デジタル時代に電子マネーの安全性を高める
IMF Blog, December 14, 2021
Source details
- Canonical URL
- デジタル時代に電子マネーの安全性を高める
Other formats
Bibliographic details
- Authors: Jose Garrido, Jan Nolte
- Published: December 14, 2021
概要
- デジタル形式のマネー(中央銀行デジタル通貨、民間発行のステーブルコイン、電子マネー等)は進化を続け、日常生活に不可欠になりつつある。
- 電子マネーは「発行者によって保証された不換通貨を電子化したもの」であり、顧客は通常の貨幣を電子マネーに交換して個人間・企業間の即時決済に利用する。
- 電子マネーはステーブルコイン等に比べて長く存在し、顧客基盤を急速に拡大しているが、規制監督当局にとって最新動向へ対応することは難題である。
- IMFスタッフペーパーは、消費者保護および決済システム全体の健全性を脅かしうる破綻シナリオを検討し、国別の規制慣行を調査の上で一連の政策提言を行っている。
電子マネーの役割と利用状況
- 電子マネーはプリペイドカードや携帯電話等の電子デバイスに貨幣価値を保蔵し、決済に使われる。
- 保蔵された価値は「電子マネー発行体に対する強制執行可能な債権」であり、消費者は払戻しをいつでも求めることができる。
- 電子マネーは「数十億人の日常生活から切り離せない」存在となっている。
- 東アフリカの複数国では利用率が高く、例えばケニア(M-PESAが深く浸透)、ルワンダ、タンザニア、ウガンダを合わせると、成人全体の3分の2が電子マネーを定期的に利用していると推計されている。
- 銀行口座を持たない人が多い国では、可処分資金のかなりの部分を電子マネーのウォレットに貯蔵し、携帯電話やコンピューターを通じてアクセスしている。
リスクと問題点
- 電子マネー発行体の破綻は、資金喪失にとどまらず、決済システムや日々の取引に深刻な中断をもたらす可能性がある。
- 発行体が潜在的にシステミックな役割を担っている場合、分別管理だけでは顧客が迅速に資金へアクセスできることは保証されない。
- 特定の破産規則が整備されていないと、分別管理による保全措置でも顧客の即時回復が確保されない恐れがある。
- 電子マネー預金保険の適用拡大は一部の国で検討されているが、実務面での試行は乏しく、費用便益の慎重な検討が必要である。
規制上の主要提言(IMFスタッフペーパーの要旨)
- 顧客資金の保護:すべての電子マネー発行体は顧客資金を安全に保管し、分別管理するメカニズムを導入すること。
- 発行体は顧客残高の額に相当する安全な当座資金プールを維持し、発行体自身の資金と分けて管理しなければならない。
- プルーデンス規制:発行体に対して見合ったプルーデンス規制要件を課すこと。
- 発行体はオペレーショナル・リスクのガバナンス・管理システムを確立し、リスクを特定・抑制する必要がある。
- 電子マネー発行体によるリテール貸出は禁止すべきである。
- 消費者保護:消費者が銀行利用者に比べて未熟である可能性を踏まえ、以下を規定するルールを整備すること。
- 料金に関する情報提供
- 消費者データの保護
- 苦情処理の手続き
システム的リスクへの対応と実務上の課題
- 潜在的にシステミックな発行体や業界を有する国では、顧客資金保全と重要な決済サービスの継続確保を目的とした保護の仕組みを導入することが必要である。
- 各種サービスは早急に、できれば数時間以内に復旧可能か代替可能でなければならない(顧客が資金アクセスを失わないため)。
- 電子マネー預金保険を事実上拡大する場合、その実施可能性および効果性について追加的な検討と試行が必要であり、費用と便益を慎重に吟味する必要がある。
- フィンテック分野同様にベストプラクティスは形成途上であり、パンデミックに伴うオンライン取引と電子マネーの成長加速を踏まえ、慎重かつ迅速な政策行動が求められる。
出典: デジタル時代に電子マネーの安全性を高める