高齢化する国では財政刺激の効果が低い可能性
IMF Blog, August 17, 2020
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- 高齢化する国では財政刺激の効果が低い可能性
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Bibliographic details
- Authors: Jiro Honda, Hiroaki Miyamoto
- Published: August 17, 2020
概要
- 新型コロナ流行下で多くの国が歳出拡大と減税による財政刺激策を実施している中、IMF職員による新しい研究は、人口の年齢構成が財政刺激策の効果を左右する重要な要因になりうることを示す。
- 一般に、金利がほぼゼロの先進国では金融政策に制約があり、財政政策の重要性が高まっているが、高齢化が進んだ国では財政刺激策が経済成長を促す効果が弱まっている。
研究設計と主要数値
- 分析対象期間: 1985年から2017年
- 対象: OECD諸国の17か国を、老年人口比率に基づき2つのグループに分類して比較
- 老年人口比率の定義: 15~64歳人口に対する65歳以上人口の比率
- 平均老年人口比率:
- 高齢化が進行する国: 26.5%
- 高齢化が進行していない国: 18.9%
- 将来予測: 今後30年間に、世界の20を超える国々で老年人口の比率が50%を上回ることが予測されている。中には同比率が70%に達する国もある。
主要発見(効果と比較)
- 年齢構成がより若い国では、財政刺激策が経済成長に与えるプラス効果が大きい。
- 高齢化が進んでいる国では、財政刺激策の成長促進効果は相当に低い。
- 高齢化の進行は、同国における相対的な低成長や高い公的債務という既存知見を補完する。
メカニズム(なぜ効果が弱まるか)
- 労働力増加の抑制により、財政刺激が雇用拡大や生産増加に波及しにくくなる。
- 公的債務の増加が財政刺激の余地を制約し、民間の消費や投資への波及が弱まる。
- 退職者は固定額の所得で生活することが多く、財政刺激が消費を刺激しにくい可能性がある。
- 高齢化に伴う労働投入量と生産性の低下が潜在成長率を押し下げ、財政刺激による民間投資誘発効果を低下させる。
政策含意(研究が提起する点)
- 景気後退時に総需要を支えるためには、より大規模な景気刺激策が求められるようになる。
- 財政刺激策の経済成長促進効果が小さいため、国内需要を支えるには構造改革など他の経済政策がより重要な役割を担う必要がある。
- 労働供給の増加を狙った構造政策(女性の労働参加率の向上や労働市場ニーズに基づいた移民の増加)は、高齢化社会における経済刺激策として効果が期待される。
- 過度の債務拡大を避けつつ、景気後退時により大規模な財政刺激策を講じるためには、景気拡大時に十分な財政政策の発動余地(債務持続の可能性や資本市場アクセスを危険にさらすことなく、歳出を拡大したり減税したりするための余力)を確保しておく必要がある。
執筆者
- 本田治朗: IMF財政局の課長補佐。研究分野は財政政策(歳出・歳入政策、財政支出の乗数効果)、経済開発、金融部門、ガバナンスなど。
- 宮本弘曉: 東京都立大学経済経営学部の教授。研究分野はマクロ経済学、労働経済学、日本経済論。
出典: 本田治朗, 宮本弘曉, 2020年8月17日, 高齢化する国では財政刺激の効果が低い可能性