デジタル時代における公的貨幣と私的貨幣の共存可能性
IMF Blog, February 20, 2021
Source details
- Canonical URL
- デジタル時代における公的貨幣と私的貨幣の共存可能性
Other formats
Bibliographic details
- Authors: Tobias Adrian, Tommaso Mancini-Griffoli
- Published: February 20, 2021
概要
- 公的貨幣(中央銀行が発行)と私的貨幣(銀行、通信企業、決済プロバイダー等が発行)から成る「二重の貨幣システム」が今日の世界を特徴づけている。
- この二重システムは、民間部門が担うイノベーションと多様性、および公的部門による安定性と効率性という利点を両立している。
- 中央銀行デジタル通貨(CBDC)の登場は、私的貨幣との関係に影響を与え得るが、発行か促進かの二者択一を迫る必要はないとする。
共生の根拠(私的貨幣と中央銀行通貨の相互依存)
- 私的貨幣は「固定額面価格で中央銀行通貨との引き換えが可能」な限りにおいて、安定的な価値保蔵手段となる。
- 私的貨幣の相互運用性は、決済過程で「中央銀行通貨にこの10ドルが変換される」ことに依拠しているという具体例が示される。
- 銀行口座の預金が「債務を返済するために法定通貨として受け入れられている10ドル札に交換することができる」仕組みが、民間貨幣の信頼性を支えている。
- 民間貨幣のみのシステムはリスクが過大になり得る一方、中央銀行通貨のみのシステムでは重要なイノベーション機会が失われる可能性がある。
中央銀行通貨がデジタル時代に直面するプレッシャー
- CBDCは「貨幣の貯蔵と移転を可能にする決済技術」であり、OSに近い性質を持つため、中央銀行は技術面でアップルやマイクロソフトのような役割を果たす必要がある可能性がある。
- 技術進化は迅速かつ複雑であり、CBDCの初期は「中央のデータベース」で管理され得るが、成熟に伴い「分散型台帳」へ移行する可能性がある。
- ユーザーのニーズは「はるかに早く予想のつかない形で進化」する可能性が高く、貨幣は「まったく新しい方法で譲渡される」ようになるリスクと機会がある。
- 供給サイドからは、民間の電子マネーやステーブルコインの登場と需要増が、規制当局によるリスク抑制ニーズを生む。
民間部門との連携可能性と設計オプション
- 中央銀行は単独でイノベーションを進める必要はなく、設計次第で民間の上乗せイノベーションを奨励できる。
- 例:公開されたアプリケーション・プログラミング・インターフェース(API)へのアクセスを通じて、開発者コミュニティがCBDCのユーザビリティを拡張することが可能。
- 例:決済の自動化、電話番号ベースの送金等の付加機能を民間が提供し得る。
- 並列オペレーティングシステム的な併存を認めることで「より速いイノベーションと製品選択」に道を開く設計も考えられる。
- 私的デジタルマネーが安定した価値保蔵手段および効率的な支払い手段となるための条件:
- 「固定額面価格で(デジタルまたは非デジタルの)中央銀行通貨に変換できる」こと。
- 決済が「同じ銀行の口座間と同様に、いかなるデジタルマネーネットワークにおいても即時に行われる」こと。
- 私的提供者間の支払いが「それに対応する中央銀行通貨の移動によって決済される」限りにおいて相互運用可能となること。
規制・免許・公共政策上の要件
- CBDCと共存する私的デジタルマネー(「合成通貨」と呼ばれた形態を含む)には、以下のような公共政策目標を達成するための免許制度と規制が必要となる:
- オペレーショナル・レジリエンス
- 消費者保護
- 市場行動・市場への新規参入可能性
- データプライバシー
- プルーデンス上の安定性
- また、デジタルIDや補完的なデータ政策を通じて金融の健全性を確保し、中央銀行と連携するには「高度な規制コンプライアンス」が求められる。
結論・政策含意
- 各国がCBDCを前進させる際には「民間部門の力を借りる方法」を検討すべきであり、今日の二重貨幣システムはデジタル時代にも延長して活用し得る。
- 中央銀行通貨は「規制や監督、監視と合わせて、決済システムの安定性と効率性」を確保する上で引き続き不可欠である。
- 民間が発行する貨幣は、イノベーションと多様性により「おそらく今日以上にこの土台を補完することが可能」である。
- 最終的に、中央銀行がどの位置を選ぶかは「選好やテクノロジー、規制の効率性」によって国ごとに異なる。
著者: トビアス・エイドリアン、トマソ・マンチーニ・グリフォーリ — 2021年2月20日