傷は長く残る パンデミックの後遺症
IMF Blog, March 31, 2021
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- 傷は長く残る パンデミックの後遺症
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Bibliographic details
- Authors: Sonali Das, Philippe Wingender
- Published: March 31, 2021
要旨・現状
- 新型コロナウイルス危機による景気後退は、過去の世界的危機に比べて収縮が急激かつ深刻である。四半期データからは、世界GDPが世界金融危機時よりも半分の時間で約3倍の減少幅を記録したことが示される。
- 異例の政策対応により、システミックな金融ストレスは総じて回避されているが、財政余地が限定的な国では回復が依然として困難である。
- 傷跡(scarring)の程度は、パンデミックの今後の展開、対人接触の多い部門の占める割合、企業・労働者の適応能力、政策対応の有効性に左右され、各国間で差が生じる。
歴史の教訓(中長期的リスク)
- 深刻な景気後退は、生産性の低下に伴う持続的なGDP損失と関係してきた。
- パンデミックは一部でデジタル化とイノベーションを促進しているが、ニューノーマルへの適応に必要な資源の再配分は過去の景気後退時よりも規模が大きく、将来の生産性の伸びに影響を与えうる。
- 有力企業の市場支配力の高まりがリスクとなる。競合他社の倒産により、既に支配的な企業が地歩を固める可能性がある。
- 生産ネットワークの寸断は生産性に影響を及ぼす。対人接触の多い部門(芸術・娯楽、宿泊・飲食業、卸売・小売業等)は生産ネットワークで中心的でない場合でも、波及効果を通じて他部門へ大きな影響を与えうる。
中期的な影響と見通し
- 世界経済は一部で想定を上回る成長が見られるものの、中期的には2024年の世界GDPがパンデミック前の予測を約3%下回ると予想している。
- 現在予想されている傷跡は、世界金融危機後に見られたものよりも小さいと評価される(金融の安定性が大方維持されているため)。
- 傷跡は先進国よりも新興市場国と発展途上国で深刻化し、損失は低所得国で最大となる見込み。
- 経済構造と財政政策対応の規模の違いが各国間格差の主因である。
- 観光依存度が高い国や対人接触の多い部門が経済に占める割合が大きい国では、損失がより長引くと予想される。例として、太平洋島嶼国では2024年にGDPがパンデミック前の予測を約10%下回ると推定される。
- 広範な休校措置は学習や技能習得に負の影響を及ぼし、特に低所得国で大きく、長期的には個人の収入損失と経済全体の生産性の毀損につながる可能性がある。
政策の優先事項(傷跡を抑えるための提言)
- 過去の経験から、金融危機を回避することと、景気回復が確実に軌道に乗るまで実効的な政策支援を継続することが重要である。
- 各国は影響を受けた世帯や企業向けのより対象を絞り込んだ支援と公共投資を組み合わせ、パンデミックの各段階に応じて政策を調整する必要がある。
- ワクチン接種の普及と供給制約の緩和に対応して、以下の3つの優先事項に重点を置くことが求められる:
- 第一に、人的資本蓄積の後退を逆転させること。格差拡大に対処するため、社会的セーフティネットを拡充し、医療と教育に十分な資源を配分する。
- 第二に、労働力の移動を促進し、競争とイノベーションを促す政策を通じて生産性を下支えすること。
- 第三に、民間投資の誘発を促進するため、グリーンインフラを中心に公共インフラ投資を拡大すること。
- 各国間で拡大する格差に対処するには強力な国際協調が必要である。資金調達上の制約を抱える国が開発支出のための国際流動性に十分アクセスできることが不可欠である。
- 保健面では、COVAXファシリティへの十分な資金拠出などを通じてワクチンの十分な生産と世界的な供給を確保し、発展途上国がパンデミックに打ち克ち傷跡の一層の悪化を防げるよう支援することが含まれる。
ソナリ・ダス(IMF調査局世界経済研究課シニアエコノミスト)およびフィリップ・ウィンジェンダー(IMF調査局世界経済研究課シニアエコノミスト)