進む回復の二極化 求められる緊急の行動
IMF Blog, July 7, 2021
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- 進む回復の二極化 求められる緊急の行動
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- Authors: Kristalina Georgieva
- Published: July 7, 2021
世界経済の現状と回復の二極化
- 世界経済は今年の成長率を6%とするIMFの4月の予測に概ね沿う形で回復している。
- 米国は今年の成長率が1984年以来最高となる7%に達すると予測されている。
- 中国やユーロ圏、その他少数の先進国・新興市場国でも回復の勢いが高まっている一方、データは経済的な運命の分岐が進んでいることを示している。
- 高リスクの人々に対するワクチン接種が早まれば、今後半年間だけで 50万人以上の命を救える可能性があると試算している。
新たに露呈するリスクと影響
- ワクチン普及の格差により回復の二極化が深刻化している。
- 先進国では平均で成人の30%以上がワクチン接種を完了しているのに対し、サブサハラアフリカではその割合が1%未満にとどまっている。
- デルタ株の拡大等、変異株による致死率上昇のリスクが未接種地域で高まっている。
- 財政資源の不足は、貧しい国々でのワクチン加速や経済支援の困難化、貧困・住居喪失・飢えの危険増加を招く。
- インフレ・金融リスク:
- 米国での最近の物価上昇率の高まりが注視されている。インフレ期待は現時点では安定しているが、持続的な高まりが生じれば米国の金融政策を予想以上に早く引き締める必要性が生じる可能性がある。
- 米国における金利上昇は国際金融環境の急激なタイト化や新興市場国・発展途上国からの大規模な資本流出につながる恐れがある。
- 食料価格や一次産品価格の上昇への懸念が広がっている。
緊急で必要な政策行動(提言)
- 第一:パンデミックに終止符を打つための国際協調の強化
- 早期ワクチン普及は道徳上の義務であり、経済的利益も非常に大きい。
- IMF職員が提示した500億ドルの計画は、より早期のワクチン普及と回復の加速によって何兆ドルもの利益を生む可能性があるとされる。
- IMF、世界銀行、WHO、WTOは「作戦指令室」を立ち上げ、発展途上国への医療ツール供給の把握・調整を進める。
- 目標として、2021年末までにすべての国で人口の40%以上に、2022年前半までに同60%以上にワクチンを接種することへの賛同が重要。
- 具体的行動例:
- 発展途上国へのワクチン分配を強化すること。
- ワクチン生産の増強・分散化、国内輸送、診断法、治療法の補強に向けた無償資金と譲許的融資を支援すること。
- ワクチンの原材料と最終製品の輸出に係るあらゆる障壁やサプライチェーン取引に係るその他の障壁を撤廃すること。
- サブサハラアフリカ等での感染拡大に迅速に適応し、酸素や検査用品、個人防護具、治療薬等の緊急パッケージを速やかに供給すること。
- 第二:回復を確実にする取り組みの強化
- G20諸国が率先して実施した約16兆ドルに上る財政措置を土台に、各国のパンデミック・リスクと政策余地に応じた対策を講じるべき。
- 感染が急拡大している国では医療と脆弱な世帯・企業への支援を継続するため、信頼性のある中期的枠組みの範囲内で対象を絞った財政措置を行うことが重要。
- 医療指標の改善に伴う正常化時には支援プログラムを徐々に縮小し、社会支出や訓練プログラムを拡大して若者や女性、低技能労働者への影響を緩和すること。
- 金融緩和の継続が必要な国が大半であるが、物価上昇率と金融安定性リスクを注意深く監視すること。
- 主要中央銀行は自らの政策意図について慎重なコミュニケーションを行い、国内外で金融市場の過度なボラティリティを防ぐこと。
- 第三:脆弱国への支援強化
- 低所得国はパンデミック対応だけで今後5年間で2,000億ドル近い資金が必要になると推定。
- 所得水準を高めるための抜本的改革のためにさらに2,500億ドルが必要と見積もられる。
- 豊かな国々による譲許的融資や債務問題への対応強化が不可欠。
- G20の債務支払猶予イニシアティブは一時的なゆとりを提供しているが、恒久的な債務救済のために新しい共通枠組みを完全に運用可能にする必要がある。
- 事例:チャドは二国間債権国から資金調達の保証を得ており、民間債権者からも同等の条件で迅速に約束を取り付けることが求められている。
- エチオピアの債務処理要請を可能にするため、債権者委員会を迅速に立ち上げることを強く奨励。
IMFの対応と提案
- IMFの対処状況:
- 85か国を対象とした総額1,140億ドルの新規融資や、最も貧しい加盟国に対する債務救済を通じて対応を強化。
- 融資限度額を引き上げるための支援を受け、ゼロ金利での融資を行う能力を強化できている。
- 緊急融資制度の下で新たな「ワクチン枠」を設けられないか模索している(各国のワクチン接種プログラムに資金を提供する枠)。
- SDR(特別引出権)関連:
- IMF加盟国は6,500億ドル相当の特別引出権(SDR)の新規配分を支持している。
- この配分は準備資産を補充し、最も脆弱な国をはじめ全加盟国がワクチンを含む緊急ニーズに対処する支援を提供することになる。
- この提案はIMF理事会で議論され、8月末までには配分プロセスが完了する見込み。
- SDR新規配分の効果増強策として、世界合計1,000億ドルという目標を達成するために自主的にSDRの一部を振り向けることを奨励している。
- 実現方法としては、貧困削減・成長トラスト(PRGT)の活用や、新規の強靭性・持続可能性トラスト(RST)の可能性も検討している。
- RST(強靭性・持続可能性トラスト):
- 今週のG20会合は、RSTを新規設置する計画を前進させる機会となる。
- RSTは低所得国の他にパンデミックで破壊的な被害を受けた貧しく脆弱な中所得国を支援し、気候関連課題への対処を含む構造転換を後押しする。
気候変動・税制に関する提言
- 気候行動:
- IMF職員は炭素価格の国際的な下限について提案しており、これが今後10年間に低炭素成長への移行を加速させると期待している。
- G20ベネチア気候会議でその導入を強く提唱する所存である。
- 国際税制:
- OECD/G20の「包摂的枠組み」での130 か国による歴史的合意を歓迎。
- 最低法人税率の設定により高収益企業があらゆる場所で応分の税を負担することになり、各国が法人課税ベースを維持し歳入を確保しやすくなる。
- 数十年にわたる租税競争が医療や教育、インフラ、社会政策への投資を損なってきた点を踏まえ、21世紀にふさわしいより公正で効果的な国際税制構築の重要性を強調。
まとめ(行動の要点)
- 今が重大な局面であり、回復の二極化に対処するために緊急の国際的な政策行動が必要である。
- 優先事項:
- ワクチン普及の加速と医療ツールの迅速供給(500億ドルの計画など)で数十万人の命を救う。
- 脆弱国への資金供給と債務問題解決の推進(2,000億ドル、2,500億ドルの見積りに基づく支援)。
- IMFによる融資、SDR配分(6,500億ドル)やRSTの活用による支援強化。
- 炭素価格の国際的下限導入や最低法人税率の実施による持続可能な成長の基盤整備。
- 一致団結した断固とした行動により、パンデミックを終わらせ、二極化する回復を持続可能な成長へと転換できる。
クリスタリナ・ゲオルギエバ