長率:マイナス3%(「世界経済見通し(WEO)」4月予測)。
- 2020年1月時点の予測からの下方修正幅:6.3%ポイント。
- この結果、「大封鎖」は世界金融危機をはるかに上回る、大恐慌以来最悪の景気後退となる。
- 2021年の世界経済成長率(回復想定):5.8%(パンデミックが2020年後半に収束し、政策行動が効果を発揮した場合)。
- 2020年から2021年にかけての世界GDPの合計損失の可能性:約9兆ドル(これは日本とドイツのGDPの合計を上回る)。
- 先進国・地域の成長率(2020年):マイナス6.1%。
- 新興市場国・発展途上国の成長率(2020年、全体):マイナス1%(中国を除くとマイナス2.2%)。
- 1人当たりの所得は170か国以上で減少すると予測される。
- 先進国・地域と新興市場国・発展途上国のいずれも、2021年には部分的回復が予想されるが、流行前にIMFが予測した2021年の見通しを下回る水準にとどまる見込み。
より厳しい代替シナリオ(代替ケースの影響)
- 世界的流行が今年後半に勢いを失わず、感染拡大防止措置が長引き、金融環境が悪化し、グローバルなサプライチェーンがさらに崩壊する可能性がある。
- その場合、世界GDPの落ち込みはさらに大きくなる。
- パンデミックが2020年のもっと遅い時期まで続けばGDPは今年さらに3%ベースラインより低くなる。
- パンデミックが2021年に入っても続けば来年は8%ベースラインより低くなる。
政策対応(実施中の措置と指針)
- 外出禁止や封鎖は医療システムを守り経済再開を可能にするため、命を救うことと生活を守ることは二者択一ではない。各国は医療システムへの十分な支出と広範囲な検査を継続し、医療物資への貿易制限を控えるべきである。
- 治療薬やワクチンが開発された際には、豊かな国も貧しい国も同様に直ちに利用できるよう国際協力が必要である。
- 経済が停止している間の優先課題:市民の基本的ニーズの保障、感染症急性期後の企業活動回復支援。
- 多くの政策当局者が実行している具体的措置:
- 債務保証
- 流動性対策
- 債務の支払猶予
- 失業保険の拡充
- 社会給付の拡充
- 減税
これらは家計や企業の命綱となっている。
- 支援は感染症封じ込めのフェーズを通じて継続すべきである(投資抑制や雇用喪失の長期化を防ぐため)。
- 回復への備え:封じ込め措置が成功した後、需要支援、企業の雇用促進、民間・公共部門のバランスシート修復へ迅速に政策の軸足を移す必要がある。財政余地のある国々が協調的に財政刺激策を実施すれば、すべての国がより大きな恩恵を享受できる。債務の支払猶予や再編は回復フェーズでも継続する必要があるかもしれない。
- 多国間協調の重要性:発展途上国が必要な支出を実行できるよう、二国間債務の債権国や国際金融機関は譲許的融資、無償援助、債務救済を実施すべきである。主要な中央銀行間スワップラインの創設および稼働は国際流動性不足の緩和に役立っており、さらなる拡大が必要となる場合がある。
- 脱グローバリゼーションの進行を避ける協調的努力が求められる(生産性の損失と景気回復の阻害を防ぐため)。
IMFの対応
- IMFは脆弱な国々を支えるため、迅速に融資実行が可能な緊急融資制度や、最貧国の加盟国を対象とした債務返済免除を通じて、機関が持つ1兆ドルの融資財源を積極的に駆使している。
- IMFは債権国政府にも同様の取組を呼びかけている。
- 主要な中央銀行のスワップラインは国際流動性不足の緩和に役立ってきたが、これをさらに多くの国々に拡大する必要があるかもしれない。
見通しと要請
- 公衆衛生危機がいずれ終わる希望の兆しもある:各国は社会的距離確保、検査、接触追跡によってウイルス拡散防止に成功している場合があり、治療法やワクチンが予想より早く開発される可能性もある。
- ただし、短中期の見通しは極めて不確実である。危機の規模と速度に応じて、国内外で政策対応を大規模かつ迅速に行い、新たなデータが明らかになったら速やかに見直す必要がある。
- 世界がこの危機を乗り越えるためには、医療現場の勇敢な行動と同様に、政策当局者にも大胆かつ迅速な行動が求められている。
出典: 「大封鎖」 大恐慌以来最悪の景気後退(国際通貨基金、ギータ・ゴピナート)